荒廃した未来世界でプレイヤー同士が銃撃戦を繰り広げる、VRMMO(仮想現実大規模多人数オンライン)ゲームを題材にしたテレビアニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(以下:GGO)」。6月30日の最終話放送を間近に控え、DVD / Blu-ray第1巻が6月22日にリリースされた。
これを記念してコミックナタリーでは原作小説の作者である時雨沢恵一と、同作が生まれるきっかけとなった「ソードアート・オンライン(以下:SAO)」の原作者・川原礫による対談を企画。「GGO(小説)」の執筆経緯や、ガンマニアとして知られる時雨沢が作品に込めたこだわりを語ってもらった。私物のエアガン・P90を持つ時雨沢と、レプリカ剣「1/1 エリュシデータ」を構える川原の勇姿を収めた写真とともにお届けする。
取材・文 / はるのおと 写真 / 稲垣謙一
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- ※本特集では「ガンゲイル・オンライン」を以下の略称で表記します。
- アニメ版:「GGO(アニメ)」
原作小説版:「GGO(小説)」
劇中に登場するVRMMOゲーム:
《ガンゲイル・オンライン》
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- ※本特集では「ソードアート・オンライン」を以下の略称で表記します。
- アニメ版:「SAO(アニメ)」
原作小説版:「SAO(小説)」
劇中に登場するVRMMOゲーム:
《ソードアート・オンライン》
「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」
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レン
長身がコンプレックスの女子大生・小比類巻香蓮(こひるいまきかれん)は、仮想現実でならば小さくてかわいらしい姿になれるのではないかとVRMMOに目を付け、いくつものゲームを試す中で理想のアバターを手に入れることができた《ガンゲイル・オンライン》をプレイすることに。内容も知らぬまま始めたそのゲームは、荒廃した未来世界で人々が銃による戦いを繰り広げる殺伐とした内容だった。ゲーム内でピトフーイと名乗る女性プレイヤーと知り合った彼女は、チーム戦による大会《スクワッド・ジャム(SJ)》への出場を誘われ……。
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ピトフーイ
本作に登場する《ガンゲイル・オンライン》は、元々は「SAO(小説)」の1シリーズ《ファントム・バレット》編に登場したゲーム。時雨沢がその設定に魅せられ、自分でも《ガンゲイル・オンライン》を題材に小説を執筆したいという思いに駆られたことから、単独作品としてもうひとつの物語を発表するに至った。
同人誌でもなんでも「ガンゲイル・オンライン」の二次創作が書きたかった
──まず、時雨沢さんが「GGO(小説)」を書かれるようになった経緯を教えてください。
時雨沢 《ファントム・バレット》編を読んで「ゲーム内だったら銃撃戦をやっても誰も死なないからいいな」「同人誌でもいいから二次創作を書きたいな」と考えていました。すると「SAO(アニメ)」のプロデューサー・大澤信博さんから「2期で《ファントム・バレット》編をやるためにグアムで射撃の取材をするから、一緒に来てくれない?」と言われて。それでグアムの射撃場を案内しつつ、「《ファントム・バレット》編の銃器監修をやりたい」というのと、合わせて「実はこんなスピンオフのアイデアを温めていて……」と提案したんです。
川原 あのグアムの取材は、完全に時雨沢さんをガイド扱いしてしまいましたね。英語をまともにしゃべれるのも時雨沢さんだけという(笑)。
時雨沢 取材自体は面白かったですよ。そのスピンオフの提案に川原さんや担当さんといった「SAO(小説)」サイドの方々から快くOKをいただけて、「SAO II(アニメ)」の放送が終わった頃から書き始めました。
川原 最初にスピンオフの話を聞いたときは光栄でした。それまで時雨沢さんとは忘年会などでお話はしていましたけど、もう電撃文庫のレジェンド……伝説級作家ですし、なんと言っても僕が受賞した第15回電撃小説大賞の最終選考委員ですから。ただ1点だけいただいたプロットから変えてもらったことがあって、《ファントム・バレット》編に名前だけ出てきた銃士X(マスケティア・イクス)というお姉さんが、今のピトフーイの位置で登場していたんです。それを昔からの「SAO(小説)」ファンがどう受け取るか読めなかったので、オリジナルキャラにするようお願いしました。
時雨沢 結果的にはその変更のおかげで助かりました。当初のプロットでは、第3回《BoB》(《ガンゲイル・オンライン》中の大会《バレット・オブ・バレッツ》のこと)でキリトにボッコボコにされた銃士Xが頭にきて《SJ》を開催するという流れでした。でもオリジナルキャラに変更することになり、ピトフーイというキャラクターが誕生したおかげでその後の展開が膨らんだので。
川原 既存のキャラクターだと自由に使えないというか、羽ばたけないですからね。
時雨沢 そうなんです。ただ「SAO(アニメ)」で銃士XはM14・EBRという銃を使っているんですけど、これには裏設定があって。小説版だと彼女が使っている銃は決まっていなかったので、アニメ化にあたって銃器監修として私があの銃を指定しました。それは自分が提案していたプロットの中で、彼女が《ガンゲイル・オンライン》に登場するエムの銃を借りてきたくだりがあったからなんです。
川原 そんな名残りがあったんですね。
──その「SAO II(アニメ)」の銃器監修ですが、具体的にどんなことをされたのでしょうか?
