コミックナタリー PowerPush - 午前3時の無法地帯

新米デザイナーの恋物語が豪華キャストでドラマ化 ねむようこ&山下敦弘監督が明かす映像化裏話

ねむようこがフィール・ヤング(祥伝社)で連載していた、デビュー単行本にしてキャリア代表作となる「午前3時の無法地帯」が、BeeTVにて実写ドラマ化を果たした。ももこ役に本田翼、多賀谷役にオダギリジョーと豪華キャストが名を連ね、「天然コケッコー」「苦役列車」などで知られる山下敦弘監督が映像化を手がける。ドラマは3月20日より、全12話で配信。

コミックナタリーではドラマ化について、ねむにインタビューを敢行。自身が会社勤めをしていた経験をもとにした作品ということもあり、ねむの仕事観についても語ってもらった。また特集後半では山下監督にも直撃。主役2人から個性豊かな会社のメンバーまで、キャスティングについてもたっぷりと聞いた。

取材・文/坂本恵 編集・撮影/唐木元

ねむようこインタビュー

ももこは臆さず変顔できる人がよかった

──デビュー作の「午前3時の無法地帯」がドラマ化ということで、おめでとうございます。

ありがとうございます。本当にうれしいです!

──ねむさんのオリジナル作品がメディア化されるのは今回が初めてですね。期待や不安、いろいろあったと思います。

やっぱりキャスティングがいちばん大きな不安でした。あとは演出でいろいろ変わると思うし、過剰な演出をされたらどうしよう、というのもありましたけど。でも山下監督が撮ってくださるっていうことだったので、不安よりも期待のほうが大きかったです。

本田翼演じるももこ。

──キャスティングの会議にも参加されたんですよね。

はい。イメージだけはいっぱい伝えてきました。ももこは臆さず変顔できる人、とか。過酷な職場で働いてるわけなので、あんまりきれいな感じの画にならないように。

──劇中ではダサい格好もしてましたね。多賀谷さんのキャスティングについてはいかがですか。

原作の多賀谷はちょっとクマっぽいビジュアル。

多賀谷さんは、少女マンガの相手役でああいうクマっぽいキャラってあまりいないからか、ビジュアルのイメージが強いキャラクターなんですよね。だから見た目っていう意味でのキャスティングはちょっと難しくて……。マンガだとゼロから生み出せるんですけど。

──ねむさん、昔のインタビューで妄想キャスティングをしてたときに、多賀谷はケンタロウって答えてましたもんね(笑)。オダギリジョーさんはちょっと意外でした。

線が細い方なので、たぶん見た目的には意外に思われるかも。でも、中身はぴったりでしたよ。多賀谷さんのつかみどころがない、ひょうひょうとした感じにはすごく合ってて。

ドラマのももこは悲壮感がすごかった

──撮影現場にも見学に行かれたということですが、どのシーンを撮っているときだったんですか?

ももこがミスをしてしまうシーン。

ももこが失敗しちゃうシーンです。立て続けにミスしちゃって、堂本さんに「帰れ!」って怒られるところを見てました。けっこうシリアスな辛いシーン……。

──たぶんねむさんは、ももこにいちばん感情移入されるのかなと思うんですが、ももこが怒られている姿を見るのはどうでした?

もう、デジャブのようでした。自分がああやって怒られたことをマンガにして、それをまた実写にされているわけなので……。私の再現VTRを見ているような感覚です。「ももちゃん!」って怒られてる声のトーンで、心拍数が上がっちゃう……! 本田翼ちゃんのシリアスな演技もすごくハマってて、悲壮感がすごかったです。本当にももこがかわいそう。

──マンガのももこは、もっとキャピっとしてますよね。

そうなんですよ。キャピっとしてるし、あと丸いから(笑)、そんなに悲壮感がないんですよね。

青柳翔演じる輪嶋。

──ももこが務める会社Pデザインのメンバーも、元々はねむさんが働いていた会社の方がモデルということですが、実在する人物がドラマで演じられるというのはどんな感じですか。

いや、もう本当に脳が混乱するというか(笑)。特に輪嶋さんの演技が、モデルになった方ととても似ていて。スーツ着てタルい感じで会社に帰ってきて、机にドーンって鞄を置く感じとか、もう見てるだけで「怒られる!」って思いましたね。すごく不思議な感じでした。

この涙はもっと軽く流していいんです

──現場でねむさんがアドバイスしたりすることはあったんでしょうか。

いや、それはないです。脚本の段階ではいろいろと意見を言わせていただく機会はありました。

──それはどういうことを?

