「クリエイターズマッチングプロジェクト」SDR取締役・宮井晶インタビュー|クリエイターをマッチング!スターダストが新たなスタイルのオーディションを始動

できあがっている世界観の行間を埋める物語

──ちなみに、音楽のフェーズではどんな形の音源が応募されることを想定してるんですか? 例えばですけど、ピアノ1本でざっと弾いたものをスマホで適当に録ったものでもいいんでしょうか。

安楽 そういうものがくる可能性もあるかなと思っています。そこに我々からの制限は設けないけども、それを聴いて判断するのはクリエイター側なので。受け取る側のことをちゃんと想像して音源を作らないと、次につながりにくいだろうなとは思っています。

──かといって、あまりに作り込みすぎても……。

安楽 楽曲に関しては、作り込んでもらっても大丈夫かもしれないですね。

──詞曲はもちろん、編曲もバッチリしてあって仮歌まで入っているような完パケ音源がきてもいい?

安楽 きてもいいです。おそらく、そのほうが歌にはつながりやすいでしょうし。同じ楽曲に対して作詞が数種類くるようなケースも考えられるので、そういう場合は歌い手の方が「この歌詞で歌いたい」と選んでもらうイメージです。

──ということは、第2フェーズは2段階に分かれるケースもあり得ると。

安楽 そうです。そこだけちょっと複雑になるんですけども、イラストに対して作曲だけが応募されて、その組み合わせに対して作詞を応募することも可能です。作詞と作曲が逆になるパターンもあり得ると思いますし、もちろん1人で作詞作曲されても構いません。

──最後のフェーズでは物語を募集することになっていますよね。ちょっと変な聞き方になりますけど、これは必要なんですか?

宮井晶

宮井 あはははは!(笑) 僕らの中でも「これ、必要なのかな?」っていうのはあったんだけども……。

──この要素があることで、よりYOASOBI感が出ちゃうというか。

宮井 そうですよね(笑)。そこは僕らも悩んだところなんだけど……どうなんだろう。なくてもいい気もするよね(笑)。まあでも、話を書きたい人もいるだろうなっていうのもあって。

安楽 イラストや歌詞など、すでにできあがっている世界観に対して行間を埋められる人というのは、ゼロから物語を作れる人とはまた違う才能かなと思っているんですよ。それはそれでアーティストとのコラボなども見えやすい人材なんじゃないかと。

宮井 いい人がいたら、うちにバイトで入れちゃおうかなと(笑)。

──イラストや楽曲、歌までは優れた作品が集まりそうなイメージが湧くんですけども、物語に関しては想像がつかないんですよね。すごくいい絵と曲が揃ったのに、ろくな物語が応募されないみたいなケースもあり得るんじゃないかと。

宮井 そこはやってみないと僕らもわからないなと思っていて。この先は、もしかしたら企画内容にマイナーチェンジがあるかもしれないです。応募数があまりにも少なかった場合とか、状況によって調整する必要が出てくる可能性はあります。

「新しいな」と思える楽曲の入る余地がない

──今回の企画を立ち上げることで、何か「音楽シーンにこういう影響が出たらいいな」みたいな思いはありますか?

宮井 マッチングをすることで、新しいクリエイティブが出てきてくれたら面白いかなと思っていて。例えば1番、2番、サビで終わりみたいな曲じゃなくて、組曲みたいなものでもいいだろうし。

──確かに、今ヒットチャートに上がってくる曲ってものすごくパターン化してますよね。Aメロ、Bメロ、サビでワンコーラスという構成がまるで必須条件であるかのような。

宮井 そうそう、全部それだから。BPMもほぼ決まってきちゃっていて、コード感もだいたい同じ。サブスクだと、違った感じの曲は聴かれずに飛ばされちゃうんですよね。「新しいな」と思える楽曲の入る余地がない。それはなんか面白くないなと思っていて。

安楽 椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」のコード進行がYouTube界を席巻していたりもしますね。

