残酷なのにキレイと感じる、不思議な手触り
──「まのさば」は大きな枠組みで見ると“魔法少女もの”ですよね。おふたりは魔法少女というと、どんなイメージがありますか。
時任 魔法少女って光の属性というか。
──光の属性。
時任 女の子の憧れの職業じゃないですけど、夢や希望を描く、キラキラしたイメージがやっぱり私の中では強いです。もちろん、そうじゃない作品もいっぱいあると思うんですけど。「まのさば」はそういうキラキラした魔法少女とは一線を画しているというか……。魔法少女というより“魔女”の負の側面、暗い側面をフィーチャーしていると思うんで、そこが独特で楽しいですね。
三木谷 魔法少女より、魔女という言葉のイメージ寄りですよね。
時任 魔女という言葉にすると、ちょっと悪い印象になりますよね。
──おふたりの、魔法少女ものの原体験というとなんですか?
三木谷 「プリキュア」ですかね?
時任 私は「おジャ魔女どれみ」。魔法少女とはちょっと違うかもしれませんが。
──でも魔女見習いですよね。どちらも明るく、カラフルなイメージの作品の系譜ですね。
三木谷 魔法少女と言えば変身して魔法を使うみたいなイメージがあったので、それと比べると、「まのさば」の魔法少女は地味じゃないですか。
──変身しませんし、魔法は使えこそしますが、強力なものではないですもんね。
三木谷 だから、王道の魔法少女のイメージとはけっこう違うのかなって思います。
──時任さんが「負の側面をフィーチャーしてる」とおっしゃいましたが、作品としてはトラウマを正面から描いているというのも特徴ですよね。
時任 いじめとか、家族の問題とか。全体としてはファンタジーで、自分とは違う世界の話かなという感じですが、突き詰めていくと描かれているのはけっこう現実的な悩みだったりする。
三木谷 そうですね。
時任 そういうふうに感情移入できる、寄り添える部分がありつつ、全体的にはちょっと童話チックというか、「どこかの国のお話なんだろうな」と少し距離を置いて見られる部分もあるので、凄惨なはずのシーンでもどこか「キレイだな」って感じてしまう、不思議な手触りがあるんですよね。
──そういうシーンはきっとマンガでも山場になりますよね。力が入るポイントかと思います。
時任 処刑やトラウマのシーンは、なるべく伝わりやすく、楽しめるものにしたいと思いつつ、勝手にトラウマを追加するわけにはいかないので、決まっている中でどこまで表現できるのか、絵として膨らませられるのか。その制約の中で試行錯誤しています。2巻の見どころは、やっぱりあのキャラの処刑シーンなのですが、納得のいく表情になるまで時間がかかりましたね。原作のスチルをじーっと見て(笑)、どうやったらこの絶妙な表情を表現できるのだろうかと、何度も描き直しました。
どうか最後まで、気を確かに
──「魔法少女ノ魔女裁判」のコミカライズは、連載誌がコミックアルナからコミックフラッパーに変わりました。フラッパーの読者には、まだ「まのさば」に触れたことがない人もいると思います。そんな読者に「まのさば」の魅力を伝えるなら?
三木谷 名前は聞いたことがある、でもよく知らないという人には、露悪的なイメージを持たれがちというか。グロくて、ちょっと残酷で、かわいい女の子たちが苦しい思いをするだけのゲームという伝わり方になりがちなんです。それもすごく楽しい面ではあるんですけど、本質はそこじゃなくて。少女たちの内面を深く描いたドラマこそが「まのさば」の一番の魅力じゃないかと私は思っているので、「こういうのは好きじゃない」って思わずに、ぜひ手に取ってもらえたらうれしいなと思います。
時任 言えないことが多いですよね(笑)。魅力を言葉で伝えようとすると、どうしてもネタバレが気になっちゃう。
三木谷 そうなんですよ!(笑) ゲームはちょっとハードルが高いという方も、マンガなら手に取りやすいと思うので、まずはマンガからぜひ、と言いたいです。
──今日お話を伺ってきて、コミカライズ版はゲームのおいしいところがギュッとまとまったものになっているということがよくわかりました。一方で、ゲームのほうももうすぐNintendo Switch版がリリースされるということで、より身近に感じてもらえるタイミングですよね。
三木谷 そうですね。入り口はどちらでも構わないので、気に入ったらどちらも触れてもらえるとうれしいです。
時任 「まのさば」には魅力的なキャラクターが13人もいるので、ビビッとくる子が1人でもいたら、ゲームなりマンガなりを手に取ってほしいと思います。この作品って感情移入できればできるほど深くハマれると思うので、ビビッと来た方には「ぜひ!」と強く後押ししたいですし、キャラクターを見ただけじゃピンと来ないなという方でもハマれるようにするのが私の仕事なので。
三木谷 おお……(小さく拍手)。
時任 コミカライズをお任せいただいたからには、この作品の魅力をどうにかして伝えなきゃという気持ちでやっています。もともとファンから入ったというところもあり、いちファンとしての布教活動を公式でやらせていただいている感覚です(笑)。ゲームをプレイし終わった方にも楽しめる要素をちりばめてはいるんですけど、新規層をなんとか獲得するぞみたいな。
三木谷 うれしい(笑)。
──「この先も楽しみにしていてください」と言うより、「心の準備をしておいてください」と呼びかけるほうが、「まのさば」には合っていると思うんですが、その観点で最後にひと言いただけますか。
時任 あなたの推しキャラは死にます。
三木谷 (笑)。
時任 でも、気を確かに持っていてください、と伝えたいです(笑)。「まのさば」のいいところはみんな好きになれるところだと思うんです。別に、推し変したっていいんですから。まあ、その推し変した子もいなくなるんですけど……。でも、お気に入りの子がいなくなったからもう読むのやめようというよりは、この子も気になるし、あっちの子も気になる……と、どんどん続けて読めるかなと思うんで、諦めずに読み続けてください(笑)。
三木谷 せつなさんが「気を確かに」っておっしゃられたのが本当にそうで(笑)。処刑のシーンとか、これからどんどん苦しくなっていくと思うんですけど、どうか最後まで、気を確かに持って、付いてきてほしいですね。読み続けるうちに、どの子も新たな魅力がどんどん出てくると思うので。
時任 やっぱり最後まで描けたらいいなと思っているので、応援してくれたらうれしいです。がんばります。
プロフィール
時任せつな(トキトウセツナ)
6月19日、兵庫県生まれ。マンガ家、イラストレーター、コスプレイヤーと幅広く活動を行っている。2025年7月より「魔法少女ノ魔女裁判」のコミカライズを連載中。
三木谷奈々(ミキタニナナ)
Acacia所属の声優。ゲーム「魔法少女ノ魔女裁判」では桜羽エマ役を務めたほか、オープニングテーマとエンディングテーマ、挿入歌の歌唱も担当した。


