「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」宮野真守(ベディヴィエール役)×坂本真綾(レオナルド・ダ・ヴィンチ役)対談|“光担当”のマモくんと“闇担当”真綾さん?昔からリスペクトし合う2人が映画、主題歌、そして過去の共演作まで語り合う

スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」の人気ぶりは、多くの読者がご存知のことだろう。全世界で5700万ダウンロードを突破し、TVアニメ、舞台、コミカライズ、アーケードゲームと、現在も多くの広がりを見せている。そんな「FGO」初の劇場アニメとなるのが、12月5日に前編が公開される「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」だ。奈須きのこ自らがシナリオを担当した「FGO」の人気エピソード・第六特異点を、前後編で劇場アニメ化した「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」。人類最後のマスター(アニメでは藤丸立香)を主役とするゲーム版とは異なり、遍歴の騎士・ベディヴィエールを軸に物語が再構成されている。

映画前編となる「Wandering; Agateram」の公開を記念し、コミックナタリーではベディヴィエール役の宮野真守、レオナルド・ダ・ヴィンチ役の坂本真綾の対談を実施。姉と弟のように仲のいい2人に、「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」の見どころ、そしてそれぞれが担当する前編と後編の主題歌についてじっくり語り合ってもらった。

取材・文 / 青柳美帆子 撮影 / 入江達也

“ベディヴィエールの物語”に身をゆだねて

宮野真守

──劇場版「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」で、主役であるベディヴィエールと、存在感を放つダ・ヴィンチ。おふたりはそれぞれのキャラの魅力をどう捉えていますか?

宮野真守 「Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」は、ベディヴィエールの物語というか、ベディの思いのもとに紡がれている世界観です。物語は彼の苦悩から始まります。たぶん観た方がすごく心配になるほど(笑)、彼は苦しそうで、悲しそうで、つらそうに見える。

坂本真綾 この人は何を考えているのかな?と気になるところがベディの魅力ですよね。

古代ペルシャにおける伝説の大英雄・アーラシュ。

宮野 そう、特に前編では愁いの理由を明かさないから、ミステリアスでもあるんですよ。ベディは贖罪の旅路を進む中で、孤独な自分の戦いに“光”を見出します。きっかけを与えてくれたのは、「Fate/Grand Order(FGO)」の主人公である藤丸であったり、アーラシュであったり……孤独が少し変化して、確固たる思いになっていくベディの気持ちに僕は身をゆだねて、繊細に彼の苦しみや気付きを感じながら演じていました。

──宮野さんの“抑えた演技”と言えばいいのでしょうか、前編のベディヴィエールはアクションシーンもありましたが、悲壮な覚悟を持つ“静”の印象が強いキャラクターでした。

宮野 「抑えた演技」というのは考えたことがないですね。演技に関して「どんな演技」というのは考えなくて、「どういう人物か」ということが大事だと思っています。「どうして彼はああなっているのか」と、いろいろな資料で調べたり、現場では「Fate」の世界観的な知識を(島﨑)信長先生に教えてもらったりして(笑)、気持ちの整理をつけて考えていきました。前編の部分ではまだ言えないことは多いのですが、ベディは優しくていろいろなことに気付く愛情のある人。だからこそ犯してしまった罪を抱えている人です。

──ゲーム版でもベディのボイスを担当されている宮野さんですが、改めて今作でベディヴィエールと向き合い、彼について新たに気付いたことなどはあるでしょうか。

かつてアーサー王に仕えた隻腕の騎士・ベディヴィエール。ある目的のため、長き旅路の果てに特異点となった1273年のエルサレムを訪れ、カルデアのマスター・藤丸らと出会う。

宮野 ゲーム「FGO」の最初の収録は、宝具名などのバトル中ボイスが中心で、物語というよりも、彼の根本的な騎士道だったり、アーサー王への思いがあふれているセリフだったりを言わせていただいていました。その収録でも彼のまっすぐさや真面目さは感じていたんですが、それを感じていたからこそ、今回の「キャメロット」でベディを演じて、彼の印象が変わったというより理解が深まりましたね。彼の人となりが表れたうえでの苦悩が見えてきました。

──坂本さんはベディに対してどう感じていますか?

坂本 とにかく、すごく人気があるキャラクターだという話は聞いていました。端正な美しいお顔立ちで、愁いを漂わせて、マモくんの声で……そりゃあみんな好きでしょう!(笑)

宮野 (爆笑)

“観客のほっとできる場所”ダ・ヴィンチ

坂本真綾

坂本 ダ・ヴィンチはちょっとひょうひょうとしていて、ピンチでもあんまり焦らない、余裕を見せていて、なんでも知っているお姉さん。今までゲームでは演じていましたけど、動いてしゃべるダ・ヴィンチというのは、この間のTVシリーズ(TVアニメ「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」)で初めてやりました。ただそちらではカルデアの指令室にいて、無線で遠くから茶々を入れるという立ち位置だったので、今回やっとみんなと同じ場所で戦う場面が出てきたなあと。ダ・ヴィンチの強さや、ただものじゃない感じが、より出ているお話なんじゃないかな。

宮野 ダ・ヴィンチちゃんはこの作品のコントラストを作ってくれているキャラクター。ベディは主役ですけど他者を拒んでいるので、藤丸とマシュとダ・ヴィンチたちのカルデアチームの空気感が観客の方をほっとさせてくれる気がします。ダ・ヴィンチちゃんはかき乱しているようでみんなを支えていて、ポイントとなるところでみんなのために動いてくれる。やっぱり頼りになるし、面白い!

マシュ、藤丸、ダ・ヴィンチ。

坂本 ありがとうございます!(笑) メインになってくるベディや藤丸やマシュたちのサポートをする立場でもあるので、いいトスを投げる気のいいお姉さんって感じですね。

宮野 少しネタバレになってしまいそうですが、前編にはダ・ヴィンチが重要な行動をするシーンもありますよね。かなりシリアスな場面だけど、いつも通りのひょうひょうとしているところがあって、すごくカッコいいです。

──アフレコ時、末澤(慧)監督から何か伝えられたことはありましたか?

坂本 監督は収録ブースに入ってきてくれて、1人ひとりに演技に関するコメントを伝えてくれていました。ただ、「一番わかっているのは、長年演じてきているキャストの皆さんだと思うので」ということはおっしゃっていただきましたね。

島﨑信長演じる藤丸。

宮野 「こういう話の流れで、こういう場面です」というような導きはありつつ、ちゃんと任せてもらえました。キャラクターに命を吹き込む者として信用してもらえていたと思っています。あと、「FGO」の世界やキャラクターに関することでわからないことがあったら僕はとりあえず信長くんに聞いて助けてもらっていました。ただ信長くんに1聞くと「これはifの物語なんで……」「特異点というのは……」みたいな感じで100返ってくる!

坂本 そうそう、目をキラキラさせて教えてくれる!

宮野 信長くんの説明タイムを監督陣が待っている時間があったぐらいです(笑)。おかげで理解が深まりましたし、迷いなく演じることができました。ベディにとって特に大きな存在である獅子王役の川澄綾子さんやアーラシュ役の鶴岡聡さん、ほかにもメインの皆さんと一緒に収録できて、大事なものは紡げていると思います。

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自然体とウリ坊と


2021年6月1日更新