秋田書店の中華ファンタジーが花盛り!「茉莉花官吏伝」「十三歳の誕生日、皇后になりました。」の作家陣・石田リンネ、高瀬わか、青井みとが魅力語る (2/2)

クロスする物語

──2つの物語は、赤奏国の政変という事件でクロスします。「茉莉花」には莉杏と暁月が、「十三歳」では茉莉花と珀陽がそれぞれ登場しますね。

石田 「十三歳」は、最初は「暁月と莉杏の物語を書きたい」という気持ちからスタートしたのですが、お話が進むにつれて「茉莉花」で書いた赤奏国編を避けては通れなくなってきて。「茉莉花」の読者さんはすでに1回読んでいるお話ではあるので、どう書くかはすごく悩みました。ただ、あくまでも莉杏の目から見た物語だからこそわかることも入れたい……という中で、今の形になりました。意外と「十三歳」しか読んでない方もいて、新鮮な反応をいただいたりもして。結果的によかったです。

「十三歳の誕生日、皇后になりました。」5巻より。赤奏国の内乱を収めるべく、莉杏はある危険な計画に身を投じることを決意する。

「十三歳の誕生日、皇后になりました。」5巻より。赤奏国の内乱を収めるべく、莉杏はある危険な計画に身を投じることを決意する。

高瀬 「茉莉花」赤奏国編での暁月は、「十三歳」での莉杏から見た暁月とは印象が違って、そこも楽しいです。あとはお話の展開的に珀陽がなかなか出てこなくて、暁月がどんどんヒーローみたいになってしまったので、石田先生に相談して珀陽が茉莉花に会いに来るワンシーンを入れさせてもらいました。

青井 コミカライズでは、「茉莉花」が先行していることもあって、赤奏国編を描いているときは影響を受けすぎないように原作を読んだ印象を大事に作っていました。

──コミカライズでも、赤奏国編はそれぞれクライマックスを迎えました。

高瀬 「茉莉花」では、茉莉花がラストで朱雀とともに飛ぶシーンは、原作を読んでいるときからずっと「ここを絶対にカラーで描きたい!」という思いがありました。だから実際に描けて感慨深かったですが、朱雀を描くのがめちゃくちゃ大変でつらくもありました……(笑)。

石田 最高でした(親指を立てる)。

「茉莉花官吏伝~後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ~」第28話の見開きカラーページ。

「茉莉花官吏伝~後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ~」第28話の見開きカラーページ。

中華ファンタジーが読者を夢中にさせる理由

──ちなみに、秋田書店にはほかにもたくさんの中華ファンタジー作品があります。秋田書店発の中華ファンタジーでお好きなタイトルはありますか?

石田 月刊プリンセスで連載中の、もすこ先生の「咲き還り姫の葬歌~捨てられた花は復讐に舞う~」を、毎月ドキドキしながら読んでいます。最初に思っていた話とどんどん違う展開になっていって驚きますし、恋のお相手もどっちになるのかワクワクする、連載ならではの楽しさを感じています。

高瀬 完結作品ですが、すもももも先生の「後宮デイズ」が大好きです。中華後宮もののおいしいところが詰まっている! 全14巻と大作なのですが、いい意味でスピーディで、キャラの魅力を追いかけているうちに手が止まらなくなる面白さがあるなあと。

青井 初めてプリンセスの誌面を読んだときに印象に残ったのが雪村花菜先生と栗美あい先生の「紅霞後宮物語~小玉伝~」でした。もともと強い女性が好きなのですが、軍人から皇后へ、という設定に惹かれました。栗美先生は今も田中芳樹先生の原作で「白花繚乱-白き少女と天才軍師-」を連載されていますが、画面も華やかで世界観もザ・中華。これが“中華ファンタジー”なんだ!と印象が強いですね。

──中華ファンタジーが読者を惹きつける理由はなんなのでしょうか。

石田 「茉莉花」を書きながらしみじみ思ったのは、中華ファンタジーは陰謀との相性がいいなと。政治や国内情勢で不穏な空気やシリアスな展開を書けますし、後宮などを舞台にすればドロっとした感情や愛情を巡った暗い戦いも書ける。作者としては、中華ファンタジーが好きな読者は物語の中で暗い話題が登場しても、絶対に受け入れてくれるという信頼があります。

──マンガ家さんから見た中華ファンタジーの魅力はどんなものでしょうか?

