「タツ、面白えの始まったぞ!」
──残る作品は「redEyes」と「ゲッチューまごころ便」ですが、ここまでお話を聞いてきた中で「redEyes」は鈴木さんの好みがよくわかるチョイスですね。未来の架空国家を舞台にした戦争・バトルもので、SAAというパワードスーツ的な武装など心をくすぐるギアやアーミー要素も多い。
これはそういう好みの集大成みたいな作品ですね。1999年にマガジンGREATで始まった作品なんですが、連載がスタートしてすぐに友達が「タツ、絶対俺らが好きな面白えの始まったぞ!」って教えてくれました。
──軸になるのは主人公・ミルズの復讐劇ですが、巻末に舞台世界の年表が載っていたり、すごく設定が細かいんですよね。
「こんな緻密につくってるんだ!」ってめちゃくちゃ読み込みました。敵軍の「ドンガメ」って呼ばれているSSAのデザインなんかも、無骨で鈍重な感じがしていいんですよね。「装甲騎兵ボトムズ」のAT(アーマードトルーパー)みたいな感じで。
──テーマ的にはどんなところに影響されましたか?
この作品も強さとは何かってことのひとつの答えをずっと描いている作品だと思っていて。まだ完結していない作品なので最終的にどういう結末になるのかわかりませんけど、とにかく毎巻楽しみにしてます。
──現在は雑誌で連載されているわけではなく、描き下ろしの単行本として刊行されてるんですよね。
そうなんです。1年に1冊のペースで。だから、ここ数年は悩んでますよ。新刊が出るたびに一気に読むか、次の単行本が出るであろう時期から逆算して定期的に1話ずつ読むか。連載作品ではないから読み終わっちゃったら続きが読めるのはどんなことがあっても1年後なんですよ? その辺が本当に悩みですね。この苦悩、神堂(潤)先生に届いてほしい!
──楽しみだからこそ苦しんでしまうわけですね(笑)。
あとね、これを読んでると筋トレがはかどりますよ(笑)。読んでいると「戦うためには肉体的に特化したところがないといけないんだ」ということを思い出させてくれるというか。劇中の登場人物のように強くなりたいって思っちゃいますもん。銃を持っている人たちを素手で倒したいとか(笑)。
──理想が高い(笑)。
でも、人が「刃牙」とか「ケンガンアシュラ」のような作品を読んで強さに憧れるような感覚なんだと思います。僕の場合はそれが「redEyes」。
──「強くなりたい」「強さとはなんだろう」というのが鈴木さんの大きなテーマなんですね。
そうですね。「人生を変えた」となると、そこが一番強くなっちゃいますね。どうしようもなく強さに憧れていて、それは今でも変わりません。僕は肉体的な強さを極めるような仕事をしているわけではないですけど、「誰にも侵されない心の強さ」みたいなものはこういう作品に教えてもらったと思います。肉体的に戦うということはなくても、心の強さを持って臨まないといけない局面って、生きていれば必ず訪れますからね。僕もそういう大事な局面が訪れたときに、相手や物事から目をそらさないように、心が折れないようにはしています。
これを読めば鈴木達央がわかる
──ラストは「ゲッチューまごころ便」ですが、この作品だけこれまでと毛色がかなり違いますよね。週刊少年チャンピオンに連載された作品で、宅配便の会社を営む家に生まれた主人公の高校生・紅男を中心にした青春ドタバタコメディです。
これは地元の友達と一番回し読みして、ゲラゲラ笑った作品です。
──実は今回の取材にあたって初めて読んだんですが、本当に面白かったです。
さいっっこうなんですよ! 僕の青春のバイブルでした。バイト中にチャンピオンを休憩室で読んで爆笑していたら、「笑い声が大きすぎ」って怒られたりしていました(笑)。団地の階段から滑り降りてすっ飛んでいったり、風邪を引いたから卵酒を飲むと言ってビールに生卵をぶっ込んで盛り上がったり……ノリがぶっ飛んでいるんですよね。
──高校生くらいのときの、何も考えていないようなバカなノリがマンガになっている。
「俺たちのことが描いてある!」って思っていましたし、自分たち以上に劇中のキャラクターたちは突き抜けているんですよね。僕の中の笑いのようなバラエティ的な要素は、8割は「ゲッチューまごころ便」に入っていると思います。これを読めばだいたい「ああ、達央ってこういう人間なんだ」ってわかります(笑)。考えていることは紅男と同じですから。
──紅男たちの突き抜け方はすごいですよね。でも、同時に大事なものに対しては誠実だったりする。
人との縁やつながりを大事にするという姿勢は、「まごころ便」で教えてもらったことも多いかもしれませんね。紅男って年上の人に「ジジイ!」なんて言ったりするけど、そこには必ず尊敬や、敬いの気持ちが前提としてある。僕が先輩に対してやる、尊敬しながら暴言を吐くっていうのもたぶん「まごころ便」で学んだことですね。……ダメな学び方ですね(笑)。あと、宅配業者の方に対して優しくなれると思います。これを読むと苦労がわかりますから。特に今のご時世は宅配業者の方にお世話になることも多いですしね。
知らない作品がポンポン見つかる
──挙げていただいた作品は以上になります。今回はインタビューにあたってBookLive!のサイトやアプリも触ってもらいましたが、印象はいかがですか?
