コミックナタリー PowerPush - デザート

竹達彩奈も応援! 少女マンガ好き女子ライターがプロ目線でココに注目

心の目で見れば、理想の王子様に

福田 少女マンガの大きな役割のひとつは、王子様像の提案であるからね。さっき言った「つらいぜ!ボクちゃん」を読んだあとは、現実でも下級生をまじまじと見ちゃったりして(笑)。バツイチもありとか、プレイボーイもありかな、とか、貧乏人だってありだよね、とか、視野が広がりますから。

トミヤマ 価値が転倒するんですよね。それまでは王子様としてナシだった人が、画力によって説得力が与えられ、アリに思えてくる。そうなると、自分が生きてる現実世界でも、アリな人が増えていくというか。

福田 たぶん女の子たちは、そうやって世界を拡張してきたんですよ。

トミヤマユキコ

トミヤマ 現実的に考えて、誰もがうらやむような男をゲットするって無理じゃないですか。そうなったときに、自分なりにうまいこと感覚をカスタマイズして、自分にとっての王子様を作り上げていくワケです。心の目で見れば、たとえば「イクメン!」に出てくるような働いてないバンドマンでもイイ感じに見える(笑)。

福田川原 うんうん。

トミヤマ 働いてないとか、年下だとか、マイナスポイントが最初からわかっていると、あとは伸びていくしかないんですよね。古典的な王子様タイプっていうのは、すべてが完璧なので、そこからはもう減点されていくしかないじゃないですか。だからストーリー的にもカップルが成立したら即ハッピーエンドで幕を閉じないといけないし。でもいまは、最初から点が引かれていて、あとからどんどん加点していくっていうパターンで、それが現実世界とリンクすることも多々ある。ほかの人からはダサいとかブサイクとか言われてるかもしれない子に、自分なりに点を加えていってオリジナルの王子様にしていくっていうほうが、現実にも応用がききそうだと。

──デザートの目指すところは、男性キャラのバリエーションを増やすことだとも編集長から伺っているので、この話、割と的を射ていると思います。

福田 いろんな王子様像が提示されるわけですね。それは楽しみ!

デザート作品は擬似家族ものが多い?

タアモ「たいようのいえ」9巻

川原 デザートの作品って、恋愛ものでありながら、同時に家族もの、あるいは擬似家族の問題を扱っている作品が多いなと思ったんです。「たいようのいえ」はまさに擬似家族だし、「ライアー×ライアー」も義理の姉弟のお話ですし。

トミヤマ 「女神のリーブラ」もですよね。家族という戦場に女の子が乗り込んでいく話として読める。恋愛を通じて自分がどういう人間であるかを知っていく、というのがよくある読み筋ですけど、恋愛もありながら、家族とか擬似家族をしっかり描いているというか。

福田 確かに普通、少女マンガって女子同士の友情の話も多いけど、それよりも家族の問題に重きを置いている話が多いですよね。

川原 「バンビとドール」の主人公も出生の秘密があったり、「うちって平凡なの」っていう人があんまりいない気がします。

福田 「バンビとドール」は、私が無条件に大好きな育児男子ものですね(笑)。逆に平凡な家庭にするとその分、友達問題が描けたりするのかな。

トミヤマ あー、そうかもしれないですね。

注目作「マイ・フェア・ネイバー」

──最後に、注目しているフレッシュな作品などあれば、お伺いできればと思うのですが。

「マイ・フェア・ネイバー」扉ページ(デザート2014年1月号掲載)(c)森野萌/講談社

川原 私、「マイ・フェア・ネイバー」が気になってます。絵が素敵なんですよね。女子高生が12歳年上のお隣さんに片思いしてる話なんですが、その28歳の隣人のユキちゃんって男性が、年齢相応に描かれてて。

福田 胸板厚いですよね。ちゃんとした体格というか。

川原 そうそう。大人の男の人が描けるって、貴重な才能だと思うんです。

トミヤマ がっしりしてますねえ。

福田 この方の絵柄は目を引きますよね。いい意味で、ちょっと線が太いというか。こういう異質な絵柄が雑誌に入ることで、俄然厚みが増すと思います。

──森野萌さんですね。コミティアにも出してた作家さんらしいですよ。

川原 コミティアご出身なんですか! この方、注目していきたいですね。

左から川原和子、トミヤマユキコ、福田里香。
「デザート 2014年2月号」 / 2013年12月24日 / 500円 / 講談社
「デザート 2014年2月号」
2月号ラインナップ
巻頭カラー・新連載
築島治「私たちには壁がある。」
新連載
桐島りら「世界の端っことあんずジャム」
連載
那波マオ「3D彼女」、タアモ「たいようのいえ」、金田一蓮十郎「ライアー×ライアー」、森野萌「マイ・フェア・ネイバー」、丘上あい「バンビとドール」、PEACH-PIT「金魚坂上ル」、曙はる「ももいろ人魚」、瀬戸口みづき「霊界通信プロトコル」
読み切り
ももち麗子「学校サボって電車に乗って」、薫原好江「男の子には秘密がある」、あんじちこ「花に夢を、星に願いを。」、芳川といろ「君だけのお姫さま」
月刊少年マガジン×デザート×pixiv「青春ラブコメフェス」受賞作
泡「観察的恋愛の展開」、鬨野美弦「You were My angel」
付録
「となりの怪物くん」お風呂ポスター
応募者全員プレゼント
「となりの怪物くん」全巻収納BOX
「THE デザート 2014年1月号」 / 2013年12月10日 / 700円 / 講談社
「THE デザート 2014年1月号」
1月号ラインナップ
特集
「ピュア男子 vs. ブラック男子」
三月薫「恋命と赤い糸」、さつきしろろ「ヤンキーちゃんは星を見る」、薫原好江「男の子には秘密がある -Persona-」、神葉理世「カスタマイズ彼女さん」、岩下慶子「花を召しませ」、森脇葵「イクメン!」、瀬戸口みづき「霊界通信プロトコル」、桜井真優「Banker&Honey」、藤もも「発情ドロップ」、ふかさわ映「12月の魔法がとけても」、はるらん「マイ・ファー・レディ」、玉島のん「シタインデスケド。」、入江ナツ「絶対独裁モンスター」、チイ「ボクの小雪」、桜沢きゆ「センパイのお稽古」、町村ニルス「いとしのクロエ」、九瀬しき「流れる星を見つけるように」、藤田阿登「青春小春カレンダー」、千秋りえ「放課後のまたたき」