──それ、以前「関ジャム 完全燃SHOW」でも紹介されてましたね。誰が使っても手軽にエモくできる“劇薬”として(笑)。

宮井 そんなふうに、流れてくる曲がだいたい同じ系統だから、そこにハマらないと浮いちゃうんですよ。だから、新しい音楽を提示するのはけっこう難しいんです。今の子たちは異質なものをすぐ飛ばしちゃうから。

──そういう層にも聴いてもらえる範囲内で、“変な曲”を作らないといけないわけですね。

宮井 そうなんですよねえ……。

──では最後に、今回のプロジェクトに際して「こういう人に参加してほしい」という人物像があれば教えてください。

安楽 プロジェクトの発端はYOASOBIさんだったりニコ動文化などからのインスピレーションではあるんですけども、それとはまったく違う分野の人が挑戦してくれたら面白いんじゃないかなと思っています。

──なるほど。例えば今までニコ動やpixivなどにまったく関わらず、家でひたすら絵を描いていたような人であるとか。

安楽 そういう方のほうが面白いかもしれないですね。それでこそ新しいクリエイティブチームとして機能するというか。

──宮井さんはいかがですか?

宮井 そうですね……引きこもっている人は全員(笑)。それは冗談ですけど、自分の能力をうまくアピールできなくて他分野のクリエイターとつながれずに埋もれている人は多いと思うんで、とりあえず皆さん参加していただきたいですね。軽い気持ちでいいんで、まずはやってみてください。

クリエイターの先輩・しおひがりも、
「クリエイターズマッチングプロジェクト」を応援!

イラストレーターとして活動するしおひがりが「クリエイターズマッチングプロジェクト」のPRマンガを執筆。少年が朝目覚めると、自分の描いた絵を見知らぬ少女が眺めていて……。またQ&A方式で、同プロジェクトの魅力や募集テーマの面白さ・難しさなどについてコメントしてもらった。

Q

イラストレーターとして、「クリエイターズマッチングプロジェクト」の魅力はどんなところにあると思いますか?

A

それぞれ分かれているフェーズの始まりがイラストであることが他にはない魅力で特色かなと思います。
通常、音楽・イラスト・ストーリーのコラボレーションとなるとまずストーリーや音楽があり、そこからイラストのイメージを膨らませていくことが多いかと思うのですが、「クリエイターズマッチングプロジェクト」ではそのプロセスが逆です。
イラスト担当は完全に自由な発想で作品を制作することができ、反対にイラストと楽曲の世界観をベースに物語を紡ぐ必要のあるストーリー担当のクリエイターは普段とは異なる、ボトルシップを作るような難しい作業をすることになるかもしれませんが、その分オリジナリティのある味わい深い作品が出てくるのではないかと思っています。

Q

募集テーマは「20XX年」となっていますが、イラストレーターとしてどんなところに難しさ、面白さがあると思いますか? また、しおひがりさんがもし参加するとしたらどんな「20XX年」を描きますか?

A

過去・現在・未来のどの時間を切り取っても(あるいは一連の流れとして扱っても)いいという自由度の高さがありながら、実際に描けるのは2000年から2099年の「ちょっと昔」から「ちょっと未来」までという制限が絶妙で面白いと思います。
まあ、あくまで「20XX年」を普通に解釈した場合の話ですが。
僕が参加するとしたら「2008年」くらいを舞台にしたイラストを描きたいです。
スマホ出始め、ガラケー主流の時代の少しだけ懐かしい風景を描きたいですね。

Q

「クリエイターズマッチングプロジェクト」のように、もし自身のイラストに音楽をつけてもらえるとしたら、どのアーティストにお願いしたいですか?

A

ヒトリエのギター、シノダさんです。まあまあ長い付き合いの友達ってだけなんですが、彼の曲が大好きだし、いつか大きな舞台で実現できればいいなとずっと思っています。

Q

応募を考えている方にメッセージをお願いします。

A

20XX年の紅白目指してがんばってください!