後編主題歌の詞を見て
「ステージで歌っている自分」が思い浮かんだ
坂本 ……早く後編主題歌の話がしたい。いい曲なんですよ! 後編はさらにお話が展開していきます。映画の最後の最後にベディの声であるマモくんの歌でベディの気持ちが聴けたら、すごく感動的だろうなと今からワクワクしています。
宮野 どういう形かはまだ言えませんが、“彼の気持ちがひとつ解決した”という言葉の流れと、それが伝わってくるメロディになっています。前編と後編の楽曲の違いは面白いところじゃないかと。
──もうレコーディングも終わったとか。ファンが聴けるのはまだまだ先ですが、後編の主題歌のお話も伺いたいです!
坂本 映画の主題歌の一番大事な役目は、「映画を観終わったときの気持ちを邪魔しない」ことだと思っているんです。「独白」はかき乱されるみんなの気持ちに寄り添うことを目指しました。後編主題歌は観終わった余韻の中でマモくんの声が降り注いできて、みんなが一斉に物語の終わりを受け止める姿を思い浮かべながら書いていました。この歌詞は劇場版「キャメロット」のために書いているものですが、同時に私の大好きな宮野真守のためでもある。宮野真守の新曲として出るものなので、作品を見ていない人が聴いたときにも、マモくんの声で聴くのに値するテーマでありたいし、マモくんの声ではこういう響きになって届くんだろうなとイメージをふくらませました。
宮野 うれしかったし、ありがたかったですね……。真綾さんが書いてくれた歌詞はもちろんベディの気持ちなんだけど、なんていうのかな。今、感染症の影響で世界的にもエンタメ的にも苦しい状況が続いている中で、「じゃあ僕は何を歌っていくのか」というところを、僕の気持ちをすごく考えて書いてくださったんだなと感じて。僕はこの歌詞を見たときに、ステージで歌っている自分がぱっと思い浮かんだんです。ステージで歌うというのは、リアルの場でコンサートが開催できたということで、やっとみんなの前に立つことができたということ。その特別な瞬間が思い浮かぶくらい、歌詞が僕自身の気持ちを表現してくれているし、僕自身も優しく包んでくれました。
坂本 「FGO」を大事にしつつ、マモくん自身と、マモくんのファンの方に向けても届くものであってほしいと思っていて、両立できる部分をどうやったら見つけられるかなと考えながら作っていましたね。私はマモくんがステージで歌っているのを聴いて泣く準備ができています!
宮野 この歌、本当に泣けるんですよ! 特に最後の大サビは泣けます。後編主題歌の話は後編公開時の取材でも何度もお話しすることだとは思うんですけど、でもやっぱり今制作しているというところで意外と旬でもあるので、今言っておきます。なにより真綾さんに歌詞を書いてもらって歌えるというのが、僕の人生の中においてすごく幸せなことです。真綾さんの曲も昔からずっと聴かせていただいているので、自分が歌うとは思ってなかった。
坂本 こちらこそですよ。ご縁ですね……。実は「FGO」にずっと携わってきたからこそ、「自分で歌うことの限界」も感じていたんです。テーマをいくら変えても、自分の同じ声で歌っているからどうしても曲が似通ってくるんじゃないかなって。マモくんが歌うっていうのを考えたときに、初めて出てくる言葉だったり、自分で歌わないからこそ初めて「FGO」の曲で表現できたりというのがあったので、「FGO」に関わる主題歌としても新しかった。できあがった歌をすでに聴かせてもらっているんですが、感慨深い気持ちになりました。
宮野 作曲はアーティストデビューのときから信頼している大好きな方に担当してもらっています。大好きと大好きがくっついちゃっている、すごく幸せな楽曲なんです。
FGOではあるけれど、
「キャメロット」というひとつの作品でもある
──最後に、今回の劇場版はどういう方に楽しんでいただきたいかを教えてください。
宮野 信長くんと話したときに、「『キャメロット』は原作ゲームの中でも玄人好みのお話」と言っていたのが印象的で。ずっと「FGO」を追いかけてきてくれた方にとっても毛色が違う。活劇じゃないし、冒険譚じゃない。その色の違った空気感を、劇場で見られるのは面白いと思います。もちろん「FGO」ではあるけれど、独特なシリアスさがあって「劇場版『神聖円卓領域キャメロット」」というひとつの作品として成り立っている。「FGO」を知らない人でも味わえるものになっているんじゃないかなと思います。
坂本 「FGO」をずっと追いかけてきた人は、5周年であるこの年にこんな大きなスクリーンで見れる日がくるなんてと感慨深いだろうし、かねてよりTYPE-MOONファンの方はもちろん楽しんでいただけるとは思うんですけど……正直「FGO」の知識がないと少しとっつきづらいんじゃないかって、過去の私は思っていたところがありました! でもですね、「FGO」にまったく関わってなかったスタッフがひと足先に映像を観させていただいて、なんの「FGO」知識もないけど「面白かった!」って言ったんですよ。
宮野 (ガッツポーズ)
坂本 それを聞いて私は「大丈夫なんだ」って感じたんです。構成として惹きつけるもの、映像的な説得力があるんだなと、それってすごいことだなと思いました。劇場版からゲームに入っていくこともできる。ここはアプリゲームの面白いところで、ゲームの「FGO」を始めたときから“自分の第1話”が始まるわけじゃないですか。これをきっかけにして、「FGO」の世界観に入ってくる方がいたらウェルカムです。とりあえず前編を見たら後編を見なくちゃ気が済まないと思うので、ぜひワンセットで観ていただきたいです。
宮野 きっと前編を観ると、ベディヴィエールのことが心配でしょうがなくなると思います!(笑)
2021年6月1日更新