伊織もえはWebtoonの編集者になれるのか?GIGATOON Studio秘伝の新人研修を大公開!縦スクロールマンガはこうして作られていた……!

Interview

伊織もえ、五十嵐編集長、イザナギゲームズ代表・梅田慎介氏、KidariStudio・金榮勳氏 座談会

こうして約半日にわたるお仕事体験を終えた伊織。この1日の総括として、最後に伊織本人のほか、五十嵐編集長、イザナギゲームズ代表の梅田慎介氏、さらにGIGATOON Studioと業務提携する韓国の制作会社・KidariStudioの金榮勳氏を交えた座談会を実施した。以下にその模様をお届けする。

編集体験はどうだった? Webtoonは今後どうなっていく?

──今日は1日お疲れさまでした。

伊織もえ お疲れさまでした! めっちゃ楽しかったです! 今日、仕事をしにきたという感じが全然しない。

──“仕事”として“仕事体験”をしていただいたんですけどね(笑)。

伊織もえ

伊織 そうなんですけど(笑)。好きなマンガのお話がいっぱいできて、実際にマンガが描かれている現場も見られて、しかも絵を描く体験までさせていただいて。すごく貴重な1日になりました。

──実際に編集や制作の仕事を体験してみて、何かイメージと違った点などはありましたか?

伊織 マンガを描く現場って、お誕生日席に作家さんがいて、その前に向かい合わせでアシスタントさんがいて、というイメージだったんですけど……さっきお邪魔したイザナギゲームズさんは全然そうじゃなくて、どちらかというと普通の会社のオフィスみたいな感じだったのが意外でした。あと、紙とペンをまったく使っていなくて、全部の工程がデジタルで完結する現場なんだということにもけっこう驚きました。

──今はWebtoonに限らず、フルデジタルでマンガを制作する現場も珍しくなくなっているようです。

伊織 今は「マンガは紙でなければいけない」という考え方から、ようやく電子書籍が普通に受け入れられる空気になってきていますよね。マンガ文化が大きな転換期に来ているのかな、とちょっと思っていて。もちろん古き良き日本のマンガの伝統みたいなものは絶対になくしてはいけないものだとは思うんですけど、マンガの読まれ方が今後どんどんデジタルに移行していくであろうことを考えると、制作体制自体もデジタル化していく流れは必然なのかなと思いますね。

──1人の作家が中心となって描くのではなく、最初からチームで分担して描くという体制についてはどんな印象がありますか?

伊織 今はまだ、アニメ化されたり映画化されたりするほどのヒット作って1人の作家さんが作っているものが多いと思うんですよ。GIGATOON Studioさんのように組織だって作っている作品には、まだそこまでのヒット作が出ていないように私は思っていて。そういうものが何か1個出てくることで、Webtoonへの認識もちょっと変わってくるんじゃないかなと思いました。

──つまり伊織さん個人としては、「1人で描いているかチームで描いているかは、そこまで気にすることでもない」という感じ?

伊織 そうですね、あまりそこを分けて考えてはいないです。どっちがいい悪いではなく、どちらもマンガ制作のスタンダードとして成立していくものなんじゃないかなと思っています。

──まあ、どう作られようが最終的には作品が面白ければそれでいいですもんね。

伊織 そう! うふふふ(笑)。

タテ読みマンガが日本でもたくさん作られれば、
“マンガに就職する”人が増える

──今この場にはGIGATOON Studioの五十嵐さん、イザナギゲームズの梅田さん、KidariStudioの金さんにも同席いただいています。せっかくなので、伊織さんが“本当にWebtoon業界で働くとしたら目線”で何か彼らに聞いておきたいことなどはありませんか?

伊織 本当に働くとしたら目線でですか? ええと……月給……(笑)。

一同 あはははは!

梅田慎介(イザナギゲームズ) 今、いろんなメディアから引っ張りだこの伊織さんに月給を聞かれたら、「すみません」と答えるしかない(笑)。

伊織 (笑)。でも、本当に働くとしたら……絵が初心者の人でも戦力になるのか、就職できるのかということはちょっと気になります。

梅田 伊織さんくらいうまかったら何も問題ないですけど(笑)。

「喧嘩女子眼鏡大王」より。次のページで第1話の試し読みができる。

五十嵐悠(GIGATOON Studio) 即戦力ですよ。

伊織 いやいや、そんな。例えばマンガ家を目指す人って、これまでだと「まずはアシスタントになって、トーン貼りとかの修行をして……」という流れがあったと思うんです。でも今後タテ読みのマンガが日本でもたくさん作られていくようになれば、そういう流れとはまったく違う道筋で、いわば“マンガに就職する”みたいな人が増えるのかなって。マンガを目指す人の選択肢が増えるのかな?というのはすごく気になりました。

梅田 おっしゃる通り、その門戸はすごく開かれると思います。Webtoonの場合、入社してきて研修さえ終わればけっこうすぐに制作作業に入って、それが作品として世に出て行く工程の中に加われるんですよ。ゲームと同じく。

五十嵐 従来のマンガのように1人の天才に依存する形ではないので、何か1つ特化した能力を持つ人であれば戦力になれる世界なんです。それで言うと、韓国ではそれぞれの工程を担っている人たちのことを“作家”と呼ぶんですよ。全員が作家なんです。

伊織 へえー!

