「ちょっと殺してきてくれん?」
──「博多豚骨ラーメンズ」は殺人のほかにも復讐、拷問、暴行などが日常的に横行するというわりとハードな作品ですが、視聴者目線で観るとどういった感想ですか。
梶 さっきも言いましたけど、物騒ですよね(笑)。第1話だけでも人を殺すシーンがいくつかありますし。ただ、殺人は殺人なんですけど、個人的な感情で殺すわけではなくて、この作品のキャラはあくまで職業として人を殺すみたいなところも強くて、そこが面白さなのかなと思います。
──あくまで仕事だから、殺人が「軽く見える」と言うと変ですが、そんなに暗く感じないというか。
梶 もちろん日常的に僕らの生活の中に殺しがあるわけではないので、アニメで人が死ぬシーンを観て何も感じないわけではないんですけどね。その「仕事での殺し」の面白さっていう意味でいうと、1話で小林(裕介)くん演じる斉藤が入社する「マーダー・インク」ってあるじゃないですか。あそこはやってることは殺人請負業だけど、会社のシステムは一般の会社っぽいんですよね。そこの斉藤の上司が、穏やかな声で「仕事としての殺人」というドギツイことを頼むのが、この作品を象徴してるなって思いました。
小野 「ちょっと殺してきてくれん?」みたいな。
梶 そうそうそう(笑)。本当に「営業に行ってきてくれない?」ぐらいの感じで殺人を頼むのがすごいなって。
──近所の人からの依頼で、殺してほしい理由も「いつも騒がしいから」というのも軽いですよね。「そんな簡単に殺しが行われてる世界なんだ」という。
小野 ただ、1話で言うと逢坂(良太)さんが演じている、市長の息子(ユウスケ)も人を殺すじゃないですか。あそこは逆に、自分の欲望で人を殺しているし、エグく描かれてましたよね。
──立場を利用して女性を玩具のように扱ったあとに殺し、市長の部下たちに処理させるというキャラですね。
梶 あれはゲスだったね。
小野 ゲスいし、やっぱり嫌な感情になったんですよ。だから「ああ、実際に殺人が起きたらこう感じるのが本当だよな」って。
梶 そうだね。ほかの殺しのシーンは、仕事として受け入れられちゃうような描かれ方をしてるけど。
小野 胸糞悪い感じの、なんかモヤモヤするというか、「これはあんま見たくないな」みたいな感情になる。あそこは印象に残ってますね。
梶 あのバカ息子は酷いんですけど、彼を演じる逢坂くんはとても素敵でしたね。しょうもない感じが絶妙に、上手だなって思いました。
殺しでいちいち胸を痛めてられない
──そんな世界観の中で、梶さん演じる林は女装をした殺し屋というちょっと変わった役です。
梶 最初に資料をいただいたとき、林の見た目が完全に女性だったので、「何かの手違いかな?」と思いました。
小野 あはははは。
梶 でもコミカライズ版などを読んで、「なるほど。あくまで女装してるだけで、中身は完全に男性なんだな」と。
──余談なんですけど、梶さんって女装してるキャラを演じることが多くないですか?
梶 え、そんなにありましたっけ!?
──「劇場版 はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~」の蘭丸や、「峰不二子という女」のオスカー警部補も女装していたので……。
梶 ああ、確かに(笑)。「はいからさん」の蘭丸は、林みたいな女装男子ではなくて、人の家に潜入するための女装ですけどね。「峰不二子」のオスカー警部補も女学園に潜入するための変装でしたし……。そう言われると多いかもしれないですね(笑)。
──そんな「女装男子」というある意味キャッチーな要素はあるものの、人を殺しまくる犯罪者で、だけど悪役ではないポジションというのは独特ですよね。
梶 うーん、でもこの作品において、殺しはご飯を食べるのと一緒ぐらいの感覚ですから(笑)。作中で林や馬場目線から見た悪役として、ほかの殺し屋組織やヤクザだったりはいますけど、どっちもやってることは犯罪で。その中で、やり口や個人的な感情があるかないかで悪役に見えたり見えなかったりするんでしょうね。林は妹を取り戻すために職業として殺しをやってるんだと思いますし。
小野 作品の中では、殺しっていうことに対してあまり重たく考えてないですもんね。
梶 うん。だから割り切ってというか、殺しでいちいち胸を痛めてられないという前提で、それぞれがその向こう側にあるドラマを演じてると思います。序盤で、林の過去にちょっとスポットが当たるじゃないですか。それまで孤独に生きていたであろう林が、馬場の事務所で2人でカップラーメンを食べて「美味い」って言うところ。
──林が「ご飯を人に出されるのは初めてだ」っていう場面ですね。
梶 もちろんラーメン自体も美味しかったんでしょうけど、味以上に「誰かと一緒に食べる」っていうところに人の温かさを感じるシーン。すごく好きでしたね。
──たしかに、ああいうシーンがあるから、視聴者としても林のことを「殺し屋だけど悪いやつではないんだな」と感じることができます。ちなみに林と自分を重ねる部分ってありますか?
