何万発も撃ち合っているのに誰も死なない、時雨沢史上もっとも平和な銃撃戦
──《ファントム・バレット》編に比べると、同じ世界観でも「GGO」はストーリーがかなりライトで、銃撃戦の楽しさが強調されていますよね。
川原 《ファントム・バレット》編の原作を書いていた頃は、まだ「オンラインゲームを扱った小説だけど、“ゲームが楽しい”だけじゃ成立しない。現実世界の危機を入れないといけない」という固定観念に囚われていました。だから《ファントム・バレット》編では、ゲームプレイヤーのデス・ガンさんがリアルに人を殺しているというギミックを使ったんですけど、最近ようやくゲーム好きのキャラクターたちがゲームをしているだけでも小説として成立するなと思えてきました。「GGO(小説)」はそこを真正面から書いてしっかり面白いし、それでもストーリーが軽くなりすぎないので「これが伝説級作家の力か」と唸りながら読んでいます(笑)。
時雨沢 《ファントム・バレット》編がシノンの魂の救済的なストーリーで「こんな重いものは俺には書けん」と感じ、とにかく明るいガンアクションものになるように書いています。もうスポーツマンガくらいのノリで。「SAO(小説)」だと、みんなで楽しくゲームをしている《キャリバー》編がイメージ的には一番近いかな。
川原 ゲームだからこそ銃をバンバン撃ちまくって、殺したり殺されたりしても禍根が残らない。「GGO(小説)」はその設定を本当にうまく使っていますよね。
時雨沢 私は銃に詳しいぶん、「撃たれたらただでは済まない」というのをわかっているつもりです。「キノの旅」とかほかの作品でも、撃たれたけど主人公ががんばるという話をあまり書きたくない。銃なんて、撃たれたら大ダメージに決まっていますから。だから何万発も撃ち合っているのに誰も死なない「GGO」は、時雨沢史上もっとも平和な銃撃戦です(笑)。
──《ガンゲイル・オンライン》における銃撃戦の映像表現が、「GGO(小説)」のライトなイメージにマッチしているとアニメを観て感じました。たとえば銃で撃たれても血が吹き出すわけではなく、赤い被弾エフェクトが表示されるだけですし。
川原 「SAO(アニメ)」で伊藤監督がこだわっていたところですね。ダメージとして視聴者に伝わりつつもグロくはないラインを探ってくださりました。
時雨沢 あの描写のおかげで、遠慮せずに手足を吹き飛ばせますからね。手足が吹き飛ぶのは重要なネタにもつながるので、それがNGだったら作品として成立しなかったでしょう。
川原 私の小説をアニメ化した「アクセル・ワールド」を作ったサンライズさんも「『アクセル』は手足を吹き飛ばせるのでアクションの演出の幅が広がる」とおっしゃっていました。それに「GGO(アニメ)」は死んでも「DEAD」というプレートが表示されるだけなので、レンちゃんが容赦なく死体を盾として使ってもエグくならない(笑)。あと演出面だと僕は、レンの愛銃・P90の発射音がすごく好きです。ああいった音は時雨沢さんが監修されたんですか?
時雨沢 はい。P90の発射音は、銃声音の素材をいろいろ加工してもらって、本物らしいあの超高速連射音になりました。
川原 やはりこだわっていますね。エムさんのM14・EBRも、発射音と合わせてキーンって鳴るところとか芸が細かい。
時雨沢 あれは空薬莢が飛んだ音か、もしくは金属パーツが擦れた音ですね。銃器の描写だと、原作に入れていたマガジン交換の要素をアニメでもときどき描いてもらえてうれしいです。ただリアルかどうかと言えば必ずしもそうではなく、たとえばP90を撃っていてマガジンから弾倉が減っていく様子が見えるじゃないですか。現実のスピードはあんなものじゃありません。
──実際のほうが速いということですか?
時雨沢 速いです。秒間15発で、P90のマガジンは50発だから撃ち続けると3.3秒で弾倉がなくなってしまう。この減り方はアニメで正確には描けないスピードなので、やや嘘をついて遅らせて見せるしかない。自動拳銃のブローバックも現実のスピードだと速すぎて、撃った次のコマには戻っているのが正しい描写になるそうです。でも、そこを無理にリアルにする必要はなくて、《ガンゲイル・オンライン》はゲームなんだから、多少誇張が入っていてもノリノリで楽しければいいわけです。
川原 「《ガンゲイル・オンライン》を作っているザスカーがそう設定しているんだ」って言っちゃえば済む話ですもんね(笑)。
時雨沢 私はマニアなのでリアル路線にいきがちですけど、ゲーム世界なんだから、P90のマガジンキャパシティを100発にカスタムできちゃってもいい。
川原 なんならマガジンが一瞬で充填されるスキルがあったって構わない。そういった自由さがゲーム世界のいいところですからね。
完璧少女“楠木ともり”という才能を世に示せたことがうれしい
──声優さんについて伺います。どなたも、作中の現実世界と《ガンゲイル・オンライン》内での演じ分けが見事ですよね。
時雨沢 大澤さんから「現実世界と《ガンゲイル・オンライン》内の声優さんを同じ人にしましょう」と聞いたときは驚きましたけど、皆さんうまく声を使い分けてくれていますね。レン役の楠木ともりさんは自身が出せる一番高い音と一番低い音を出しているそうですし、興津和幸さんも普段はエムみたいな低い声は絶対に出さないそうです。
川原 SHINC(新体操部)のメンバーの声も印象的です。
時雨沢 アマゾネスのドスの効いた声と、女子高生のキャピキャピした声を使ってね。ボス役の朝井彩加さんなんて本当にすごいです。
川原 フカ次郎の声も楽しみですね。
時雨沢 フカ次郎だけは、現実世界の美優とあまり変わりません。彼女は現実世界とゲーム世界でほとんどキャラクターが変わらないから。でも彼女を演じる赤﨑千夏さんを始め、「GGO(アニメ)」は本当にベテラン勢が楠木さんをサポートして、引っ張り上げてくれていますね。
──楠木さんはほぼ新人ながら、堂々たる主役ぶりですよね。
時雨沢 「GGO(アニメ)」は、“楠木ともり”という才能を世に示せたこともうれしい点です。まだまだデビューしたてですが、将来ビッグになるであろう彼女の主演2作目で、貴重な18歳のときの演技を収められました。
川原 前に主役をされたテレビアニメ「メルヘン・メドヘン」から比べても成長を感じますよね。
時雨沢 「メルヘン・メドヘン」については「楠木さんの主役デビューを取られた、キー!」なんて思っていたんですけど(笑)。彼女は演技もうまくて、歌もうまくて、サバゲーもうまくて……一体何者なんでしょう、あの完璧少女は。
──声優と言えば、時雨沢先生も第3話に“銃が出てくる作品ばかり書いている小説家”として出演されました。
時雨沢 脚本会議で「(《SJ1》主催者の)小説家を出しますけど、声優やりますか?」と言われて、「あっはっは」なんてごまかしていたら本当にやることになって。すごく練習しました。
