優しい選択
──現段階でお話いただける作品の見どころを教えていただけますか?
石川 三者三様の感情の出方が面白いと思います。咲太は今までになかったぐらい、自分に関わる事件が起こるので、そこに対する葛藤があります。一応トップにくる主人公ということで、モノローグの量が尋常じゃないんです。だから、何に葛藤してどう思っているのかはすごくわかりやすいのではないかなと。瀬戸さんも感情の発露がけっこうあって、翔子さん……翔子ちゃん? ええっと、微妙なんですけど……。
──(笑)。
石川 翔子という概念?(笑) その思いの強さもあって。それぞれの感情の振り幅が見どころになるんじゃないかな。
瀬戸 私が思う見どころとしては……。大筋として、心臓病を抱えた女の子の人生の物語の一部を見られるというところでしょうか。人ひとりの人生にみんなが向き合うことで、これだけいろんな人の感情が動かされるというところですね。
──翔子という女の子がどう生きるかということですよね。
瀬戸 ええ。本当に1人の女の子の人生だなって思います。
水瀬 私は翔子が残してくれる言葉の1つひとつがすごく胸に届いていて。特に考えさせられたのは、「優しくなる」という言葉ですね。
──「人生って優しくなるためにあるんだと思っています」という言葉をTVシリーズでも言っていましたね。
水瀬 はい。じゃあ、何をもって優しくなるんだろうって思うんです。誰かに優しくすることで、誰かが傷つくことだってありうる。だったら、それは平等とはいえないだろうし。今回咲太にとって本当に心がえぐられるような出来事が、後半にかけて待っているんですけど、そういうときに「優しい選択ってなんだろう」ってすごく考えてしまって。何かを選ばなきゃいけないつらさというものもあるんだと思わされました。
──選択の大切さに気付かされる映画だと。
水瀬 何気ない選択が積み重なって今日に繋がっていることも、すごく意識しましたし、選ぶということにも、もっと大切な気持ちで向き合わないといけないことなんだなと。そういうことを考えました。
──この作品は自分のこととして考えてしまうような部分も多くあると思いますが、お三方がもし、キャラクターの立場となったら、どのような選択肢をとるでしょうか。
石川 深くはお話しませんけど、今回のテーマは、おそらく哲学の命題になっているような問いかけでもありますよね。それぐらい答えが出ないものだと思うし。僕なら、同じような問いを現実にされた場合、自分が悲しむぐらいなら、そして相手に希望を残せるなら、自分のほうから終わらせたいと思ってしまいます。
瀬戸 私だったら、相手が終わらせたいと思うなら、その選択を受け入れちゃう。それなら自分のほうが耐えられる自信があるから。麻衣さんはその覚悟もあるけど、ちゃんとあがくんですよ。自分の気持ちを咲太に言ったうえで、その選択ができるのがカッコいいなと思うんですけど、自分だったら、相手の話は聞かずに「あなたはそうよね」って勝手に納得して、あがかないかな。
水瀬 私はいろいろ考えすぎて……一緒に……。
──えええっ?
石川 魔王の考え方だね(笑)。
水瀬 きっと気持ちが強すぎると思うんです。ならいっそ……みたいな気持ちが生まれると思います。とはいえ、なかなかそんな勇気もないと思うんですけど。気持ちとしては……。離れ離れは悲しいから。
──今のお話は、翔子さんの立場を思うと複雑な気持ちになりますね。なかなか重いテーマを扱っていると思いますが、本作のアフレコに臨むときのテンション感というのはどのようなものだったんですか?