例えば仕事の内容とかですね。「パチンコのデザインでこの納期は長すぎる」とか、そういうすごく細かいところですけど。納期が3日後なんてそんな余裕は、この業界ではあんまりないので(笑)。あと面白いなと思ったのは、脚本を書いてくださった方が男性だったということもあって、(脚本が)男性目線なんですよね。ももこが泣くシーンがあるんですけど、私は女だから、女ってけっこう当たり前に泣いちゃうもので、涙にそんな重い意味なんかないと思ってる。でも男の人からすると、女の子に目の前で泣かれるっていうのはけっこうショッキングなことらしいんです。だから「この涙はもっと軽く流していいんです」って言ってみたり。涙の価値が男と女で違うんだなって思いました。

──監督さんも、2人とも男性ですしね。

ねむようこ

そうなんです。だからそこを指摘したとき監督さんも、「え、女の子が泣いてるのに、軽く受け流せないよね」って。「いいんですよ、女は泣く生き物なんです。ほっといていいんですよ」って思いました(笑)。

──原作にはないシーンもありましたが、そのあたりはいかがでしたか。

原作になくて印象に残ってるのは、ももこがたもつの浮気現場を目撃するシーン。たもつの両手がふさがってて、彼の浮気相手である後輩が部屋の鍵をたもつのポッケから出すんですけど、それがもうすごくムカつくなと思って! それを目撃したももこの気持ちを考えると、もう、超かわいそう! 例えばキスしてるとかそういう決定的な現場より、何気なく鍵を出してあげる光景のほうが親密な感じが出てて、よっぽど傷付くと思うんですよ。すごくいいなと思いましたし、すごくムカつきました。

ドラマ「午前3時の無法地帯」

パチンコ専門のデザイン会社Pデザインに勤めはじめた若きデザイナー、ももこ。ひとくせもふたくせもある先輩たちに囲まれて、日々、仕事に恋に全力投球!! 毎日怒られながら、徹夜しながら、真正面から仕事とぶつかりあって大きくなっていくももこ。忙しすぎて彼氏とうまくいかなくなった時に出会った、年上のミステリアスな男性とももこの恋はドキドキがいっぱい! 誰にでも起こりそうな感情移入度120%のラブストーリー。

キャスト

本田翼、オダギリジョー、青柳翔、和田聰宏、永岡佑、木南晴夏、宇野祥平、河井青葉、碓井将大、藤本泉、逢沢りな、丸高愛実、山田真歩、中別府葵、吉永淳

スタッフ

脚本:高田亮
監督:山下敦弘(#1~4、10~12)、今泉力哉(#5~9)
企画プロデュース:三宅裕士
プロデューサー:龍貴大、根岸洋之、梅村安
主題歌:moumoon
制作:マッチポイント
製作・著作:BeeTV

ドラマ「午前3時の無法地帯」はBeeTVにて配信!

ねむようこ

プロフィール画像

2004年フィール・ヤング(祥伝社)にてデビュー。身近な女の子を魅力的な描線で描き注目を集める。2008年より同誌にて「午前3時の無法地帯」を、2009年より続編となる「午前3時の危険地帯」を連載。2011年からは月刊flowers(小学館)にて「とりあえず地球が滅びる前に」を、2012年からはフィール・ヤングにて「トラップホール」を連載中。2013年3月、代表作「午前3時の無法地帯」がBeeTVにてドラマ化を果たす。