とにかく扱っているマンガの種類が豊富ですね! パッとストアのトップを見ただけでも、知らない作品がけっこう目に付く。
──鈴木さんほど読む方でも知らない作品が見つかりますか?
ありますね。やっぱりある程度マンガを読むようになると、電子書籍のストアサイトのトップページやランキングを見ていても、だいたい知っているような作品ばかりになってくるでしょう? だから普段は詳しい人、出版社の人に教えてもらったりもしながら開拓しているんですけど、BookLive!のサイトは知らない作品がポンポン見つかる。よりコアな方たちが利用しているサイトだからなんだろうなって思います。そういう意味で、知らない作品に出会うのにはすごく向いていそうですね。
──毎日1回引けるクーポンガチャみたいな仕組みもありますしね。
さっき引かせてもらって、青年誌の割引クーポンが出ました。さっそく読みたい作品探しちゃいました(笑)。
──ほかに気になった機能はありますか?
購入した本を本棚から完全に削除するって機能があるんですよね。隠し本棚とかでなく、完全に消すことができるって。
──要望が多い機能だったということでBookLive!でも今年実装したそうです。
こういう便利な機能をこれからもいろいろ搭載して、より使いやすくなってもらえるとうれしいですね。
現在、BookLive!では、橋本環奈が出演するテレビCMを放映中。8月からは橋本が出演する「マンガが面白くて、笑いをこらえようと1人ニヤニヤしてしまう」という筋書きの新CMを放送する。そこでコミックナタリーは鈴木達央への取材時に「読んでいて思わずニヤニヤしてしまうマンガ」5作を一言コメントともに紹介してもらった。「人生に色濃く影響を与えたマンガ」とともに、気になる作品を楽しんでみてほしい。
- 鈴木達央が勧める
「読んでいて思わずニヤニヤしてしまうマンガ」 -
織田涼「能面女子の花子さん」
これは笑ってしまうという意味でのニヤニヤがある作品ですね。能面を被っているっていう花子さんのビジュアルが最高。どこかズレている花子さんの高校生ライフというか珍道中を、次は何が起こるのかなって毎回ニヤニヤしながら楽しんでいます。
-
福田晋一「その着せ替え人形は恋をする」
絵がものすごくかわいらしいですし、女の子のスタイルもめちゃくちゃ好みです(笑)。ヒロインである海夢(まりん)のギャルの描写もすごくリアルで、昔クラスにいたようなギャルもこんなふうに一足飛びで距離感を詰めてきたなって懐かしくなりました。登場人物の行く末をニヤニヤしながら見守ります。
-
小西明日翔「来世は他人がいい」
キャラクターたちのドスのきかせ方やメンチの切り方を見ていると、現実世界の悪い人たちはきっとこんな感じなんだろうなってニヤッとしちゃいます。「作者の方はいい意味で頭がイカれているんだろうな」と思わせる描写が多いので、次はどんな一手で来るんだろうと毎話楽しみです。
-
yoruhashi「はめつのおうこく」
「はめつのおうこく」は師匠を殺された少年の復讐譚です。本来こういうことを思っちゃいけないんですが、復讐ものを読んでいるときって心の中で「もっとやれ、もっとやれ」と考えてしまう自分もいて。自分が嫌な顔でニヤニヤしているのが見れてしまうような作品です。
-
蒼木スピカ「乙女怪獣キャラメリゼ」
最高。恋をすると怪獣になっちゃうって、めっちゃ面白いアイデアですよね。怪獣とのキスシーンなんて、世界中探してもなかなかないんじゃないかって思っています。あのかわいらしい絵でそういうシーンを描かれるとニヤニヤが止まらないです。