CMのためだけにグッズレーベル・豊川グループを立ち上げる
──コミックシーモアとのコラボCMの話からは逸れてしまうんですけど、コラボCMと同様にテレビで放送されていた豊川グループ(豊川祥子の祖父・豊川定治が会長を務める企業)のCM。あれも、同じノリで作られたんですか?
根本 解説が難しいんですけど(笑)。テレビの提供表示に「豊川グループ」を載せたら面白いんじゃないかっていうところから始まっているんですよ。
大貫 そういう宣伝的な意向がまずあって。でもテレビ局的にそんな架空のクライアントの提供表示は出来ません。ただ、これは私の前職がテレビ局の営業だったからわかることなんですけど、実現できるなと思いまして。要は提供表示として認められている、ブランドなどの商標とCM内で訴求できる実在の商品があればいいわけです。なので、まずはテレビ局の基準に沿うように豊川グループを、実際にグッズを展開するブランドとか商標として実在させるための作業をしました。架空ではなくて、きちんと存在する「ブランド」がCMで商品を訴求している形なら「提供表示」はつけられるんで。ほら、映画のタイトルとか商品名が提供表示に出ることがあるでしょ。その考え方です。
──それはいつ頃から動き出したんですか?
大貫 急に言い出したよね。
根本 話し始めて作るのに、放送まで1カ月くらいかな。
大貫 各テレビ局から問い合わせを受けるであろう事項を全部事前に潰してから、ブシロードグループのグッズの部署に直近で作るグッズは何があるかを聞いて。そこでAve Mujicaのメモリアルグッズの発売があることに気づき。Ave Mujicaを劇中で応援しているのは豊川グループなんですよ。なので世界観的にも問題なくいけるなと。ブシロードのグッズレーベル・豊川グループを作ってホームページに載せて(笑)。ホームページの文言も監修してもらい、急遽豊川グループのロゴを作り、コーポレート用ナレーションを録り、締め切りギリギリで完成しましたね。
坂元 機動力えぐいですね(笑)。
──放送されたのは最終盤でしたね。
根本 第12話ですね。第12話のあとに流すのがいいという話になって。
大貫 そうだ。「BanG Dream!」チームのリーダーから豊川グループの会長の孫である祥子が「Ave Mujicaのためならなんでも使いますし、なんでもいたしますわ」と言って前に進むタイミングを狙って、第12話にしてほしいっていう依頼が来て。ただ問題はCMを作る期間が1週間か2週間くらいしかなくて大変だったってくらい。
根本 あのCMを最初に観たときは爆笑しました。
大貫 いやいや、大変だったんだから(笑)。コーポレートCMっぽいグッズのCMってどうやって作ればいいんだよ的な(笑)。
コミックシーモア×「BanG Dream!」のCMシリーズが続くとしたら
──コラボCMの話に戻りまして、1月から放送されたCMの反響ってどう見られていました? 思った以上に手応えがありましたか?
北本 「コミックシーモアのCM」がトレンドに入って(笑)。
坂元 Ave Mujicaとかモーティスとか、作品名やキャラクターの名前がトレンドに入るのはわかるんですけど、「コミックシーモアのCM」っていう単語がそのままトレンドに入ったり、最終回のときに「コミックシーモアありがとう」というリアクションをいただいたりしていて。「そんなことあるのか?」って思うくらい、想像以上の反響でしたね。弊社の役員も「これすごいね。どういう背景でこういう取り組みできたの?」って、びっくりしていました(笑)。
大貫 あと、「コミックシーモアだけが救い」とも言われていました(笑)。
──おそらくそういう反応って、普通のCMだったらありえないですよね。
坂元 おっしゃる通り、普通にCMをただ流すだけではそれは起きないので。こういう特別な取り組みだからこその深さ、なのでしょうね。Xを毎週見ていると、そこから反響や話題が広がっていくのを実感しました。
北本 そうですね。SNSでの拡散効果もさることながら、サイバーエージェントで実施した広告効果のスコアにおいても、注目すべき結果が得られました。コミックシーモアさんの場合、「CMを見た後、サービスへの第一利用意向がどれくらい高まったか」を重要指標の1つとしているんですけど、「BanG Dream!」のCMに接触したユーザーのスコアが、同時期に展開していたほかの広告クリエイティブと比較して、これまでにないくらい高いスコアを叩き出していたんです。なので世の中的に話題になって、ちゃんと狙った効果も創出できたんだなと。
坂元 好意的に受け取っていただいたんだと思っています。
大貫 TOKYO MXさんをはじめ、いろんなテレビ局にも多大なるご理解をいただいてできていることなんですけど、テレビ放送じゃないと、きっとトレンドにならなかったと思うんですよね。テレビでだけCMが流れて「何々?」って食いつく人がけっこういて、そんな中で「これだよ、これだよ」って発信する人が増えていった。テレビもやり方によっては媒体として、IPに寄与する部分がまだ大きくある。テレビは観られていないと言われている昨今、元テレビ局員として歯がゆい気持ちがあったんですけど、個人的にはそこに一番手応えを感じていました。これからも私たちの作品を信じて放送してくださる各放送局さんにメリットを提案しつつ、一緒に作品を盛り上げて行きたいと思っています。
