コミックナタリー Power Push - 原作:LINK 漫画:宵野コタロー「終末のハーレム」

キャラの個性をフェティシズムをもって描く

宵野コタローインタビュー

「ハーレム」は自分にとってドンピシャな作品

──「終末のハーレム」は連載開始時から、描写の際どさで大きな話題を集めましたよね。僕も裸の女性が並んだ第1話の見開きカラーページを見て、「とんでもない作品が始まった!」と思いました。

「終末のハーレム」連載版第1話の見開き扉。同ページはその描写の際どさからネット上でも話題を集めた。

(笑)。私自身、一般誌でしっかり構えて連載するっていうのはこれが初めてで、反応が心配だったんですけど、いろいろなところで話題にしていただいてびっくりしました。

──1話目の時点で、反応的にはかなり手応えを感じられたと。

そうですね。ジャンプ+で更新された瞬間にTwitterでツイートしてくれる方もいて、リアルタイムで感想が見られるっていうのも、これまでにはあまりないことだったのでうれしかったです。あと1巻が出たときに、成年誌の単行本とは違って一般の書店でも売られているので、いろいろな年齢層の人が手に取ってくれているという実感はありました。

──「終末のハーレム」を宵野先生が描かれるまでには、どういった経緯があったんでしょう。

担当編集さんに「うちで描いてみませんか?」とお声をかけていただいて。最初は原作付きではなくオリジナル作品を考えていたんです。でも私は緻密なストーリーを練り上げるのが苦手で、どちらかというとキャラクターを動かす方が好きだったので、「だったら、原作があったらどうですか」と提案していただいて。「ハーレム」の原作を最初に読ませていただいたとき、自分にドンピシャだなって思ったんです。

怜人の幼馴染み・絵理沙。

──ドンピシャというのはどういった部分が?

内容的に「かわいい女の子」を描くっていう、これまで自分がやってきたようなことを生かせるだろうと。それにキャラクターもいっぱい出せるし、いろんな表情が描けそうというのもあって。

──原作付きとおひとりで描くのとで、どちらがやりやすいというのはありますか?

うーん、周りには原作があるとやりにくいっていう方も結構いらっしゃるんですが、原作をいただいて、あとはこちらでキャラクターの部分を作っていくという形式で進められるので、私はどちらかというと今の方がやりやすいですね。LINK先生は「こういう会話を入れたい」と私が提案すれば、それを取り入れてくれる方ですし。

怜人のボディガード・翠と、ナース・朱音の会話シーン。

──宵野先生発案のシーンというのは、具体的にはどのあたりでしょう。

たとえば怜人たちが動物研究所を訪ねたときの、翠ちゃんと朱音というキャラクターの会話シーンがそうですね。LINK先生からいただいたプロットを膨らませて、「このキャラクターならこういうことを言いそう」っていうセリフを付け足しています。もちろん原作があるので、話の大筋を変えるようなことはしないですけど、キャラクターを動かすうえでアクセントになればいいなと。

各キャラクターに合わせた表情を描く

──では個別のキャラクターについてもお話を伺えればと思います。「終末のハーレム」はお話の内容的に、登場する女性キャラクターが多くなって描き分けが大変なのではと感じたのですが。

怜人の子作り相手の候補として集められた女性たち。

名前のある女性キャラクターが、ヒロインを含めすでに二十数人いるんですが、ひとつのお話にキャラをここまで出すっていうのは初めてだったので、すごく難しいですね。ただどのキャラも皆さんにかわいいって思ってもらいたいという気持ちがあって。特徴を持たせすぎてしまって、個性の強すぎる顔にしないようにというのは気を付けています。そういう制約のある中で、これからも女の子のキャラクターがどんどん増えていくので、レパートリーをさらに増やさないといけないと考えると大変ですね(笑)。

──1巻の表紙にもなった美来は、どのようにデザインを固めたんでしょう。

美来は怜人の幼馴染みである絵理沙とよく似ているのですが、瞳の描き方で違いをつけています。絵理沙は明るくて芯がしっかりしているキャラ、美来はミステリアスなキャラだったのでそこをうまく見せられるようなデザインにしました。美来は表情が顔に出ないキャラクターなので、感情を描くのが難しいんですよね。ちょっと目を伏せさせて表情を出してみたりしています。

