タテ読みマンガの可能性を拡大する14作品が選出! Amazonのマンガ賞「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」結果発表|審査員の梶裕貴、あかせあかり、佃煮のりお、安田かほるからのコメントも公開

「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」は、アマゾンジャパンの主催による新たなマンガ賞。日本在住の人であれば、プロ、アマなどの経験や年齢も問わず応募可能で、ジャンルも自由という広い間口を設け、今年1月から5月にかけて募集が行われた。今回グランプリ作品は誕生しなかったものの、準グランプリの枠を拡大し、タテ読みマンガの可能性を広げる14作品に賞金を授与することとなった。

コミックナタリーでは、受賞結果発表と合わせ、各作品の紹介と審査員のコメントを掲載。審査員に「新たな世界を知ることができた」と言わせた、準グランプリ6作品とカテゴリー賞8作品がどんなものだったかチェックしてみよう。

「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」とは?

縦読みマンガに特化したサービス「Amazon Fliptoon」を展開しているアマゾンジャパンによる新たなマンガ賞だ。夢を追いかけるすべてのクリエイターに挑戦してほしいという願いを込め、賞金総額は1億円。著者が日本在住で未発表の作品であれば、プロ・アマ、ジャンルを問わず、広い層からの才能を募集した。グランプリ、準グランプリ獲得作品については、アマゾンジャパンが受賞後のサポートを行う。

審査員として声優の梶裕貴、コスプレイヤーのあかせあかり、VTuber事務所社長・マンガ家の佃煮のりお、コミックマーケット準備会共同代表・安田かほるが参加し、厳正な審査のもと受賞作品が決定した。なお、受賞作品は「Amazon Fliptoon」にて読むことができる。

審査員

  • 梶裕貴

    梶裕貴声優

  • あかせあかり

    あかせあかりコスプレイヤー

  • 佃煮のりお

    佃煮のりおVTuber事務所社長/マンガ家

  • 安田かほる

    安田かほるコミックマーケット準備会共同代表

全14作品が賞金を獲得!
受賞作品発表

※今回はグランプリ該当作品なし、並びは順不同。

準グランプリ

※4作品予定から拡大して6作品に授与

「イショクの眼」ビジュアル

八時ななころ「イショクの眼」

主人公・レイタは由緒正しき除霊師一族に生まれたものの、霊が見えず役に立たない能力しか使えない。知性を持った悪霊に襲われる恐れがあるため、レイタは同じく除霊師の家系に生まれた幼なじみ・サトリに登下校の道のりを護衛されている。これまで優秀な双子の兄と比べられ、自分に価値がないと思い続けてきたレイタ。しかしある悪霊との戦いから、彼を取り巻く状況が一変し……。人々に害をなす悪霊との戦いを描いたバトルアクションだ。

作品ページ

「ハッピー百合サンド」ビジュアル

ミキマキ「ハッピー百合サンド」

イケメン高校生・早坂蒼斗は、筋金入りの百合好き。その見た目からモテモテな蒼斗だったが、女子から告白されるたびに「女子は女子と付き合うべき」と感じている。そんな蒼斗の最近の推しは、クラスメイトのギャル・桃井と大人っぽい黒瀬。彼女たちを脳内でカップリングさせて妄想する日々を送っていた蒼斗だったが、ある日桃井と黒瀬から同時に好意を寄せられてしまう。百合に挟まれてしまった蒼斗の受難が描かれる。

作品ページ

「タスクス」ビジュアル

なか憲人「タスクス」

「とくにある日々」で知られるなかによる、冒険ファンタジー。村の青年・タスクは、いつも世話になっているおばさんの病気を治すため、ある薬草を取りに隣の山へと出かける。しかし道中の橋が壊れており、橋を直せる職人を呼びに近くの町へと向かうことに。職人に出会うものの、荷車のルート上には危険な魔物がいて……と、とにかく“タスク”が増え続ける彼の冒険が描かれる。タテに読むという性質を活かし、彼の抱えるタスクがページ上に表示され続ける点が特徴だ。

作品ページ

「運命のリフォーカス」ビジュアル

つのだふむ「運命のリフォーカス」

カメラマンの星野星哉は、ある交通事故がきっかけで、10分後に近くで死ぬ人の姿を見られる力を手に入れてしまう。星座が変わらないように人の運命も決まっていると考えることで、己の不幸な人生について悩まないようにしてきた星哉。しかしこの不思議な力を手にしたことで、誰かの死の運命を変えられるのではと思い始める。

