「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」ぷにちゃん×ほしなが初対談で語る溺愛もののよさとは?

ほしな「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」10巻が、6月1日に発売された。同作はビーズログ文庫から刊行されているぷにちゃんの小説を原作としたラブストーリー。現世で大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢・ティアラローズに転生してしまった主人公は、これから自分の身に起こる“断罪イベント”に抗うことを諦め、運命を受け入れると決めていた。しかし婚約者から婚約破棄を言い渡された直後、ゲームのシナリオにはなかった隣国の王太子・アクアスティードによる求婚イベントが発生して……。B's-LOG COMIC(KADOKAWA)で連載されており、原作小説は13巻まで発売されている。

コミックナタリーでは「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」10巻の発売を記念して、ぷにちゃんとほしなの対談インタビューをセッティング。物語の制作裏話や“溺愛もの”の魅力について語ってもらった。また事前にビーズログコミックスの公式Twitterでは読者が選ぶ“推しあまシーン”を募集。投票が多かったシーンの見どころのほか、2人が選ぶ“推しあまシーン”も要チェックだ。

取材・文 / 大湊京香

「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」あらすじ

生前プレイしていた乙女ゲーム「ラピスラズリの指輪」の世界に、悪役令嬢・ティアラローズとして転生してしまった主人公。しかし彼女が目を覚ましたのは、婚約者・ハルトナイツに婚約破棄と国外追放を言い渡される卒業パーティ前夜だった。心の準備をする間もなく迎えた“断罪イベント”の日。すべてを諦めおとなしく結末を迎えようとしたティアラローズの前に、ゲーム続編のメインキャラクター・アクアスティードが登場する。ハルトナイツからの婚約破棄宣言を聞いたアクアスティードは、ティアラローズに求婚してきて……。悪役令嬢のはずが“超高スペック”な隣国の王子に愛されまくるラブストーリーだ。

「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」1巻

「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」1巻

単行本1巻から3巻まではティアラローズがアクアスティードに求婚されるまでを描いた“ラピスラズリ編”、4巻から6巻までは2人が結婚に至るまでを描いた“結婚編”、7巻から9巻までは新婚生活を送る2人の日常を描いた“新婚編”が展開された。単行本10巻では小説4巻の内容がスタート。隠しステージを発見したティアラローズが続編ゲームの悪役令嬢に出会ってしまい……。

初めてのファンタジーだったので不安もありました(ほしな)

──2018年に連載がスタートし、単行本はついに大台の10巻に到達しました。おふたりは今回が初めての対談ということですので、まずはコミカライズが決定したときのご感想をお話しいただければと思います。

ぷにちゃん 純粋にすごくうれしかったです。最初にほしな先生のカラーとモノクロのサンプルを見せてもらったときに、絵の安心感もうまさも抜群のマンガ家さんだと感じたので安心しておまかせできると思いました。なのでコミカライズは楽しみでしたね。

ほしな 私は小説の面白さはもちろんですが、主人公が悪役令嬢なんだという新鮮さも感じていました。描くのが楽しそうだと思った反面、私自身ガッツリしたファンタジーを手がけるのが初めてだったので、ちゃんと作品の魅力を表現できるのかと不安でしたね。

ぷにちゃん かわいいしキレイだしカッコいいしで、もう何も文句のつけどころがないです。最初のほうで、ティアラがとろけた感じになっている絵があるんですけどそれもめちゃくちゃかわいくて。あとはちょっとしたミニキャラとか装飾品とかドレスとか、そういった細かい部分に気を配ってくださっているのもうれしいです。

1巻3話より、アクアスティードに求婚され赤面するティアラローズ。

1巻3話より、アクアスティードに求婚され赤面するティアラローズ。

6巻24話より、アクアスティードとの結婚式のために美しいウェディングドレスを身に着けたティアラローズ。

6巻24話より、アクアスティードとの結婚式のために美しいウェディングドレスを身に着けたティアラローズ。

ほしな よかったです……! 最初は原作小説の挿絵を参考にさせていただいてたんですけど、挿絵にない部分は着ていたらかわいいなと思うものを描いたりしていました。

──作品を作るにあたり楽しかった点、苦しかった点もお伺いしたいです。

ぷにちゃん 生き生きとしたキャラが多いので、自分で勝手に動いてくれるようなときは楽しいですね。アカリやハルトナイツは最初悪役サイドなんですけど、仲良くなるとお転婆になっていくので書きやすかったです。逆に国の文化や背景については苦戦しました。基本的にファンタジーなので自分で好き勝手に考えられはするんですけど、あんまり最初に設定を詰めていなかったので、どういう食事しているのかなとか考えるときは大変でした。

──ほしな先生はそうした設定をマンガで表現するためにどのような工夫を?

ほしな 小説を読んでいく中でイメージが湧きにくい部分があったら、その都度ぷにちゃん先生にお聞きしていました。例えば街並みだったら、担当編集の松本さんにもご協力いただいて参考写真を見せてもらったり、世界のキレイな景色が写っている写真集を手当たり次第参考にしながら、自分の頭の中で組み立てていきました。

──なるほど。では描いていて楽しかった部分は?

ほしな どのキャラクターもみんなキャラが立っているので描いていて楽しいですね。アクア様のティアラローズへの溺愛っぷりを、原作のよさをそのまま伝えられるよう表現する難しさもあるんですけど、逆にそこも楽しいと感じていました。

妖精だけで人気投票したいくらい好き(ぷにちゃん)

──小説ではビジュアル化されていなかったキャラクターがコミカライズで初登場していることもあると思いますが、一例を挙げると?

