何をこっちに委ねてくれてんねん
──ほかに山内さんが注目したポイントを挙げるとすると、どんなものがありますか?
ほかの取材でもしゃべったことなんですけど、一番印象に残っているセリフが大悟の「そっちが狂ってんなら、こっちも狂うしかねぇんだよ」というもので。あそこはもう、一番カッコいい。間をたっぷり使った演出も含めて、ものすごく印象的でしたね。「いや、いいから早く戦って!」と思うぐらい(笑)、時が止まったような長い間があって、通常の時間の流れに戻った瞬間からぶっ飛び感全開でガンアクションが始まるじゃないですか。そのメリハリがアクションシーンとしてもカッコよかったし、「行けー!」っていうふうに興奮もしました。めっちゃ好きなシーンですね。
──構図などもいろいろ凝っていて、非常に見応えのあるシーンでした。
あとは、理がやられるシーンも好きでした。どうやっても倒せそうにない感じに描かれるキャラクターなんで、「誰がどうしたら倒せんねん」と思いながら観ていて……。ネタバレになるとアレなんで細かいことは言いませんけど、「そうか、そういう倒し方か」っていう楽しみ方ができましたね。前後の流れも含めて、めっちゃよかったです。
──そういう意味では、ちょっとバトルマンガ的な面白さもありましたよね。「絶対倒せないだろ、こいつ」という敵をどうやって倒すのかという。
そうですね。岩男という強敵キャラもいる中で、理はブレーキが壊れたクレイジーなキャラという、また違ったタイプの強敵で。最終的に決定打になった倒し方すら、「これもヘタしたら克服してくるんちゃうか」ぐらい僕は思ってましたから。それぐらいの恐怖を感じさせる、印象的なキャラクターだったなと思いますね。
──シーズン1とシーズン2を総括して、総合的な満足度としてはいかがですか?
いやもう、完璧ですね。2シーズンを通してきっちり全部のストーリーを描き切ってくれましたし……僕、映画やドラマの最後で観客に何かを投げかけたり、解釈を委ねたりするのが好きじゃないんですよ。たとえば映画「インセプション」みたいに、最後にコマを回して「倒れるの? 倒れないの? どっち?」のまま終わるようなパターンあるじゃないですか。「いや、どっちか決めろや!」って思うんですよ(笑)。「何をこっちに委ねてくれてんねん!」って。
──(笑)。パッケージの中だけで完結する美しさを重視されているんですね。
そうそう、ホントにその通りです。ドラマも素晴らしい終わり方やなと思ったんで、個人的にはもう100点を超えるぐらいの満足度でした。原作を読み込んでいる人も、ドラマ版の終わり方には期待してもらっていいんちゃうかなと思ってます。
またマンガ描かへんようになるやん
──少し話は変わりますが、山内さんは芸能界でも屈指の「ガンニバル」ファンとして知られています。普段、何か人知れず普及活動をされていたりはしますか?
普及活動で言うと、バラエティ番組の会話の中で何かを例えるときにけっこう使ってますね。たとえば、大きなアクションで殴りかかってくるような動きをした人に対して「“あの人”やないか!」みたいな感じで(笑)。とくに、麒麟の川島(明)さんとやっている「川島・山内のマンガ沼」という番組では頻繁に「ガンニバル」の名前を出してます。
──その番組のロケで、二宮先生の仕事場にも行かれていましたよね。
行かしてもらいました。そこで初めて二宮先生にお会いして、「こんなに面白い人なんだ?」という衝撃を受けて(笑)。
──僕も番組を拝見しましたが、まさか二宮先生があんなに面白い方だとは思いませんでした。隙あらばマンガをサボろうとするんですよね(笑)。
そうそう(笑)。今回、ドラマのシーズン2もどうせヒットするやろうから、またマンガ描かへんようになるやん!と心配しています。
──そこはもどかしいですよね。ドラマは大ヒットしてほしいけど、先生にはマンガを描いてほしいし。
そうなんすよ! 面白いマンガをまだまだたくさん描いてほしいのに、ドラマがヒットしちゃったら描かなくても生活できてまうんで……。あの人、追い込まれないと描かないタイプだから。
──描いてくれるよう祈りましょう(笑)。話を戻しますが、この「ガンニバル」という作品に敷居の高さを感じている人に対しては、どんなふうに薦めていますか?
僕がよく言っているのは、さっきの話とも被りますけど「グロさや怖さなどの描写は、あくまで始まりのポイントでしかない」ということですね。もちろん、入り口がそれという時点で「無理、めっちゃ嫌やわ」ってなる人が多いのもわかるんですけど、そこから広がっていくストーリーの面白さこそが「ガンニバル」の肝なんで。「思ってるようなグロい作品では全然なくて、マジで中身はヒューマンドラマやから」っていうのはけっこう言ってますね。
──表面が痛そうだからってカニを食べないのはもったいない、みたいなことですよね。
とくにシーズン2はアクション映画としての面白さも加わっていたりして、楽しめるポイントがさらに増えてるんで。グロいシーンはそんなにない……まああるんですけど(笑)、ディズニープラスで配信されているぐらいなんで、見るに耐えないレベルのグロは存在しないですから。その点は安心してもらって大丈夫ですよ、とは伝えたいですね。
──実際、この作品って実は愛の物語なんですよね。
ある意味、そうとも言えますよね。銀にしたって、実は愛に生きた人ではありますから。グロ要素やホラー要素はあくまで表面的なものなんだという理解のうえで、全体を見てほしいなと思います。たぶん、第1話だけでも観てもらったらわかると思う。目が離せなくなるんちゃうかな。
──どういう層の人が観てくれたら一番うれしいですか?
僕の周りでいうと男性はけっこう観てる人が多いんで、やっぱり女性に観てもらいたいですよね。「え、怖いやつでしょ?」という最初の偏見さえ乗り越えれば、女性でも全然楽しめるはずやと思うんで。「まず自分の目で観て判断してください」と言いたいですね。それでもし気に入ったら、周りにも薦めてあげてほしいです。周りの女子友達が観てたらみんな観るようになると思うんで、あなたがその最初のきっかけの人になってほしい。
──インフルエンサーになってほしいと。
そうそう(笑)。その結果、そのへんで女子グループが「ガンニバル」の話でめっちゃ盛り上がっていたりしたら一番うれしい。ぜひそういう光景を見せてもらいたいですね。
プロフィール
山内健司(ヤマウチケンジ)
1981年1月17日、島根県生まれ。2004年5月にお笑いコンビ「かまいたち」を結成。2007年の「第28回ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞をはじめ、「第33回ABCお笑いグランプリ」「第42回NHK上方漫才コンテスト」「歌ネタ王決定戦2016」「キングオブコント2017」優勝、「第54回上方漫才大賞」奨励賞など多数の受賞歴を誇る。2020年2月にかまいたちのYouTube公式チャンネルがスタートした。