作品ページ

「戦場のクローンズ」ビジュアル

G!on、唐丸ミサゴ、かしきな、ゆづき、大葉みのり、とんちきくま、栗山ねね子、松島菜摘「戦場のクローンズ」

物語の舞台は、人類の科学力では解析不可能な能力を持った怪物たちが突如人間を襲うようになった世界。徐々に生活圏を奪われていく人類は、クローン技術によって生産された兵士たちに希望の光を見出していた。主人公の青年も、ある日クローン兵として目覚め、戦地に投入される。そこで見たのは凄惨な現実と、クローン兵に備えられた残酷な“機能”だった。

作品ページ

「生成AIが人格を作る時代が来てさ」ビジュアル

「生成AIが人格を作る時代が来てさ」

時は22世紀の後半。人々の人格は、生成AIが性格・能力をランダムに選出した“頭脳AI”をインプットすることで作り出されるようになっていた。主人公・ハナは頭脳AIの生成時のミスから起こるノイズ障害のため、双子の姉であるミツに付き添われながら病院で治療を受けることに。ノイズ障害の治療は人格が初期化されるリスクも伴うらしく、ミツはハナが受ける治療に不安を覚え始める。

作品ページ

カテゴリー賞

日常

「女性専用車両で粘着おぢと戦った話」ビジュアル

ますまゆ「女性専用車両で粘着おぢと戦った話」

主人公はある日、いつも通勤に使っている電車の女性専用車両で不穏な気配を察する。車内には不審な男性が1人乗っており、女性客に「どういう気持ちで女性専用車両に乗っているのか」としつこく聞いていたのだった。乗客を怯えさせるその男性に怒りを覚えた主人公だったが、彼と対峙したときに真の狙いに気づき……。著者のますまゆが、自身が経験した電車内トラブルをベースに描いた。

作品ページ

「空気のような しあわせを」ビジュアル

さわぐちけいすけ「空気のような しあわせを」

萌谷イチカには、日常のあらゆることを細かく推理して考え込むクセがある。彼氏からプロポーズをされたイチカだったが、彼の言葉や自分の気持ちを踏まえて考え抜いた挙句、別れることを決断。ルームシェアをしている友人2人に面倒くさがられながらも、彼女たちと話しながらじっくりと考え抜くことで、イチカは自分の気持ちに整理をつけていく。

作品ページ

「まんけギャル」ビジュアル

真鍋陽「まんけギャル」

高校生の貝瀬は、定員が足りず廃部寸前のマンガ研究部の部長。焦る副部長を横目に、貝瀬は賞を獲って学校を見返そうとマンガを描き続けてきた。そんな彼らの部室に、入部希望者として金髪ギャルのらいちが現れる。冷やかしかと警戒する貝瀬たちだったが、らいちはとんでもない熱量で彼らを圧倒する。

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ファンタジー

「深海DINER」ビジュアル

ぬまがさワタリ「深海DINER」

「図解 なんかへんな生きもの」などで知られるぬまがさが描く「深海DINER」は、深い海の底で営業しているダイナーが舞台のファンタジー。メンダコの店長・めんこが切り盛りするダイナーには、タカアシガニ、デメニギスなどの常連客が訪れる。海の底でめんこのおだやかな毎日は続くと思われたが……。めんこの日常に突如訪れた危機が、海の生き物たちの豆知識とともに綴られる。

作品ページ

「大獄のバベル」ビジュアル

羽賀翔一、ワタベヒツジ「大獄のバベル」

かつて人々は、祈りを神に届けるため、天高くそびえるバベルの塔を建設した。主人公の兄弟は、病気の兄を救ってほしいという願いを神に届けるため塔に向かう。しかし神は、バベルの塔に集った人々に怒り、ある運命を課す。「漫画 君たちはどう生きるか」の羽賀翔一が作画を担当し、運命に飲み込まれ引き裂かれながらも旅をする兄弟の冒険ファンタジーを紡ぐ。

作品ページ

「世界が終わっても毛玉は寄り添うだけ」ビジュアル

冬島暮「世界が終わっても毛玉は寄り添うだけ」

主人公の少女は、突如隕石が落ちてきたことで崩壊した世界に暮らしている。自分以外の人間も見つられず、ただ彷徨うだけの生活を送っていたが、謎の生き物との出会ったことで安らぎを感じるように。やがて、忘れていた記憶を取り戻した彼女は、自分の正体についても思い出し……。神出鬼没の謎の生き物が、人々にそっと寄り添うさまが描かれる。

