「聖♡ヌルヌル女学園」と引き換えに諦めていたアニメ化
──それでは次に現在放送中のアニメ版についてお話を伺ってまいります。まず率直に、アニメ化の打診を受けたときはどのようなお気持ちだったんでしょうか?
締め切り明けの疲労と、徹夜していてあまり頭が回ってなかったこともあって、「アニメになるんだ……」と他人事のようなぼんやりした感じでした。自分には一生関係ないことだと思っていたのでまったく実感が湧かず……。もしアニメ化が決まったとしたら、もっと泣いて喜んだりするのかと思っていましたが、本当に想定していなかったので突然言われて逆に何もできませんでした。
──予想外の出来事だったみたいですね。作家によっては「アニメ化が目標!」という方もいるかと思うのですが、その点福田先生はいかがでしょう。
マンガ家をしていればアニメ化は夢の1つではあるのですが、1話目で読者の皆さんに覚えてもらいたかったのと、強く印象に残るために「聖♡ヌルヌル女学園」というセリフを書いてしまいましたから、普通に考えて怒られるというか、作中のゲーム内容も放送できるわけがないので……。ヌルヌル女学園と引き換えに、連載前からすべてを諦めていました。
──(笑)。
むしろアニメ化を意識していたら、雫(※注)のあんな衣装なんて描かずに、もっとアニメーターさんの負担にならない楽なシンプルな衣装にしていたと思います。
注:作中に登場するゲーム「聖♡ヌルヌル女学園お嬢様は恥辱倶楽部ハレンチミラクルライフ2」のキャラクター。海夢が初めて新菜に衣装製作を依頼したのは雫の衣装。
──衣装と言えば、新菜役の石毛翔弥さんはアニメの連動企画として、雫の衣装をご自身で制作することに挑戦されていますね。
あの衣装を描かなければ石毛さんがあんなに苦戦することもなかったと思います……。石毛さんを応援しております。
アニメを観て「マンガ家人生でこの先、これ以上の幸せはない」
──アニメPVが昨年10月に公開された際に福田先生は「良すぎて嗚咽出た」とおっしゃっていましたが、完成したアニメ本編をご覧になっていかがでしたか?
アニメは完パケの1話と2話をいただいて拝見したんですが、何もかもがよすぎて感極まって泣きました……! マンガ家人生でこの先、これ以上の幸せはないというくらい、うれしくてうれしくて何度も繰り返し観て、計13時間観ました。自分の描いたマンガが動いて、声が付くということの感動がすさまじかったです。
──13時間も……!
アニメって本当にすごいです。かなり早い段階でBlu-rayの予約もしました! あんなにかわいく描いていただいた抱き枕カバーも絶対に欲しかったので。もしかしたらサンプルをいただけるかもしれませんが「それはそれ、これはこれ」ということで。海夢の抱き枕カバーはいくつあってもいいですから。
──抱き枕カバー、セクシーでかわいかったですよね。先ほどお話に出た通り石毛さんが新菜役を演じられていて、直田姫奈さんが海夢役で出演されています。おふたりの演技についてご感想を伺いたいです。
本当に、おふたりでよかったと思っています。海夢は作中で女性誌のモデルをしているので、同性からモテる女でいてもらわないと困るんですが、ギャルであっても下品さはなく、かわいところもあるけど変にかわいすぎない、という直田さんのさっぱりした演技は海夢のイメージ通りです! 逆に石毛さんは、声があまりにカッコよすぎて「新菜にもったいないのでは!? いいのか、新菜にこんな贅沢な……」と思いましたが、石毛さんの演技でより誠実さと繊細さが増して、思春期の高校生らしくてよかったです。
──ちなみにアニメ版で一番お好きなシーンはどこなんでしょう?
アニメ全体に言えるのですが、マンガだと単行本にできるページ数が決まってますから、読者の方が読んでいてストレスのかからないコマ数とセリフの文字数を決めて描いているので、どうしても何を優先するかでカットしないといけない部分が多数出てきてしまうんです。ですがアニメでは、そのカットした部分を全部丁寧に足して作っていただいて、かつ内容はものすごく伝わりやすくなって補完されているのが本当にありがたいです。なので「着せ恋」のアニメのすべてが好きです。本編もオープニングもエンディングも、すべてが気に入っています!
──今のお言葉はアニメに関わったすべての人たちが喜ぶと思います! それでは最後に、原作ファンやアニメをきっかけに「着せ恋」と出会ったファンの方々にメッセージをお願いいたします。
原作を読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。皆様のおかげでアニメ化していただくことができました。そして布教してくださっている皆様のおかげで、たくさんの方にも読んでいただけています。本当にありがとうございます! 通勤時間や休憩中、夜寝る前など、ちょっとした息抜きの時間に疲れが取れるような、「読んでよかった」と思っていただけるようなマンガになるよう心がけて描いておりますので、今後も引き続き応援していただけると幸いです。そしてアニメをきっかけに原作を読んでくださった皆様も、アニメと原作を比べて楽しんでいただいたり、原作を読んでアニメの先の展開を楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いいたします。
プロフィール
福田晋一(フクダシンイチ)
2006年に第23回エース新人漫画賞で奨励賞を受賞。2009年に月刊少年エース(KADOKAWA)にて「シバラク」で連載デビューする。2012年から2016年までヤングキング(少年画報社)にて「桃色メロイック」を連載し、2018年よりヤングガンガン(スクウェア・エニックス)にて「その着せ替え人形は恋をする」を連載中。