僕も目的がないと何もしない

──神谷さんご本人は、鑑純一郎のような「YD病」な部分はありますか？

ありますあります。僕は目的や締め切りがないと、本当に何もしないほうなので……。例えばこれから歌わせていただくという曲を聞くにしても、レコーディングやライブが控えていないとやる気にならなかったり、いつ収録なのかわからない台本はチェックしなかったり。

──非常に共感できますが、なかなか危険な香りも……。

TVアニメはオンエアの日が決まっているから、あまりそういうことも起きないんですけど。ドラマCDやゲームだと、すごく大量の台本をどさりと渡されて、しばらく経ってから収録前日に「よろしくお願いします」と言われてしまうこともあるので……。いや、完全に僕の自業自得なんですが。だから台本を渡されたら「これいつ収録なの？」って、しつこくチェックする日々です。

──でもしっかり自分の責任を果たされる分、神谷さんはやはり鑑とは明確に違いますね。

やらないと周りの人々が大変なことになっちゃいますし（笑）。「あれ、神谷さん来ないんだけど」とか、「来たはいいけど台本に1行も目を通してないんだけど」ってなっちゃうのはさすがにないな、と。

正しい教師ものとしてお届けするつもり

──神谷さんがこれまでに、鑑純一郎のようなオタク教師に会われたことは。

面白い先生はいましたね。僕が高校生のときの数学の先生なんですが、いつも眼鏡と白衣を着けてて……。なんで数学教師が白衣を着ていたのか、いまだにわかんないんですけど。

──（笑）確かに白衣は理系の先生が着がちなところが。

でもその先生、教え方が非常に上手で。クラスの人間全員、ちゃんと理解した上で先に進めるんですよ。しかもそのスピードが恐ろしく速い。授業時間が50分間あるとしたら、40分程度でその日のノルマをこなしちゃうみたいな。

──ああ。教師としてとても優秀な方だったと。

じゃあ残りの10分は何をするのかっていうと、黒板にその先生が考えた問題を出すんですよ。「残りの時間で問いて」って。あるときにみんながそれを解いていたら、僕も含めた生徒が皆、とんでもなくややこしい答えにたどり着いた。先生もその答えを見て「あれ？」って顔をして。「ちょっと待って、なんでこんな答えになるんだろう」ってあれこれやってるうちに授業の時間が終わってしまって。

──つまりそれは、先生が問題を出し間違えたという。

ええ。要はその先生が考える問題は答えから逆算して作られていたんですが、先生がどこかで問題を間違えて、単純にシンプルな答えにたどり着くはずだったのに非常に複雑な解答になってしまったっていう（笑）。そういう、たまに人間味がある部分も含めて非常に魅力的な人でした。あと「パチンコで1日3万ずつ勝てば10日で車が買える」って言ってましたね。

──えっ、パチンコで貯金をしようと。

軽自動車かなんか買おうとしてたんですかね。「10日後には30万貯まるな！」っていう計算をしてて、「ちょっと何言ってるかわかんないな」と思ってました（笑）。少しダメなところもありつつ。でもやっぱり非常に優秀な……というか楽しい授業をしてくれる先生だったと記憶しています。

──では「電波教師」もその先生に捧げられたらと。

高校のとき以来なので、もう20年以上お会いしてないんですけど……。今でも教師を続けてらっしゃるようでしたら、先生に捧げます（笑）。

──なるほど。それでは「電波教師」を楽しみにされているファンの方々へ、コメントをいただいてもよろしいでしょうか。

原作を知ってらっしゃる方は「えっ、あれを夕方にやるの？」って驚いてらっしゃると思います。その反応は正しいです。みんな驚いています。

──（笑）。

でも基本的には夕方にやる意味があるよう、正しい教師ものとして皆さんにお届けするつもりなので。肩肘張らずに、毎週土曜日の夕方、ご飯を作りながらとか洗濯物をたたみながらでもいいので、チャンネルを合わせていただければと。そういう観方をしても楽しい作品づくりを心がけていますので、それが週1の楽しみとなってくれればいいなと思っています。