五十嵐 日本のマンガ界では、アシスタントさんのことを作家とは呼ばないですよね。それは師匠・弟子という関係性が強すぎるゆえのことなんですけど、Webtoonにはそれがない。全員がクリエイターとしてリスペクトの対象になっているし、いやらしい話、印税もシェアされる仕組みになっていて。そこはけっこう重要なポイントになると思いますね。

伊織 いい意味で平均化されるわけですね。その意味でも、今日の“新人研修”で教えていただいたような形で業務がマニュアル化されているのはすごくいいなと思いました。

五十嵐 こういうクリエイティブな世界では、ややもするとマニュアルって否定的に見られることも多かったりするんですけど、少なくとも伊織さんにはポジティブに受け取っていただけたようでよかったです。我々には「クリエイターとして食っていける人を1人でも増やしたい」という思いがあるんですよ。僕はもともと小学館にいて、ヨコのマンガをずっとやってきた人間なんで、マンガ家のアシスタントから抜け出せずにそのまま引退しちゃうような人をたくさん見てきたんです。Webtoonの世界では、そういう人を減らしていけるんじゃないかと思っていて。

伊織もえ

伊織 そのためにも、もっとWebtoonのユーザー層を広げていかないといけないですよね。タテ読みのマンガというものをもっと広く一般に読んでもらうためには、どうしたらいいんでしょう?

梅田 Webtoonはスマホがメインの媒体ということもあって、カジュアルなスナック菓子みたいな感覚で読む人が現状は多いんです。なので、従来のマンガが持つ多様性であったり、人生を変えるほどの感動が読者から求められていないんじゃないかと僕は思っています。それが求められるようになっていけば状況は変わると思うので、そのためには我々作り手が少しずつ読者を教育していくと言いますか、お決まりの展開を楽しむだけではなく、いろんな種類の感動が得られることの喜びを知ってもらう、そういうWebtoonのあり方を受け入れてもらう努力をしていかなければいけないと考えています。そういった作品作りは、もともと日本の得意分野だと思いますし。

金榮勳(KidariStudio) 私からしますと、日本の内需市場はすでに世界でもっとも大きいのではないかと思います。LINEマンガやピッコマなどで消費されるWebtoonの量を見ても、グローバル市場の中でそこに匹敵する国はまずない。日本はもともとコンテンツを愛する消費者層がとても幅広く強い国ですし、コンテンツの核心となる物語とキャラクターを生み出すことにかけては一日の長がある。現在、韓国や中国の企業がWebtoonのグローバル市場を積極的に開拓しておりますが、その市場を成長させる主要な役割を日本のコンテンツ産業が果たすだろうと我々は予測しています。GIGATOON Studioとのパートナーシップによってその成功例を作り、そのことを立証したいんです。

五十嵐 KidariStudioやイザナギゲームズとの協業も含めてですが、そのようにWebtoonの未来を見据えて動いているところはGIGATOON Studioの強みかなと思っていますね。「マンガの未来を作る」というのが我々のミッションであり、Webtoonを一過性のブームにするのではなく日本に根付かせる……例えば、権威あるマンガ賞を獲れるWebtoon作品を作る、というようなところをゴールに設定しているので。

 そうしたWebtoonの未来に対するビジョンに共感できたことが、GIGATOON Studioと業務提携を結ぶことになった大きな要因のひとつでもあります。五十嵐さんたちは意志決定も速い。このことは特にWebtoonのような流れの速い業界においてはもっとも重要な要素です。DMMとGIGATOONは、これまでに接触した日本企業の中でもっとも迅速な意志決定力と実行力を持っています。

伊織 すみません最後に聞きたいことがあって……韓国のWebtoon作品って、日本での連載が長期休載になることが多いイメージがあるんです。それって何か特別な理由があるんでしょうか?

 週刊連載というシステムは作家にとって大きなストレスになりますし、その作業量もすごいものです。作家自身、連載を始めてみたら予想以上に負荷が高くて驚くケースもありますから、まして読者の立場ではその過酷さを実感することは難しいでしょう。もちろん休載は読者の皆様にも申し訳ないですし、売上という意味でも苦しいことです。できるだけ休載にならないよう、作業量やスケジュールを調整するのもプラットフォームの役割だと考えています。今後は、例えばNetflixのドラマのように全編を制作し終えてから連載を始めるようなやり方もあり得ると思います。

伊織 なるほど、ありがとうございます! シンプルに週刊連載は大変、ということなんですね(笑)。それが聞けてよかったです。

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E-MAIL:gs-info@gigatoon.com

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伊織もえ(イオリモエ)
1月24日生まれ。コスプレイヤーとして人気を誇り、各誌の表紙を飾る。2019年には講談社より写真集「ぼくともえ」を刊行、2021年には秋田書店より2冊目の写真集「内緒話」が上梓された。ラジオ番組「伊織もえのCHUCHUチューズデイ ~夜ふかしラジオ~」ではパーソナリティも務める。