「グラブル」のマンガは、サイコミ編集部の横で描いている
──ここまでオリジナル作品について伺ってきましたが、やはりゲーム原作のコミカライズもサイコミの魅力。特に「グランブルーファンタジー」の単行本1~3巻と「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」の1巻が、予約開始直後にAmazon.co.jpの本カテゴリーで1位から4位を独占するという快挙を成し遂げました。
そもそも原作が人気ゲームということもあるのですが、「U149」に関しては、これまでアニメなどゲーム以外のメディアでは深く語られなかったキャラクターたちにスポットを当てていることや、アイドルたちとプロデューサーの二人三脚で仕事に取り組んでいく「アイドルマスター」らしいストーリー性重視の構成がご好評いただいているところで、「グランブルーファンタジー」は剣と魔法のファンタジーや、ボーイミーツガールという、まさに多くの人に望まれている王道な物語を描いていることを評価していただけたのかなと思っています。おかげさまで「グランブルーファンタジー」第1巻は初版40万部という創刊レーベルとしては例を見ない数字でスタートさせることができました。
──ファンタジー作品ということで、キャラクターが身に付けている鎧など細かい作画が要求されること思います。これを週刊ペースで配信されるのは、かなり大変なのでは。
はい。ゲームの世界観を崩すわけにはいけないので、ゲームの開発部門と連携を取りながらクオリティを上げています。このクオリティで週刊更新を続けるために、作画のcocho先生には、編集部の横にある作業スペースで仕事をしていただいています。「グラブル」に関わるほかの作画スタッフも同様です。もちろん、すべての作品に対してそうしているわけではなくて、まだ「グラブル」など一部の作品に限った話ではありますが。
──普通、マンガ家さんってご自宅や仕事場で作業されているイメージですけれど、会社に出社されているということですか?
その通りです。マンガ家、編集者など、作品に関わる人間が1カ所に集まることで、一気通貫のもの作りを実現させたかったんです。実は、ゲーム業界ではずっと行われてきたことなんですけど。
──なるほど。エンジニアとプランナーとデザイナーが集まってゲームを作るように、マンガを作っているわけですね。それによって週刊更新を実現させることができたと。
どうやったらcocho先生に最高の作画をしてもらえるのかを考えたとき、ストーリーとコンテについては「グラブル」の大ファンである楓月先生に、装備品や背景などは専門の作画チームにおまかせする分業制に行き着きました。その結果、作業効率が上がり週刊更新が可能になったんです。
──ゲーム業界のやり方を踏襲されたというお話でしたが、マンガ編集者としてのキャリアが長い葛西さんから見て、このシステムの利点は。
こういった形で作品を作るのは初めてですが、非常にやりやすさを感じています。一番のメリットは、打ち合わせがスムーズなこと。あとは物理的な距離の近さが、心の距離の近さにもつながっていると感じています。僕は編集長なのでシビアな判断をすることもあるわけですが。そのあとにすぐにフォローできる位置に作家がいてくれることは大きいです。
関係各位に「思いっきりやってくれ」と言ってもらえたコミカライズ
──単行本の刊行も注目ですが、連載開始したばかりの「君の名は。 Another Side:Earthbound」のコミカライズも大きな反響を呼んでいますね。
他社作品の純粋なコミカライズは、サイコミでは本作が初ですね。
──映画本編は、都会に憧れる田舎の女子高校生・宮水三葉と、東京で暮らす男子高校生・立花瀧の身体が入れ替わってしまうという物語です。小説版は、どのような内容か未読の方に教えていただけますか?
