“同窓会”の参加者が増えたらいいな
──松井先生は本作の制作中「逃げ上手の若君」の連載中でお忙しかったと思いますが、やりとりはあったのでしょうか?
障子 はい。お忙しい中でも、脚本は何度も見ていただきました。特にオリジナルパートのキャラクターのセリフなど、細かい点でこちらから確認や相談もさせていただきました。あとはアニメで初登場のキャラクターなど、新規の設定はすべてチェックいただきましたね。
──劇場版の制作中、特に難しかった部分についてもお教えください。
上江洲 複数のエピソードをどうしたら違和感なくつなげられるか、ですね。エピソードとエピソードの間に入るパートをオリジナルで描くことが何よりも難しかったです。ほかの作品であれば時間軸を進めるという手段が使えるのですが、今回はすでに卒業を描いていますから、結末まで辿り着けないわけです。その制約がなかなか大変でしたね。
──作画面ではいかがでしょう。
樋上 この作品はキャラクターの人数が多いので、その表情をちゃんとその子らしく描くことを特に意識しながら作業をしていました。都度、原作マンガや公式キャラクターブック、公式イラストファンブックを参考にして……。生徒間で誰と誰の仲がいいのかもちゃんと把握して、その生徒が隣にいたときにはこんな表情を浮かべるよね、なども考えながら総作画監督として修正を入れていました。
北村 僕が挙げるとしたら、水泳のエピソードですかね。アニメで表現するうえで特に難しいものに水がありますし、お話としても心菜の水への恐怖を表現する必要がありました。そのため、このシーンではCGを導入しています。水面が透けていたり透けていなったりするのは、その表現の一環です。
──ビジネス面において、障子さんがこの10周年プロジェクトを盛り上げるために意識されたことはなんですか?
障子 まずは2025年4月から、劇場版公開にかけての1年間を通して、TVシリーズ全47話の再放送を企画しました。「暗殺教室」は普遍的に、いつでも誰でも楽しめる作品だと思うので、再放送するにあたって、エイベックスさんと新たに主題歌を作ることで、音楽からも作品を知ってもらう試みもしています。10周年プロジェクトは“同窓会”をテーマにしているので、そこに参加してくださる方が増えたらいいなと考えていました。再放送で話題を継続させつつ、オールナイトニッポンなども展開して、劇場版まで火を絶やさず来られたかなと思っています。
上江洲 第2期再放送の物語がクライマックスを迎えるタイミングで、劇場版が公開されるというリンクも見事ですよね。劇場版のストーリーは、殺せんせー暗殺期限の15日前から始まるので、再放送のクライマックスの展開と時系列がつながっていて。
障子 先ほど北村監督から実写映画版のお話もありましたが、その製作も弊社なんですよね。つまり、フジテレビにとって「暗殺教室」はアニメでも、実写でも、とても大切な作品。しっかりと10周年を祝える座組を作りたかったんです。
──ちなみに、キャスト陣のお芝居についてはいかがでしたか?
上江洲 先ほど樋上さんが蛍ちゃんをデザインしたときのお話がありましたけど、実は彼女のシーンを執筆する際に、あらかじめ「(渕上舞)」とト書きを入れていたんですよ。もう、当然渕上さんが演じるだろうと。
樋上 渚くんと同じ声なのに、全然演技が違ってちゃんと女子小学生していて、とてもかわいいんですよね。
上江洲 殺し屋たちのキャスティングもよかったですよね。収録直前に配役を伺ったのですが、海外ドラマで見るような方々が揃っていて、とてもうれしかったです。
障子 キャスティングに関しては、すでに決まっているTVシリーズからの続投の方々とのバランスも鑑みて、音響監督の飯田(里樹)さんに選んでいただきました。どなたも素晴らしくて、本当に圧巻でした!
「樋上さんの描く業が最高」
──さて、劇場で公開されている本作を鑑賞される方に向けて、特に注目してほしいポイントをお教えください!