石川 無理しない! 無理すると僕は急にセリフに熱が入るんで。熱血になっちゃうんですよ。「麻衣さあーーーーん!」となっちゃうんで。それは咲太じゃないから。
瀬戸 いつもの石川界人だから。
石川 「瀬戸さあーーーん。おはよー!」
瀬戸 わかった。わかった大丈夫。
石川 いつもの自分になってやりすぎちゃうから(笑)。それと、一番意識していたのは周りの人のセリフを聞くということです。相手のセリフを受け取るか受け取らないかも瞬時に判断したいし、よく聞いて、自分のセリフはあまり考えないようにしています。
瀬戸 独りよがりにならないように。自分で作ってきたものがあると、逆にまっすぐになってしまって、周りが見えなくなることもあるんです。できるだけ周りの声を聞いてやったほうがいいなと。
──そうじゃない作品もあるんですよね?
瀬戸 もちろんです。一本気になっていいものもありますし、それでいい役どころの演者さんもいます。でも、「青ブタ」に関しては、人の言葉を聞くのが大事な作品だなと。
水瀬 やっぱり掛け合いなので、前の人のセリフをしっかりと聞くことで出てくる感情もあるんです。個人的なモチベーションとしては、劇場版ということでセリフ数もすごく多かったので、「自分ががんばらなきゃ」という気持ちと、どこから湧いてくるのかわからないけど「やれる! できる!」みたいな気持ちを、最後まで絶やさずにいないとというのは、一日中心がけていました。「駄目だ」と思うとそれが乗ってしまうので、どんなときもフラットな状態でいようと。それが一番難しかったんですけど……。
──かなりプレッシャーがあったのでは?
水瀬 めちゃくちゃありました。でも、みんなでいいものを作るというところではセリフ数は関係ないので。スタッフクレジットに名前のある方々、皆さんと一緒に作った作品というところでは、大船に乗った気持ちでいていいんだと思って、がんばれたと思います。
- 「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」
- 2019年6月15日(土)全国公開
- あらすじ
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空と海が輝く街・藤沢に暮らす高校2年生の梓川咲太は、先輩で恋人の桜島麻衣との心躍る日常を過ごしていた。しかしその日々は初恋の相手である牧ノ原翔子の出現により一変する。なぜか翔子は「中学生」と「大人」が2人存在しているのだ。やむなく翔子と一緒に住むことになった咲太は「大人翔子」に翻弄され、麻衣との関係がぎくしゃくしてしまう。そんな中、「中学生翔子」が重い病気を患っていることが判明し、咲太の胸の傷跡が疼き始める……。
- スタッフ
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原作:鴨志田一(電撃文庫刊「青春ブタ野郎」シリーズ)
原作イラスト:溝口ケージ
監督:増井壮一
脚本:横谷昌宏
キャラクターデザイン・総作画監督:田村里美
音楽:fox capture plan
制作:CloverWorks
製作:青ブタ Project
- キャスト
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梓川咲太:石川界人
桜島麻衣:瀬戸麻沙美
牧之原翔子:水瀬いのり
古賀朋絵:東山奈央
双葉理央:種﨑敦美
豊浜のどか:内田真礼
梓川花楓:久保ユリカ
- 「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」 | 青春ブタ野郎シリーズ
- アニメ「青春ブタ野郎」シリーズ公式 (@aobuta_anime) | Twitter
- 「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」作品情報
©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
- 石川界人(イシカワカイト)
- 1993年10月13日生まれ、プロ・フィット所属。主な出演作に「翠星のガルガンティア」(レド役)、「ハイキュー!!」(影山飛雄役)、「境界のRINNE」(六道りんね役)、「盾の勇者の成り上がり」(岩谷尚文役)など。
- 瀬戸麻沙美(セトアサミ)
- 1993年4月2日生まれ、シグマ・セブン所属。主な出演作に「放浪息子」(高槻よしの役)、「ちはやふる」(綾瀬千早役)、「マクロスΔ」(ミラージュ・ファリーナ・ジーナス役)、「盾の勇者の成り上がり」(ラフタリア役)など。
- 水瀬いのり(ミナセイノリ)
- 1995年12月2日生まれ、アクセルワン所属。主な出演作に「ご注文はうさぎですか?」(チノ役)、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」(ヘスティア役)、「Re:ゼロから始める異世界生活」(レム役)、「五等分の花嫁」(中野五月役)など。