時雨沢 まず種類が未確定だった銃を決めました。先ほどの銃士Xの銃とか、ゼクシードの銃とか。あと銃に関して極端に不自然なシーンがないかどうか、原作や脚本と絵コンテをチェックしました。ゲーム世界が舞台なのでそれなりの嘘は許容できるんですけど、「さすがにちょっと」というのは言わせていただいて。たぶん私の提案で一番大きかったのは、シノンのサイドアーム(補助兵器)を変えたことですね。
川原 「SAO II(アニメ)」制作にあたり、資料として時雨沢さんの私物のエアガンをごっそりと現場(A-1 Pictures)に貸していただいたんですけど、小説版でシノンが使っていたサブマシンガン・H&K MP7を見ると思ったより大きくって。伊藤智彦監督がシノンのチャームポイントだと言っていたお尻がMP7でまるっきり隠れちゃうくらいだったんです。
一同 (笑)。
川原 だからアニメではもう少し小さい銃に変更することになり、フルオート機構付きのハンドガン・グロック18Cになったんです。
時雨沢 せっかくのセクシー衣装なのにお尻が見えないのはもったいない。
川原 本当に「SAO(アニメ)」ではすごく力添えをいただきました。
「SAO」のネタバレを「GGO」ではしたくなかった
──おふたりは、4月から放送されている「GGO(アニメ)」をどのように観られていますか?
時雨沢 とにかくレンちゃんがかわいい。それが本当によかったです。
川原 原作イラストの黒星紅白さんの特徴がアニメでもよく出ていて、すごいですよね。これの前に黒星さんがキャラクター原案をされた「プリンセス・プリンシパル」を、制作されているStudio 3Hzさんがやっていたおかげでしょうか(笑)。
時雨沢 偶然にも3Hzさんは黒星さん作品2連発でしたね。銃に関してはできるだけ細かく描いてほしいと思いつつも、それを言い出すときりがありません。だから口を出すのは設定までで、あとはアニメ制作側にお任せしています。
川原 銃の3D化は検討されたんですか?
時雨沢 「銃は3Dでやるんですか?」と3Hzさんに聞いたところ「2Dのほうがいい」ということでした。どう描写するかは、スタジオの色にもよるんでしょうね。
川原 スタジオごとの色はやはり出ますよね。「SAO(アニメ)」はA-1 Picturesさんに作っていただいていますけど、同じ世界観のはずなのに「GGO(アニメ)」はここまで画面の雰囲気が違うのかと思いながら観ています。あと「GGO(アニメ)」は1話で丸々銃撃戦をして、2話で説明回を入れて、そこから3~5話とまたアクションだったじゃないですか。アニメを作るのがとにかく大変そうですよね(笑)。
時雨沢 来週から《SJ2》が始まりますけど、その次の話から最終話までずっとアクションが続きますからね(インタビューは6話放送後の5月24日に行われた)。大変だと思います。
川原 ようやくフカ次郎も出てきましたしね。「劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-」でも名前だけは出てきていたので、「GGO(小説)」を読まれていない方はやっとどんなキャラかわかったという。
──「オーディナル・スケール」でフカ次郎の名前が出てきたり、「GGO(小説)」でシノンやキリトといった「SAO」キャラに関する描写があったり、同じ世界観だからこそできるクロスオーバーはファンにとってはうれしいですよね。
川原 でも、時雨沢さんはそういった要素を相当控えめにしていますよね。
時雨沢 私が後追いしているので入れようと思えばいろいろ入れられるんですけど、「SAO」のネタバレになってはいけないと考えてできるだけ抑えています。他人のキャラクターなんて簡単には動かせないから、シノンもあくまで伝聞レベルで登場するだけ。「SAO(小説)」の編集者である三木一馬さんから提案いただいて、《絶剣》の話や総務省の菊岡さんが出てくるくらいです。
──そう言えば菊岡さんは、原作では2巻以降登場していません。
時雨沢 レンとの戦闘で、《ガンゲイル・オンライン》をプレイしても彼らの求める戦闘訓練にはならないとわかったので、彼が関係する自衛隊チームはもう登場しないんじゃないでしょうか(笑)。とにかく「SAO(小説)」を読んでいない読者に対するネタバレだけは避けたいので、スピンオフとはいえ、できるだけ本編には触れないようにしているのですが……でもSAO事件の顛末だけはどうしても触れざるをえなかった。
川原 それくらいは全然オッケーでしょう(笑)。本当に時雨沢さんのネタバレに対する気遣いは見習おうと思っています。毎週の最速放送が終わっても、「関西では放送がまだだから」と詳しい内容はツイートしないようにしていますもんね。
- アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」
- TOKYO MXほかにて放送中
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- キャスト
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- レン:楠木ともり
- ピトフーイ:日笠陽子
- エム:興津和幸
- フカ次郎:赤﨑千夏
- スタッフ
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- 原作:時雨沢恵一(電撃文庫刊)