樋上 10年後の渚たちの姿はぜひ観ていただきたいですね。集英社さんや北村監督、障子さんとどんな衣装を着せるべきか、かなり話し合ったんです。
北村 10年後の姿は原作の描写も限定的なので、松井先生のイラストを基準にしつつ「暗殺教室 殺たん」(※)で描かれた挿絵、TVシリーズでの7年後の姿をヒントに樋上さんに描いていただきました。
※「暗殺教室」の英語英単語帳シリーズ。小説と参考書がセットになったイラスト満載の内容で、特典として描き下ろしマンガも付属した。
障子 樋上さんの描く業が最高で。しかも2パターンくらい用意してくださっていて……! 我々プロデュースチームもみんなファンなので、こっちの業が見たい、でもこっちも……みたいに難航して(笑)。本当に大変な思いをして描いていただいたので、感謝してもしきれないです。
樋上 スーツスタイルとラフなスタイルを作って、結局ラフなスタイルが採用されましたね。成長した生徒たちは7年後の姿こそ描かれていますが、そこから3年経ってどんなポージングになるのか、想像を膨らませながら描きました。後ろのほうに立っている子たちも、体は隠れちゃっていますが全員全身デザインしています。中でも律の未来の姿はレアだと思うので、ぜひご注目ください!
上江洲 商品化しよう。
一同 (笑)。
──北村監督はいかがですか。
北村 見どころじゃないですけど、実は本作には幻のイントロダクションがあるんですよ。殺せんせーを殺すために、椚ヶ丘中学校の周囲を自衛隊の戦車や装甲車が周辺を固めている不穏な描写も候補にあったんです……。
上江洲 流石に卒業間際になれば、戒厳令的なものが敷かれていてもいいのではないか? と。でも、そうなると街の人々にも勘づかれてしまいますから、そこまで政府も大っぴらな動きはしないであろうと松井先生にジャッジいただいて、その方向性は早々になくなったんです。でも、そのカッコいい構想の名残が衛星レーザーのシーンなんですよね。
北村 そんな幻のお話はさておき(笑)、松井先生にも全面的に監修いただき、これぞ「暗殺教室」の世界、と言えるものになったと思います。その一部始終を楽しみにしていただければと思います。
上江洲 脚本家としては、細やかなキャラクターの仕草を描けたことがとても楽しかったですね。ストーブを囲んでいる画があることで、旧校舎にはエアコンがないことも伝わりますし……。そんな細やかな様子にもご注目ください!
障子 言ってしまえば、本作は殺せんせーの暗殺まで残り15日のタイミングで回想をする、“終わりがわかっている”お話です。ただ、それだけではなくて、生徒たちがそのタイミングでどんな気持ちだったのかが本作の見どころでもあると思います。また、エンドロールの後まで見ていただけると、誰もが同窓会のメンバーとして、渚たちと一緒の気持ちになれると思います……。ぜひ、エンドロールの途中で帰りそうな人を見つけたら引き止めて、最後まで楽しんでいただけると幸いです!
プロフィール
北村真咲(キタムラマサキ)
「放課後少年花子くん」でTVシリーズの監督を務める。2026年3月公開の「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」で、劇場アニメ監督デビューも果たした。
上江洲誠(ウエズマコト)
大阪府出身。大阪芸術大学を優秀な成績で中退し上京。デビュー後間もなく、2006年放送の「うたわれるもの」、2007年放送の「瀬戸の花嫁」などでシリーズ構成や脚本を務めて名を馳せた。その後は「刀語」「人類は衰退しました」「結城友奈は勇者である」「暗殺教室」「この素晴らしい世界に祝福を!」「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」など、多数の作品でシリーズ構成・脚本を担当。2026年にはシリーズ構成を務めるTVアニメ「鉄鍋のジャン!」の放送が予定されている。
上江洲 誠/Makoto Uezu (@uezux) | X
樋上あや(ヒノウエアヤ)
TVアニメ「暗殺教室」のサブキャラクターデザイン補佐・衣装変えを担当し、2026年3月公開の「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」ではキャラクターデザインを務める。「放課後少年花子くん」ではキャラクターデザインと総作画監督を担当。そのほか携わった作品に「ようこそ実力至上主義の教室へ」「HIGH CARD」「IDOLY PRIDE」などがある。
障子直登(ショウジナオト)
1993年生まれ、京都府出身。2015年にフジテレビに入社。報道局で報道番組のディレクター、情報制作局でワイドショーのディレクターの経験を経て、2021年からアニメ制作部に所属する。「ちいかわ」「メタリックルージュ」のプロデュースを担当し、2026年3月公開の「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」のプロデュースも手がける。