川原 いい演技でしたよ(笑)。
時雨沢 インタビューされる体でしゃべるだけだったので、まだなんとかなりました。川原さんも「アクセル・ワールド」で《ブリキ・ライター》役として出演されていましたよね?
川原 あれはいい思い出です……とようやく言えるようになってきました(笑)。
時雨沢 少し面白かったのでいい経験にはなりましたけど、もういいかな。
──ただ、原作のあとがきがアニメ化されるとなったら、時雨沢さんはまた小説家役として出演する必要がありますね。
時雨沢 いや、あれがアニメ化されることは100%ありません。私が断固阻止します(笑)。
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やりたい放題やった5.5話に悔いなし
- アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」
- TOKYO MXほかにて放送中
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- キャスト
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- レン:楠木ともり
- ピトフーイ:日笠陽子
- エム:興津和幸
- フカ次郎:赤﨑千夏
- スタッフ
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- 原作:時雨沢恵一(電撃文庫刊)
- 原作イラスト・キャラクターデザイン原案:黒星紅白
- 監督:迫井政行
- シリーズ構成・脚本:黒田洋介
- キャラクターデザイン・総作画監督:小堺能夫
- アニメーション制作:Studio 3Hz
©2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/GGO Project
- アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン①」
- 2018年6月22日発売 / アニプレックス
-
Blu-ray完全生産限定版
7344円 / ANZX-14181 -
DVD完全生産限定版
6264円 / ANZB-14181
- 収録話数
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- 第1話「スクワッド・ジャム」
- 第2話「GGO」
- 特典
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- 黒星紅白描き下ろし全巻収納BOX
- アニメ描き下ろしジャケット仕様
- 特製ブックレット
- 特典CD:キャラクターソング「Lucky Girl」(レン)
- 映像特典:ノンクレジットオープニング&エンディング映像
- 音声特典:オーディオコメンタリー(#01)出演・楠木ともり、興津和幸、時雨沢恵一
※商品の特典および仕様は予告なく変更になる場合がある。
- 発売記念イベント
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- とらのあな名古屋
- 日時:2018年6月30日(土)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏、日笠陽子
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- アニメイト大阪日本橋
- 日時:2018年7月1日(日)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏、日笠陽子
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- アニメイト札幌
- 日時:2018年7月14日(土)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏
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- AKIHABARAゲーマーズ本店
- 日時:2018年7月22日(日)14:30開場、15:00開演
出演:楠木ともり、赤﨑千夏、日笠陽子
- アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン②」
- 2018年7月25日 / アニプレックス
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Blu-ray完全生産限定版
7344円 / ANZX-14183 -
DVD完全生産限定版
6264円 / ANZB-14183
- 収録話数
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- 第3話「ファンレター」
- 第4話「デスゲーム」
- 特典
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- 特典CD:キャラクターソング(ピトフーイ)
- アニメ描き下ろしジャケット仕様
- 特製ブックレット
- 音声特典:オーディオコメンタリー
- イベントチケット優先販売申込券
※商品の特典および仕様は予告なく変更になる場合がある。
- 「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」スペシャルイベント
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- 2018年9月16日(日)昼・夜2公演
- 会場:東京国際フォーラム ホールC
出演者:楠木ともり、日笠陽子、興津和幸、赤﨑千夏、朝井彩加、M・A・O、森永千才、内山夕実、種﨑敦美、白石晴香ほか
- 時雨沢恵一(シグサワケイイチ)
- 1972年生まれ。「キノの旅」で2000年にデビューし、同作は2018年現在も執筆が続くロングヒットとなる。2014年に「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」を発表。現在7巻まで刊行されている。
- 川原礫(カワハラレキ)
- 1974年生まれ。2002年からWeb上で小説の発表を始める。2008年「アクセル・ワールド」が第15回電撃小説大賞で《大賞》を受賞し、2009年に同作が出版され商業デビュー。自身のサイトで連載していた「ソードアート・オンライン」も同年に刊行が始まり、現在20巻まで発売中。
小道具協力(川原礫):「1/1 エリュシデータ」
CEREVO × GOOD SMILE COMPANYのタッグにて開発中!