この小説は、映画を観た人が気になっているであろう部分を上手に補完しているんですよ。例えば、瀧くんが三葉の中に入っているときの描かれていなかった部分や、三葉と妹・四葉の父親の話とか。アニメを観て、もっと知りたいと思っていたキャラクターの物語が書かれています。僕自身、この小説が本当に好きです。自分が好きなコンテンツに、新しい物語があるとうれしいじゃないですか。この小説を絵に起こすっていうことは、マンガ編集者としての自分にとって大きな仕事だと思いました。
──現状「君の名は。」のマンガは、琴音らんまるさんが描いた映画本編のコミカライズ版しかありませんよね。
意外にもスピンオフなどが展開されていないんです。ぜひ、絵で表現される「君の名は。」の新しい世界を楽しんでもらいたいですね。
──作画を担当される中村ジュンヤ先生は、サイコミでオリジナルの読み切り作品「生きてる君に花束を」も発表されていましたね。多くの人が忘れてしまうような青春時代のちょっとした痛みを拾い上げる感じは、新海監督の作品に通じるところがありました。
中村先生は新海監督の大ファンで、中村先生の新海監督の作品への愛情がそのまま作画にも表れています。映画のキャラデザに忠実なだけじゃなく、自身のテイストもしっかりと出されていて。ストーリーの面でも独自の解釈を加えているのですが、関係各位から「思いっきりやってくれ」と言っていただけたのはありがたかったです。
──今後は「君の名は。 Another Side:Earthbound」同様に、他社原作の作品も増えていくのでしょうか?
その可能性は十分にあります。あとサイコミではマンガ原作者を社員として募集しているので、少なくとも原作付きのオリジナル作品は増えると思います。
──原作作家を社員として雇うというのは、マンガの世界ではあまり聞いたことがない試みですね。
“企画・原作”を考えてほしいのはもちろん、連載中の作品に対しても、キャラが足りない、エピソードが足りないと感じたときには情報を付け足してくれるような仕事をしてもらいたいと考えています。
──いわゆるシナリオライターや脚本家のような役割もあると。
これまで編集者がやっていた仕事の一部でもあるのですが、それを専門でやってくれる人を求めています。
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ゲームやアニメとマンガが同じ舞台に立つには、どうしたらいいか
- 第1弾ラインナップ(7月28日発売予定)
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- Cygames原作・楓月誠コンテ・cocho作画「グランブルーファンタジー」1巻
- バンダイナムコエンターテインメント原作、廾之「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」1巻
- バンダイナムコエンターテインメント原作、廾之「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」1巻オリジナルCD付き特別版
- Cygames原作・蝉川タカマル脚本・Ryota-H作画「神撃のバハムート TWIN HEADS」1巻
- Cygames原作・S.濃すぎ「STARTING GATE! -ウマ娘プリティーダービー-」1巻
- ツナミノユウ「ふたりモノローグ」1巻
- 山下文吾「群れなせ!シートン学園」1巻
- 凪庵「待機列ガール」1巻
- 第2弾ラインナップ(8月30日発売予定)
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- Cygames原作・楓月誠コンテ・cocho作画「グランブルーファンタジー」2巻
- Cygames原作・蝉川タカマル脚本・Ryota-H作画「神撃のバハムート TWIN HEADS」2巻
- Cygames原作・水田ケンジ「神撃のバハムート マナリアフレンズ」1巻
- Cygames原作・邪武丸SHADOWVERSE「 ありさデュエルバース」1巻
- TNSK「あいどるスマッシュ!」1巻
- 村上よしゆき「ブラザーフッド」1巻
- 凪庵「待機列ガール」2巻
- 第3弾ラインナップ(9月29日発売予定)
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- Cygames原作・楓月誠コンテ・cocho作画「グランブルーファンタジー」3巻
- Cygames原作・蝉川タカマル脚本・Ryota-H作画「神撃のバハムート TWIN HEADS」3巻
- Cygames原作・近藤るるる「神撃のバハムート ミスタルシアサーガ」1巻
- 縞野やえ「恋愛したくないわけじゃないけど」1巻
- 十凪高志「妖怪ごはん」1巻
- 山下文吾「群れなせ!シートン学園」2巻
- TNSK「あいどるスマッシュ!」2巻