コミックナタリー Power Push - 「奴隷区」「D・F・O」特集

「奴隷区」

「D・F・O」

オオイシヒロト×咲良宗一郎×岡田伸一が過激表現を大いに語る

「奴隷区」を書いているときに見た夢が「D・F・O」

岡田伸一

──力強いお言葉ですね。秋元才加さんと本郷奏多さんのダブル主演で映画化もされた「奴隷区」は現代を舞台にしていますが、「D・F・O」はファンタジー作品。モンスターたちが跋扈する城に迷い込んだ人間の兄妹の話です。この着想はどこから?

岡田 実は「奴隷区」を書いているときに見た夢の話が「D・F・O」なんです。だからこの2作品は姉妹作なんですよ。

──姉妹作と言いますと?

岡田 「奴隷区」の続編を書いていたとき、ネタに困ってずっと悩んでいた時期があったんです。そのときに夢を2つ見て。人間対怪物の戦いと、ネタバレになってしまうから言えないんですが兄と妹のとあるビジョンです。この夢を発展させたものが「D・F・O」なので、姉妹のような関係にあるのは間違いないです。

咲良 初めて小説を読んだとき、兄のレンと妹のアスカの妖しい雰囲気に非常に衝撃を受けました。ある意味で病的な感じですよね。

「D・F・O/デス・ファンタジー・オペラ」より、肌を舐め合うレンとアスカ。

オオイシ 肌を舐めあってましたね。

咲良 すさまじいことですよ。しかし絵にしないことには、と思って毎日考えているうちにイメージがすごく湧いてきて。連載を始めたばかりの頃は少し固さがあったと思うんですが、回を重ねるごとにどんどんどんどん気持ちが入ってきて。エヴァ風にいうとシンクロ率が上がってきています(笑)。

岡田 ああ、なるほど。キャラが黒いオーラをまとうようになってきたと思いました。ノってるなって言ったら失礼かもしれないですが「ストリートファイター」の豪鬼みたいな感じで、スピード感もあって。

オオイシ 殺意の波動に目覚めちゃったんですね。

一同 あはは(笑)。

──咲良先生が「D・F・O」のマンガを手がけると決まったとき、この作品の肝となる部分はどこだとお考えになりましたか?

咲良 レンとアスカです。原案の小説「D・F・O」は魅力的な要素がすごく多いんですよ。岡田先生の地の文にすごく雰囲気があって……。

岡田 ありがとうございます。

咲良 世界観や舞台のお城、ヴァンパイアのピエルをはじめとした、いろんなモンスターたち。僕が描きたいものをすべて描いたらその魅力が分散してしまうと思いました。だから「主役の2人がシビアな弱肉強食の世界でいかに生き抜くのか」という物語なんだと本筋を強く意識して描いています。

「奴隷区」は主役級ばかりの群像劇

オオイシ ああ、「奴隷区」の最初の課題もまさに主役でした。

──登場人物24人が全員主役と言っても過言ではないですね。

「奴隷区 僕と23人の奴隷」の荒川エイア。

オオイシ そうなんです。24人の群像劇なので、マンガにしていく上で絶対に柱を立てなきゃって思って。荒川エイアって女の子を柱にしたんですが、最初にちょっと出たあとしばらく出てこなかった(笑)。

岡田 杉並ルシエとか目黒マサカズとかのエピソードに入りましたからね。でも主役は荒川エイアですよ、もう原作者認定です。

オオイシ ありがとうございます。「奴隷区」は主役級ばかりの群像劇だからこそ、ほかのマンガとは被らない面白さが絶対にある。そこはそこで残したいと思いつつ、単行本にしてみたら「この巻にエイアが全く出てない」って巻もあるんです(笑)。

──「奴隷区」はエピソードごとの引きや巻数の変わり目がすごく気になる終わり方で、読者としては「早く続きを!!」っていう渇望が生まれます。

オオイシ そこはかなり考えていますね。自分の中で一番しっくりきたのは、3巻の引き。リュウオウの登場シーンです。ここまで読んでもらえたら、「奴隷区」にハマってもらえるんじゃないかという手応えがありました。

岡田 1巻の1話目から面白いです。

鼎談の様子。

一同 あはは(笑)。

咲良 僕は「奴隷区」を読んでSCMについていろいろ考えさせられました。SCMを付けている者同士が勝負をすると、敗北感を抱いたほうが奴隷になるって設定ですが、キャラの心情がすごくリアルで、岡田先生は敗北感を知っているんだろうなって思ったんです。いかがですか?

岡田 おっしゃる通りです。失恋からギャンブルまでたくさん負けを経験しました。僕は人が勝つ姿ももちろん書きたいですが、負けた姿を書くのが大好きなんです。惨めな姿を見るのが好きな読者も、世の中には意外と多いのかなって思ってます。

咲良 なるほど。我々の実生活でも、敗北感を感じて尊厳を奪われるってことがあると思うんですよ。マンガではSCMがあることによって、その関係がすごくわかりやすくなっていてすごいなと。

ヤングマガジン海賊版

「世界にあふれる海賊版の面白さだけマネしたい」「とびきり面白い作品ばかり集めたい、マンガ界に不敵な波風を立てたい」のコンセプトで1986年から1995年まで刊行されたヤングマガジンの増刊号。マンガ雑誌・ヤングマガジン海賊版の記念すべき第1号の表紙を手掛けたのは大友克洋。

「攻殻機動隊」「3×3EYES」「工業哀歌バレーボーイズ」など数々のヒット作品を生み出した伝説のレーベルである!

その「伝説のレーベル」が今、E★エブリスタ×ヤングマガジン編集部の手によって、Webコミックレーベルとして堂々復活!! 投稿小説作品のコミック化で、今までにない異端な面白さを追求していく!!

ヤングマガジン海賊版はこちらから

スマホからも楽々読める!ヤングマガジン海賊版アプリ配信中

マンガ:咲良宗一郎 / 原案:岡田伸一「D・F・O/デス・ファンタジー・オペラ」 / 2015年9月25日発売 / 650円 / 講談社
1巻
2巻
咲良宗一郎(サクラソウイチロウ)

1月6日生まれ。第65回ちばてつや賞で「女王の楽団」にて準優秀新人賞を受賞。月刊ヤングマガジン(講談社)で「オーシャンまなぶ」を連載。現在はWebマンガサイト・ヤングマガジン海賊版にて「D・F・O/デス・ファンタジー・オペラ」を連載中。

岡田伸一(オカダシンイチ)

1984年生まれ、東京都世田谷区出身。携帯小説サイトにて執筆活動を開始。代表作は「奴隷区 僕と23人の奴隷」「少年と老婆」「奇少物件100LDK」など。

オオイシヒロト

1979年生まれ、大阪府出身。大阪総合デザイン専門学校卒業。代表作に「奴隷区 僕と23人の奴隷」(原作:岡田伸一)「うるとら団地Q」「ごくべん」など。