怜人がコールドスリープに入る直前、病院に駆けつけた絵理沙。 コールドスリープから目覚めた怜人の前に現れた女性・美来。

──逆に男性キャラは登場する人数が限られますが、主人公の怜人はどのようにできあがったんですか。

怜人は「王道主人公風のデザインに」と、担当編集さんやLINK先生と話していて。キャラクターとしては、私の中では読者の方から「女性の誘惑に負けずに、絵理沙への思いを貫いていてカッコいい」って思ってもらえると考えていたんですけど、意外に「この世界に行ったら俺なら楽しむけどな」って言っている方が多くて。

──欲望に忠実な読者が多い(笑)。

「怜人、どんだけ我慢してるんだよ」っていう(笑)。でも「芯を貫くことでカッコいいと思わせたい」というのはやっぱりありますね。その対極にいるのが、欲望に素直なチャラいデザインの火野です。

絵理沙への思いを貫く怜人。 怜人と同じくMKウイルスに対する免疫を持つ火野恭司。

──宵野先生が考える、男性をカッコよく描くポイントはどこですか?

うーん……見せ場でキリッとした顔を描くシーンは何個かあるんですけど、これまで男キャラをカッコよく描くことがあまりなかったので模索中ですね。女性キャラでいうと、やっぱり表情が大切だと思っていて。以前別の雑誌で描いていた際にも、担当の方に「表情がいい」と言ってもらえていたので、その部分を伸ばしていけるよう、各キャラクターに合わせた表情をという点についてはすごく気を付けています。

キャラに個性を与えて、それをフェティシズムをもって描く

──表情以外に「終末のハーレム」の作画のポイントを挙げるとしたらどういった部分でしょう。

怜人と同じベッドで眠りにつこうとする朱音。一連のシーンが胸やお尻を生かした構図で描かれている。

1巻のあとがきコメントで、「巻を増すごとにエロさのパワーアップを目指す」と書いたんですが、それに関連付けて言うと、それぞれのキャラに個性を与えて、それをフェティシズムをもって描いていきたいと考えています。例えば胸の大きい子が登場するシーンでは、胸を強調するような構図を考えたり、お尻が魅力的な子は下のアングルから描いてあげたりとか。

──「終末のハーレム」には胸の大きなキャラクターが多く登場するなと思ったんですが、宵野先生ご自身が胸の大きいキャラクターにフェチを感じているんでしょうか?

そうですね(笑)。ただ、単に胸が大きいだけだと、逆に物足りなさを感じてしまうんです。胸を誰かに当てて押しつぶされたりするときに柔らかさが出ていると、私は「おっ!」って思うので、そういう部分は作っていきたいですね。あと難しいのは、元気っ子のエロさです。例えば妹キャラのまひるがそうなんですけど、あんまり艶かしく描いてしまうと、「元気っ子」っていうキャラの個性が失われてしまう感じがするので、悩みどころですね。

──宵野先生は過去には成年誌でもご活躍なさっていましたが、一般誌ではエロについての表現の方法も変わってきますよね。

怜人が使用する風呂場に突然侵入してきた朱音。

やっぱり直接的なエロは描けないので苦労した部分はありますね。ただジャンプの昔のエロコメを読み返していると、見せないからこそのエロさっていうのもすごくあって。なので、例えば朱音の登場シーンでは、先ほど説明したような、胸を相手の体に押し付けることで「見えてはいないんだけどエロい」っていうシーンを作ったりしてがんばっています。

──この胸を押し付けるシーンは、構図もかなりダイナミックです。

ストーリー自体はシリアスな部分が多いんですけど、見せ方はダイナミックにしていきたいと思っているんです。ただ朱音の登場シーンの一連の流れは、自分の中では「エロマンガ描いてるんだっけ?」と勘違いしそうになりながらやっていたんですが(笑)。

原作:LINK 漫画:宵野コタロー「終末のハーレム(2)」 2016年12月31日発売 / 集英社
「終末のハーレム(2)」
コミック / 626円
Kindle版 / 600円

MKウイルスの特効薬開発に着手した怜人だったが、 偶然見つけた絵理沙からのメッセージで衝撃の事実を知る。
一方、女性による統治機構・ UW日本支部の上層部はメイティングしない怜人に業を煮やし、そのうちの一人が甘美な罠を仕掛けるが……!?
そして、第3の男が目覚める……!

宵野コタロー(ショウノコタロー)
宵野コタロー

12月24日生まれ。成年向けマンガとして「発情ベイビー」「テイクアウトハニー」などのタイトルを上梓。一般誌での連載作に「To LOVEる -とらぶる-」の長谷見沙貴原作による「スタプラ!NG♪」や、「僕は先輩に女装を強いられています。」など。2016年5月に少年ジャンプ+にて、LINK原作による「終末のハーレム」をスタートさせた。