- 原作イラスト・キャラクターデザイン原案:黒星紅白
- 監督:迫井政行
- シリーズ構成・脚本:黒田洋介
- キャラクターデザイン・総作画監督:小堺能夫
- アニメーション制作:Studio 3Hz
©2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/GGO Project
- アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン①」
- 2018年6月22日発売 / アニプレックス
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Blu-ray完全生産限定版
7344円 / ANZX-14181 -
DVD完全生産限定版
6264円 / ANZB-14181
- 収録話数
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- 第1話「スクワッド・ジャム」
- 第2話「GGO」
- 特典
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- 黒星紅白描き下ろし全巻収納BOX
- アニメ描き下ろしジャケット仕様
- 特製ブックレット
- 特典CD:キャラクターソング「Lucky Girl」(レン)
- 映像特典:ノンクレジットオープニング&エンディング映像
- 音声特典:オーディオコメンタリー(#01)出演・楠木ともり、興津和幸、時雨沢恵一
※商品の特典および仕様は予告なく変更になる場合がある。
- 発売記念イベント
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- とらのあな名古屋
- 日時:2018年6月30日(土)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏、日笠陽子
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- アニメイト大阪日本橋
- 日時:2018年7月1日(日)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏、日笠陽子
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- アニメイト札幌
- 日時:2018年7月14日(土)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏
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- AKIHABARAゲーマーズ本店
- 日時:2018年7月22日(日)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏、日笠陽子
- アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン②」
- 2018年7月25日 / アニプレックス
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Blu-ray完全生産限定版
7344円 / ANZX-14183 -
DVD完全生産限定版
6264円 / ANZB-14183
- 収録話数
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- 第3話「ファンレター」
- 第4話「デスゲーム」
- 特典
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- 特典CD:キャラクターソング(ピトフーイ)
- アニメ描き下ろしジャケット仕様
- 特製ブックレット
- 音声特典:オーディオコメンタリー
- イベントチケット優先販売申込券
※商品の特典および仕様は予告なく変更になる場合がある。
- 「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」スペシャルイベント
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- 2018年9月16日(日)昼・夜2公演
- 会場:東京国際フォーラム ホールC
出演者:楠木ともり、日笠陽子、興津和幸、赤﨑千夏、朝井彩加、M・A・O、森永千才、内山夕実、種﨑敦美、白石晴香ほか
- 時雨沢恵一(シグサワケイイチ)
- 1972年生まれ。「キノの旅」で2000年にデビューし、同作は2018年現在も執筆が続くロングヒットとなる。2014年に「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」を発表。現在7巻まで刊行されている。
- 川原礫(カワハラレキ)
- 1974年生まれ。2002年からWeb上で小説の発表を始める。2008年「アクセル・ワールド」が第15回電撃小説大賞で《大賞》を受賞し、2009年に同作が出版され商業デビュー。自身のサイトで連載していた「ソードアート・オンライン」も同年に刊行が始まり、現在20巻まで発売中。
小道具協力(川原礫):「1/1 エリュシデータ」
CEREVO × GOOD SMILE COMPANYのタッグにて開発中!