青井 衣装や髪型、建物など、描けば描くだけ画面が華やかになるのが中華ファンタジーのいいところですよね。そこは手を抜かずにこれからもやっていきたいと感じています。

高瀬 確かに華やかなのが魅力なんですが「茉莉花」の連載がスタートした頃は、中華ファンタジーの素材に使えるような写真やイラストがあまりなくて。自分で中国に旅行した際の写真などをフルに使って描いていました。

青井 実は、高瀬先生の資料にすっごく助けられています!

高瀬 よかった(笑)。最近は中華ファンタジージャンルが盛り上がっていることもあって、素材も増えて、描けることが増えてきた感じはしています。

育っていく気持ち

──最後に、主人公とヒーローの恋愛模様についてもお伺いしたいです。「茉莉花」では敬愛、「十三歳」では家族愛のようなところから、だんだんと恋愛になっていくような印象があります。

高瀬 少しずつ変わっていく、原作の2人の距離感が好きです。それと同時に、茉莉花の周りの男性キャラクターと茉莉花の関係を描くのも楽しいんですよね、恋愛じゃないんだけど、それぞれの意味で茉莉花にとって大事な人になる。巻を重ねるごとに大切な人が増えていくので、誰と茉莉花がしゃべっていても読者さんが楽しい気持ちで読める、それでいて珀陽はやっぱり特別な人という感じを出していきたいです。

「茉莉花官吏伝~後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ~」7巻より。珀陽に率直な思いを伝える茉莉花。その後の珀陽の反応は単行本で確認しよう。

「茉莉花官吏伝~後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ~」7巻より。珀陽に率直な思いを伝える茉莉花。その後の珀陽の反応は単行本で確認しよう。

青井 「十三歳」は、2人がいちゃいちゃするシーンに力を入れつつも、莉杏はやっぱり13歳なので、“生々しさ”は避けようと気をつけています。2人が会話するシーンはベッドの上であることが多いんですが、描きようによってはちょっと危うい感じになる。どこかごっこ遊び的なかわいらしさがある、でも恋愛的なときめきもゼロではない雰囲気を描きたいなと。

石田 そこは、原作でも気をつけているところです。「13歳だから、これ以上はダメ」という自分の中での線引きはかなりはっきりありますね。

青井 「小学生の姪っ子が読んでます」という声をいただくんですよ。その子たちにとっては、莉杏は同年代だったり、ちょっとお姉さんだったりするので、親近感があるんでしょうか。そういう本当に若い読者に読んでもらっているのは印象的です。

「十三歳の誕生日、皇后になりました。」2巻より。「口づけをしてほしい」という莉杏の精一杯のおねだりに、真摯に応える暁月。

「十三歳の誕生日、皇后になりました。」2巻より。「口づけをしてほしい」という莉杏の精一杯のおねだりに、真摯に応える暁月。

──その機微を丁寧に描いているからこそ、本当に幅広い層に届いているんですね。最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

高瀬 原作読者の方にはきっと伝わると思うのですが、ここから先、物語には見どころばかりです! 原作を読んでいたときに頭に浮かんだ絵を形にできるように、がんばって描いていこうと思っています。

青井 これから「書の達人」が出てくるので、その書をどうマンガで描くか今から頭を悩ませています(笑)。大きな試練を超えて無事に帰ってきた莉杏。久々の謎解きや、新キャラ登場などもありつつ、引き続き暁月陛下との関係性を楽しく描きたいなと思っています。

石田 コミカライズではどちらの恋愛模様も成長過程ですが、小説ではもう少し関係が深くなっています。「茉莉花」でラブ要素を心待ちにしている方は、ぜひ原作も読んでいただければと! 原作の「十三歳」は、次の巻で完結。そこでは、皆さんが待っていただいている“恋愛している暁月”をしっかり書きますので、楽しみにしていてくださいね。コミカライズと一緒に応援していただけるとうれしいです。