──あのCM自体が面白かったっていうのはもちろんなんですが、アニメ中に流れているCMがトレンド入りするって、ものすごい大成功例の1つだと思うんですよ。広告効果でコミックシーモアの名が広がったと同時に、マンガだけではない、アニメにも強いというイメージもついたんじゃないかなって。
北本 コミックシーモアさんでもオリジナルのマンガ作品・シーモアコミックスを展開されていますが、毎クール常にアニメ化作品がリリースされるまではなかなか難しい。広告を展開する側としてアニメファンとのコミュニケーション・接点を、アニメ化されること以外でどう作っていけばいいかと考えたときに、このやり方が当てはまったというか。ほかのアニメの影響力をお借りしつつ、その既存ファンにできるだけ楽しんでもらう。そういうコミュニケーションは、非常に大事かなと思います。
坂元 コミックシーモアのことを面白いことするサービスだなって思っていただけたら成功ですよね。
大貫 作品に対して熱量があるからいろんな書き込みをいただけるんですよね。根本がいつも言っているんですけど、話題にならないと話にならない、ビジネスにならなければ続かない、無視されちゃったら意味はないと、僕も思うので。
──これだけ好評だったので、これからも機会があればぜひ新しいCMを作ってほしいです。
坂元 機会といろんなタイミングと許容していただけるのであれば(笑)。いろいろチャレンジはしていきたいなと思いますね。
北本 これは今後の構想というほどではないんですが、今回の「BanG Dream!」での経験を踏まえて、次はまた違う作品で……。よく大貫さんと話しているんですけど、この座組で毎クール違うアニメで、ユーザーを楽しませるために面白いCMを試験的に作り続けていけたらよいなと。そうすれば、いつしかアニメのファンの皆さんが「次はコミックシーモアさん、どんな面白いことをしてくれるんだろう」ってCMを待ち望み始めてくれるようになるかもしれない。そこまでぜひ行き着きたいなと思っています。
坂元 そこまで行けたらもう素晴らしいですね。
大貫 よく(北本と)2人で、「またシーモアか」「シーモアくんよお」って書かれたいって話していて(笑)。そういうふうに言われるようになったら成功だなと。より進化したテレビの使い方を提案できたらいいなとも思っていますし、そのムーブメントのスタート地点である「BanG Dream!」が、「次なにやらかす?」って言われたいなって。
根本 やらかしてない、やらかしてない。
大貫 いい意味でね(笑)。次「BanG Dream!」を発端にしたコミックシーモアのCMシリーズ……また「BanG Dream!」とコラボしていただける前提で言ってますけど、「また次は何するんだろう? ざわざわ」みたいなことが起こってくれたらいいなと。
──最終話の放送直後に続編アニメシリーズの制作が発表されましたし、またそこで話題になるCMができると思うので。
根本 「BanG Dream!」側としてはぜひ(笑)。
坂元 いつになるかはまだわからないですが楽しみに待っています。そのときは「コミックシーモアもおかえり」って言われたいですね(笑)。
プロフィール
大貫佑介(オオヌキユウスケ)
明治大学大学院情報コミュニケーション研究科を卒業。テレビ局で10年間営業・新規事業に従事した後に2020年4月にブシロードに入社。グループ内外のさまざまなアニメ、ゲーム、マンガの広告・宣伝・イベント・音響のプロデュースを行い、アニメのプロデューサーも担う。現在はブシロードムーブ取締役副社長およびゲームビズ代表取締役社長を務めている。
根本雄貴(ネモトユウキ)
青山学院大学経済学部を卒業後、新卒として2016年4月にブシロードに入社。オリジナルIP「BanG Dream!」プロジェクトにて、IPを活用する業務を幅広く経験する。現在はブシロードの取締役、「BanG Dream!」プロジェクトの総合プロデューサーを務めている。
北本充(キタモトミツル)
2009年4月にサイバーエージェントに入社し、これまでクリエイティブ企画、アカウントプランナー、ストラテジックプランナーを経験。現在企画プロデューサーとして、広告とエンタメの融合=「BRANDED ENTERTAINMENT」を軸に戦略立案から企画・制作プロデュースを務める。
坂元富士太(サカモトフジタ)
2022年11月にNTTソルマーレに入社。現在まで同社が運営する総合電子書籍ストア・コミックシーモアのブランディング担当として主にWebCMの企画や出稿担当を務めている。
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