作品ページ

恋愛

「鎧坂さんが可愛いのは俺だけが知っている」ビジュアル

こばやし少女「鎧坂さんが可愛いのは俺だけが知っている」

高校2年生の田中は、学校一の“カタブツ”とされる女子・鎧坂のことが大好き。普段はクールでとっつきにくそうな鎧坂だが、時折見せる素の表情が、田中にとってはたまらなくかわいらしく映るのだった。告白を断ってもめげない田中の姿が、次第に鎧坂の心を動かしていき……。まっすぐなアピールを続ける田中と、超まじめな鎧坂の恋路が描かれる。

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オールジャンル

「どうもこうも先生」ビジュアル

かもみら「どうもこうも先生」

どうもこうも先生は、頭が2つあるという謎めいた見た目ながら、どんな病気も直してしまう名医。小学生のちあきは、重い病気の母親を助けてもらう代わりに、将来自分の身体をどうもこうも先生に提供する約束をしてしまう。母親を救うことができてうれしいちあきだったが、いずれ母親と生きることができなくなるという現実を思い、葛藤するようになる。

作品ページ

審査を担当した4名から
コメントが到着

梶裕貴

梶裕貴

この度、「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」にて審査員を務めさせていただきました、声優の梶裕貴です。
400点を超えるご投稿をいただき、それだけでも非常に驚いていたのですが、実際に拝読してみると、どのマンガも、それぞれの作家さんの個性輝く魅力的な作品ばかりで、心から感動いたしました!
皆さんのマンガに懸ける想い、そして可能性というものを強く感じさせていただいた気がしています。
いつか、今回ご参加くださったマンガ家の皆さんと、私も声優の一人としてコラボレーションし、何か一緒にクリエイティブな創作活動ができたとしたら、それ以上に幸せなことはないなと思います。
改めまして、想いのこもった素敵な作品のご投稿、本当にありがとうございました!

あかせあかり

あかせあかり

今回審査員をさせていただいて、タテ読みマンガならではの新しい表現や「こういう面白さがあるんだ!」ということに触れ、マンガって面白いんだなと改めて思いましたし、
「色が着いていることでこういう表現ができるんだ」という、新しい発見ができた作品もありました。
皆さんも読んでみて「いいな」と思う作品があったら私もうれしいです。
またこういう機会があったらいいなと思います。

佃煮のりお

佃煮のりお

実はマンガの審査をさせていただくのは生まれて初めてでした。
マンガ家としての歴はけっこう長くはあるのですが、マンガ読みとしても普段から1カ月に100冊くらい余裕で読んでしまうほど、どんなマンガでも読むことが大好きなので、全部楽しく読ませてもらったうえで、審査までさせていただけて幸せでした。
もともと横読みのマンガを読んでいたので、タテ読みのマンガってどう描くんだろうとセオリーを勉強しつつ読ませていただいたんですが、自由度がかなり高くて、それでいて新しいマンガ表現なんかもあったりして。
マンガ文化が始まってから本当に歴史が長いですが、まだまだ新しい表現ができるんだとわくわくする作品ばかりでした。
私も機会があれば、タテ読みのマンガを描いてみたいですね!
このたびは貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました!

安田かほる

安田かほる

前回のインディーズマンガ大賞のときにも審査員として呼んでいただいて、たくさんのインディーズマンガを読み、本当に作品の幅って広いなと感じました。
今回はタテ読みマンガということで、また新たな世界を知ることができ、個人的にはすごく楽しい経験をさせてもらったと思っています。
元々同人誌などを読んでいる者としてはタテ読みはかなり新鮮な体験で、横読みのように「右から左に読む」という読み方の作法などがまったくない状態で、深みに沈んでいくような新しい読み方でした。
そしてタテ読みマンガでは、今までにない表現がいろいろとできるなあということを非常に強く感じました。
マンガというのはいつまでも同じ表現をしていたら、新しい読者層からどんどんずれていくと思っているので、新しい表現に対する感覚を培っていければ、もっと大きい世界につながると思います。
楽しい経験をさせていただき、どうもありがとうございます。


2024年7月5日更新