ほしな エリオットとか、タルモとか。あとは挿絵になかったキャラたちですかね。

左からタルモ、エリオットの初期ラフ画。タルモはエリオットの初期ラフ画から誕生した。

左からタルモ、エリオットの初期ラフ画。タルモはエリオットの初期ラフ画から誕生した。

ぷにちゃん 本当に私の持ってたイメージ“そのまんま”っていう感じがして。妖精たちもすごくかわいく描いてもらえていたので、「妖精もっと出てくれればいいのにな」と思っていました(笑)。妖精だけで人気投票したいくらい好きです。髪型を変えてくれたりなど、細かい部分も意識して描いてくれていたので見るたびにテンションが上がっていました。

ほしな えー! うれしいです。でも今思えば、妖精と言ってもアニメに出てくる頭身の高い妖精もいるじゃないですか。私はミニマムな感じで描きましたが、ぷにちゃん先生が頭身の高いタイプをイメージしていたらと思うと心配です……大丈夫でしたか?

ぷにちゃん イメージ通りだったので全然大丈夫です(笑)。

ほしな よかった(笑)。

ぷにちゃん 小説でビジュアルが出ていないキャラ、けっこう多かったですね。メインキャラは相談しつつ、あとはけっこうお任せしてしまったというか。

ほしな そうですね、描く必要が出るたびにぷにちゃん先生にイメージを聞きつつラフ画を提出していました。

──挿絵に出ていないとなると一からイメージ作り上げる必要があると思うのですが、キャラのデザインをする際はどのような部分を意識したのでしょうか?

ほしな すでに登場しているキャラクターとはデザインがかぶらないように意識して、あと小説を読んだうえでの性格をビジュアルにも反映させたりしています。性格があまり出ていないキャラクターについては想像して作っていましたね。

カバー裏の4コママンガは半分私の妄想です(ほしな)

──カバー裏の4コママンガはほしな先生が考えていらっしゃるのですか? キャラクターのコミカルな一面や彼らの日常が垣間見れるような内容となっていますね。

ほしな 小説を読んでいて本編で描ききれなかった小ネタを使ったりもしますけど、半分は私の妄想で描いています(笑)。

ぷにちゃん ミニキャラの時点ですでにかわいくて目の保養になっていました……! ちょっとした小ネタをたくさん出してくれているので、次は誰が来るのかなといつも楽しみにしています。

ほしな そうだったんですか(笑)、ありがとうございます。

──単行本のカバーイラストも美麗なものが多く素敵ですが、ぷにちゃん先生からのご要望などがあったのでしょうか?

ほしな 私がその巻の内容をイメージして何点かラフを用意し、ぷにちゃん先生に選んでいただいています。

ぷにちゃん いつもたくさんラフを出していただくのですが、どれもかわいいから「え、どうしよう」みたいな感じになるのでがんばって選んでいます(笑)。あれもいいけどこれもいい、でも1個しか選べない……となるので、特典などで使われているのを見るとうれしくなりますね。

──「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」はゲーム世界の悪役令嬢に転生するお話ですが、おふたりは悪役令嬢作品や転生系の作品を普段からお読みになりますか。

ぷにちゃん そうですね、今では割となんでも読みます。確か「ログ・ホライズン」のアニメをきっかけに異世界転生や転移といったジャンルを知っていきました。でも当時は悪役令嬢を主体とした作品はあまりなかったですし、そもそも書籍になってもいないような状態だったので女性向けの作品はほとんど読んでいなくて。そこからだんだんと女性向けが増えてきたタイミングで悪役令嬢ものを読んでいくようになりました。今思えば「ログ・ホライズン」がなかったら小説も書いてなかっただろうなと。

ほしな 正直コミカライズがはじまった当初は悪役令嬢ものや転生系についてまったく知見がなく、「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」をきっかけにそういったジャンルの作品があることを知りました。今ではいろいろ読むようにはなりましたけど、コミカライズ連載当初知っていた異世界転移ものといったら子供の頃観ていたような「魔法騎士レイアース」とか「犬夜叉」とか「デジモン」みたいな作品くらいでしたね。

──少し脇道に逸れた質問になってしまうのですが、もしご自身が作中に登場するゲーム「ラピスラズリの指輪」に転生したとしたらどのキャラクターを攻略したいですか。

ぷにちゃん すごい迷うというか、わかんないな(笑)。

ほしな そうですよね(笑)。

ぷにちゃん 私はどちらかというとファンタジーが好きなので、攻略キャラクターではないのですがアカリと一緒に冒険したいですね。お城でのんびり過ごすよりはどこかに行きたいなと思ってしまいます。

ほしな 迷うんですけど、普通にストーリーが気になるって意味で、男性キャラならキースとかエリオット、女性キャラならフィリーネとパール様と仲良くしたいです。

──自分が作中のキャラクターに転生するとしたら?

ぷにちゃん 外見的にいうと妖精さんもいいなと思います。ちっちゃいし、飛べるし、いろんなところに行けるし、お城も忍び込めそうだし、何をしても怒られなさそう(笑)。海の妖精なら海中に潜れて楽しそうですし、森の妖精なら王様がキースなので一番楽そうかな。森の妖精だとレア度も高いしいいなと思います。あとは男キャラだったらキースもいいですし、個人的にハルトナイツの弟のシリウスが好きなのでそこらへんはアリかな。

ほしな やっぱり森の妖精ですかね。いろいろ美味しい食べ物とかもありそうですし、花もキレイそうなので(笑)。