やりたい放題やった5.5話に悔いなし

──「GGO（アニメ）」の遊び的な部分としては、やはり時雨沢さんが脚本を書かれた総集編の第5.5話「ルフラン」も忘れられません。

時雨沢　どこかで総集編を1回入れようという話になっていて、大澤さんから「《SJ1》が終わる5話と《SJ2》が始まる6話の間がベストなのでは」という提案を受けました。内容については3度にわたる会議の末、《SJ1》を観ていないピトフーイがエムと一緒に振り返るという体になり……やりたい放題やりました。

川原　普通、総集編となるとアニメファンはがっかりしますけど、5.5話は逆にうれしくなっちゃうくらいこだわっていましたね（笑）。アニメなのに、あとがきまであって。時雨沢さんと言えばあとがきですからね。

時雨沢　単純な総集編のプロットと合わせて、あとがき企画も提案していたんですよ。そうしたら「最後の3分くらい遊びを入れられます」となったので、入れさせていただきました。もう思い残すことはありません。

──本編ではほとんど活躍しないままやられてしまった《ZEMAL（全日本マシンガンラバーズ）》が主役のように扱われる「マシンガンラバーズ・オンライン」など、笑わせていただきました。

時雨沢　オープニングさえそれっぽく流れたら、彼らでも主役になれるんですよ（笑）。

川原　エンディングテロップで、特殊効果音として「弾丸飛翔音：楠木ともり」ってクレジットが出てきて「？」となったんですけど。その後のあとがきで、文字通り楠木さんが弾の飛ぶ音を声で表現していて「これかよ」と（笑）。

時雨沢　「おと、じゅうよう」の楠木さんの効果音、よかったですね。この5.5話が私のアニメ脚本家デビューとなりました。本当は「ルパン三世 PART5」でデビューするはずだったのに（参照：「ルパン三世 PART5」脚本家7名を追加発表、それぞれが“一番好きなルパン”描く）。

川原　じゃあ「ルパン」でも、楠木さんの特殊効果音みたいなお遊びを入れてみるというのは……。

時雨沢　さすがにそれを言える雰囲気の現場ではないので（笑）。

「アリシゼーション」のアニメは、長く皆さんにお付き合いいただくことになるかも

──最後に、間もなく放送される最終回と、今後の「GGO（アニメ）」「SAO（アニメ）」の展望について伺わせてください。

時雨沢　最終回はまたガツンと派手なアクションもありますし、大団円で終わりますので、ぜひ楽しんでいただいて。すべての謎が解けたあとで観直すのも面白いと思います。あと「GGO（アニメ）」の続きは……もちろん2期があればうれしいんですけど、ここからは今回のシリーズ以上にただゲームしているだけなんですよね。《SJ2》までは、まだピトフーイが自分の死を賭けるというドラマがあるんですけど。

川原　僕は《SJ3》のマップが水没していくギミックが好きだから、ぜひアニメで観たいですね。

──勝手な希望ですが、《SJ3》は劇場版での展開を期待しています。さらに激しさを増す銃撃戦や映像映えしそうなギミックを、大スクリーンで観てみたいです。

時雨沢　先日発売した新刊から始まった《SJ4》がオールキャスト大暴れで、劇場版のノリで書いているんですよ。でも確かに《SJ3》は、テレビシリーズというより劇場版のほうが面白いかもしれません。

川原　豪華客船があんな風になるところとか、スクリーンで観たいですよね。

時雨沢　あと「GGO（小説）」は海外で実写化されないかなと思っていて。

川原　（笑）。全員向こうの人で？

時雨沢　そう。この作品って別に日本が舞台である必要はないので、小比類巻香蓮ではなく外国人の女子大生“カレン・スミスさん”が《ガンゲイル・オンライン》をプレイしても全然いいと思います。

川原　アメリカで実写化するなら、舞台はアメリカ、役者も海外の人になるのが自然ですよね。

時雨沢　ただ、身長が高すぎることがコンプレックスというヒロインの設定をアメリカ人女性に適用すると、どれぐらい大きくなっちゃうんだっていう。2メートルくらいかな。

──香蓮にプラス20センチされた女性ですか（笑）。いつか観られるのを楽しみにしています。そして10月からはテレビアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション」が始まります。どういった作品になりそうでしょうか？

川原　まあ、とにかく長い。

時雨沢　（笑）。

川原　脚本会議が始まって1年くらい経ちますけど、まったく終わりません。

──原作では10巻分、外伝を含めると12巻分もある長編だけあって、ストーリーが端折られるんじゃないかと心配しているファンもいるようです。

川原　そこは期待していただいて大丈夫です。ただ、原作の読者はわかると思うんですけど、キリトを演じる松岡禎丞さんは後半どうするんだという心配はあります（笑）。あと、これまで「SAO（アニメ）」を手がけて下さった伊藤監督から「アリシゼーション」では小野学監督に変更となりますが、脚本の段階ですごく細かいところまで気配りしてくださっているので、おそらく「アリシゼーション」のアニメは、ただ原作をアニメ化しただけではない、素晴らしいものになるんじゃないかなと期待しています。

時雨沢　やっぱりファンは、長くてもじっくりやってくれたほうがありがたいですよね。アメリカのテレビドラマなんて、人気があるとシーズン10とかまで平気で続けるくらいだから、「アリシゼーション」がどれだけ長くてもちゃんとついてきてくれますよ。

川原　がんばってついてきてほしいです。でも僕、何年も前から諸々のアニメの作業が終わったら都心から引っ越すと言っているんですけど、ずっと何かしら続いていて全然引っ越せていなくって。

時雨沢　東京オリンピックまでに引っ越せるかどうかですね（笑）。