小野 (林は)人殺しだからなあ……(笑)。
梶 そこは自分とは違っててほしい(笑)。
小野 林は基本的に野良猫みたいですよね。
梶 そうね。温かい環境に慣れてないみたいなところがある。
──特に序盤は「仲間なんていらない」という態度ですよね。
梶 そうですね。彼のドラマを語るうえで、そこは重要なポイントです。馬場をはじめとするいわゆる「仲間たち」との距離感が、近づいたり離れたりってところが、賢章くんの言った「猫」という感じはすごくわかります。
──ご自身もそういう感じだったりします?
梶 僕はどうですかね……猫じゃないな、人ですね(笑)。猫っぽいところもあれば犬っぽいところもある気がします。林と似てるところはなんでしょう。役作りにも関わってきますけど、彼は外見と中身でギャップがあるんですよね。林を知れば知るほど男臭い人だなって思います。普段のしゃべり方は特に女性を意識することなく、「むしろ男臭い」という部分をオーディションのときから意識してやってました。そしてその、内面に本来持っている男臭さが、もしかしたら自分と近いところがあるのかなとは思いますね。
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榎田のように余裕を持って生きたい
- テレビアニメ「博多豚骨ラーメンズ」
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- スタッフ
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- 原作:木崎ちあき(メディアワークス文庫刊)
- キャラクター原案:一色箱
- 監督:安田賢司
- シリーズ構成:ヤスカワショウゴ
- キャラクターデザイン:井上英紀
- 音響監督:岩浪美和
- 音楽:中川幸太郎
- アニメーション制作:サテライト
- キャスト
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- 馬場善治:小野大輔
- 林憲明:梶裕貴
- 斉藤:小林裕介
- 榎田:小野賢章
- ジロー:浪川大輔
- ミサキ:悠木碧
- ホセ・マルティネス:前野智昭
- 大和:松岡禎丞
- 佐伯:平川大輔
- 重松:浜田賢二
- 剛田源造:廣田行生
- 猿渡俊助:中村悠一
- 新田巨也:松風雅也
- チェガル:津田健次郎
- シヴァ:花江夏樹
- 井良沢:伊丸岡篤
- 緋狼:島崎信長
©2017 木崎ちあき/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/博多豚骨ラーメンズ
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- 博多豚骨ラーメンズ 1 <初回仕様版>
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- 博多豚骨ラーメンズ 2 <初回仕様版>
- 2018年5月30日発売
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[DVD]
10584円 / 1000708551
- 博多豚骨ラーメンズ 3 <初回仕様版>
- 2018年7月11日発売
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- 梶裕貴(カジユウキ)
- 1985年9月3日生まれ、東京都出身。2004年1月、ゲーム「帝国千戦記」で声優デビュー。アニメ、ゲーム、ナレーション、洋画吹き替え、舞台などで活躍し、代表作にアニメ「進撃の巨人」のエレン・イェーガー役、「七つの大罪」のメリオダス役、「ワールドトリガー」の三雲修役、「僕のヒーローアカデミア」の轟焦凍役ほか多数。
- 小野賢章(オノケンショウ)
- 1989年10月5日生まれ、福岡県出身。「ハリー・ポッター」シリーズの日本語吹替版で全作にわたり主人公ハリー・ポッター役を担当した。俳優、声優、歌手などジャンルを超えて活動し、近年の出演作にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」、劇場アニメ「映画『聲の形』」「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」、テレビアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」「恋愛暴君」、実写映画「燐寸少女 マッチショウジョ」など。