デジナタ連載 羽多野渉×HD610N|“未来すぎる”ヘッドフォンを味わいつくす

低音声優あるある

──ご自身名義の楽曲制作では、音作りにはどのくらい関わってらっしゃるんですか。

羽多野渉

制作は基本的に、作家さんが作ってくれたデモを聴いて、歌を入れて、っていう順番で進むんですけども、その後に全体の音を仕上げるトラックダウンっていう作業があるんですね。そこには必ず立ち会わせてもらっています。僕の声にはおそらく低音成分が少し強めに含まれるんですが、それがほかの楽器との絡み具合でちょっと聴こえづらくなっちゃったり、逆に出すぎちゃったりっていうこともあるので、プロのエンジニアさんと相談しながらバランスを調整していくんです。歌った本人だからこそ気付ける部分もあるんじゃないかなって。

──先ほど、オーディオでは低音の響きを重視するとおっしゃっていましたけど、それはご自身の声がそっち寄りだからということもあるんでしょうか。

そうですね、そういうこともあります。声優って本当にいろんな声質の人がいるんですけど、アニメのアフレコで使うマイクって、特定の人に合わせたものではないんですよ。同じマイクを3~4本並べて、その前でさまざまな声質の人たちが「せーの」でお芝居をするんです。

──それこそ男性も女性も同時に録るわけですし、汎用性の高いマイクを使わざるを得ないですよね。

そうなんです。だから、Aさんには合うマイクなんだけど、Bさんには合わないということが起こり得るんですよ。で、これは“低音声優あるある”なんですけど(笑)、デビューして間もない頃、特にモブをよくやっていた時期は「どうも自分の声はオンエアで聞こえづらいな」と感じることが多かったんです。そういった経験も踏まえて、「自分の声にはどういう特性があるんだろう?」と向き合っていくようになりました。

──自分の声にとって不利な環境でも効果的に響く発声の技術を磨いていったり?

そういった面ももちろんありますし、声を張らないリアルな芝居でも明瞭に聞かせる技術だったり、オンエアに乗ったときにセリフが聞き取りやすくなるようなテクニックなども研究していって。今でもまだまだ勉強中ですね。時代とともに録音機材も視聴環境も変化していきますし、これはゴールのない永遠のテーマだと思います。

「自分の歌はこうだ」と決めつけない

──アニメの現場で培った技術が歌に活かされている部分はあります?

キャラクターソングもそうなんですけど、「自分の歌はこうだ」っていう決めつけをしないように心がけています。役者として自分の声をいろんな形に変化させて、さまざまなサウンドにパズルのようにはめてみたときに「意外に合うな」みたいな発見があると、すごく楽しいんですよ。

──キャラクターごとに役を作り込むみたいに、楽曲ごとに歌い方も作り込んでいくんですね。

羽多野渉

以前「ユーリ!!! on ICE」というアニメのエンディングテーマ(「You Only Live Once」)を歌わせていただいたんですが、かなり大胆に自分の声を加工したんですよ。最初にオンエアでその曲が流れたときは歌っているのが僕だと気付かない人もいて、キャストの方たちも「気付いた? エンディング歌ってるの、羽多野渉だよ!」「ええー!?」みたいな。そうやって驚いてもらえるのがうれしくて。商売道具である声を、誰だかわからないレベルで加工しちゃう声優もなかなかいないとは思うんですけど(笑)。

──羽多野さんの声の一番“おいしい”ところってやはり中低域だと思うんですけど、あの曲ではその帯域をあえて削っているように感じました。それであれだけ魅力的な声として成立しちゃうのが異常だなって(笑)。

あははは、そう言っていただけると本当にうれしいです。実はあの曲を作ってくれた彦田元気さんが、「今度はほとんど加工せずに、羽多野さんの中低域を生かす方向で曲を作りたい」と言って作ってくれたのが、その次の「ハートシグナル」なんですよ。同じ人が作ってるから、彼の得意な“彦田節”みたいなものはどっちの曲にも入ってるんですけど、ボーカルの僕の声が全然違うっていうのがすごく面白いなって。

役者は台本を書かない

──11月27日に、羽多野さんにとって約2年ぶりとなるニューシングルが出ます。現時点で決まっていることがあれば、言える範囲で教えてください。

羽多野渉

3曲入りになるんですけど、そのうちの2曲は以前にも僕の楽曲を作ってくださった山下洋介さんと永谷喬夫さんにお願いすることが決まっています。これは役者としての試みの1つなんですけど、自分では楽曲そのものを作らないようにしているんですね。音楽活動をしている声優の中には作詞や作曲を自分でされる人も多いんですけど、僕はすべて作家さんにお願いすることにしていて。

──演者に徹したい。

そうなんです。役者は台本を書かないんで。ただ、まったくの白紙で丸投げするのも無責任だよなっていうことで、いつもプロットを書かせていただいています。「こういうストーリーで」とか「こういう設定の曲を」っていうふうに。1stシングル「はじまりの日に」を作っていただいた山下さんには、あの曲の世界観を次のステップへ進めたものをお願いしました。音楽活動をスタートした頃を振り返りつつも、少し大人になった自分が新たなスタートを切れるような、少し力強さのある楽曲を。

──そういうふうにイメージを作家さんに伝えてオーダーしているんですね。もう1曲は?

4thシングル「Hikari」の永谷さんには、カッコいいジャジーな響きのある楽曲をお願いしています。永谷さんは直近だとミニアルバム「キャラバンはフィリアを奏でる」で「リトル・レジスタンス」という曲を作ってくださっていて、それは少年のようなかわいらしさを持つ楽曲だったんです。今回はもっと大人の男性目線で歌える、ダンスがカッコよく映えそうなジャズテイストのものをお願いしました。

──羽多野さんの音楽作品って、新作がリリースされるたびに毎回「え、今度はこんな曲をやるの?」という驚きがあったりするので、できればそういった要素も期待したいです。

実は、残る1曲のプロットが今までやっていないような内容になっているんですよ。まだどなたにお願いするかは決まってないんですけども、おそらく新たな出会いがあるんじゃないかなと僕も期待しているところで。ぜひ楽しみにしていてください。

羽多野渉

Panasonic「HD610N」

ノイズキャンセリング機能付きワイヤレスステレオヘッドフォン。ワイヤレスでもハイレゾ相当の高解像サウンドで音楽を楽しむことができる。連続約24時間再生が可能なほか、周囲の環境にあわせてノイズキャンセリングモードを3バージョンから選ぶことが可能。ワンタッチ操作で周囲の音が聞こえるボイススルー機能、ハンズフリーでさまざまな操作ができるGoogle アシスタントも搭載されている。

Panasonic「HD610N」