まだまだ読みたい!
秋田書店オススメの中華ファンタジー6選

「茉莉花官吏伝~後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ~」「十三歳の誕生日、皇后になりました。」以外にも、秋田書店には魅力的な中華ファンタジー作品が揃っている。そこで、月刊プリンセスと月刊ミステリーボニータ編集部がオススメする6作品を以下のリストでご紹介。気になったタイトルは、この機会にぜひチェックしてみよう。


「咲き還り姫の葬歌~捨てられた花は復讐に舞う~」1巻

「咲き還り姫の葬歌~捨てられた花は復讐に舞う~」

もすこ

「咲き還り姫の葬歌」は、戦火に揺れる董国の第三皇女・朱姫を主人公とする中華宮廷ドラマ。姉妹にいびられ続け味方のいない朱姫は、幼なじみの高衛と過ごす時間だけが唯一心の支えだった。しかし父である王の命令により、同盟の材料として敵国の第二王子に嫁がされてしまう。朱姫の政略結婚によって戦は終わるものの、これは彼女の数奇な人生の幕開けだった。

「白花繚乱-白き少女と天才軍師-」1巻

「白花繚乱-白き少女と天才軍師-」

原作:田中芳樹、作画:栗美あい

「銀河英雄伝説」「アルスラーン戦記」で知られる田中芳樹の小説を、「紅霞後宮物語~小玉伝~」で人気を博した栗美あいがコミカライズした作品。時は南北朝時代、北魏と南梁の二国の戦が迫る中、少女・祝英台は兄を探していた。道中で盗賊に追われる祝は、武芸・乗馬は苦手だが戦にはめっぽう強い不思議な青年・陳慶之と出会う。実は彼は朝廷に仕える将軍で……。軍師と少女による、戦と恋の物語が紡がれる。

「後宮香妃物語」1巻

「後宮香妃物語」

原作:伊藤たつき、作画:橘ミズキ

物語の舞台は、香が薬と同じぐらい珍重される神瑞国。絶対嗅覚を持つ主人公・凜莉の父は宮廷の優秀な香士だったが、伝説の“秘宝香”の調香に失敗したとして追放され、事故で亡くなってしまう。父の汚名をそそぐため、“秘宝香”の再現を目指す凜莉だったが、女性は香士になることができない決まり。しかしある日、凜莉に宮廷入りのチャンスが巡ってくる。

「楊貴妃、綺羅羅」1巻書影イラスト

「楊貴妃、綺羅羅」

原案:夢枕獏・天野喜孝・叶松谷、漫画:中澤泉汰

「楊貴妃、綺羅羅」は絶世の美女として名高い楊貴妃こと、楊玉環の物語。洛陽一の美人と謳われる玉環は、その美貌からさまざまな異性を魅了してきたが、本人は未だ愛を知らない娘だった。しかし自身の思いとは裏腹に都の皇子との婚姻を取り付けられ、王宮へと向かうことになり……。6月14日に単行本1巻の発売を控えている。

「榮国物語 春華とりかえ抄」1巻

「榮国物語 春華とりかえ抄」

原作:一石月下、作画:チノク

貧乏官僚の家に生まれた利発な姉・春蘭と、美しい弟・春雷を軸に展開する男女逆転ファンタジー。目鼻立ちがよく似ている2人は、周囲から性別を間違えられることが日常茶飯事で、「姉は美人で有名、弟は利発な有望株」という噂が都まで流れてしまう。そのため春蘭に後宮入りの命が下り、春雷は科挙試験を受けることに。追い詰められた2人は、ある大きな決断をする。

「天上恋歌~金の皇女と火の薬師~」1巻

「天上恋歌~金の皇女と火の薬師~」

青木朋

舞台は今から900年ほど昔の中国・北宋、徽宗の治世。金国の皇女・アイラは王族を代表し、親善大使として宋の都を訪問することになった。その道中刺客に襲われたアイラは、助けてくれた宋の花火職人の凛之にひと目惚れ。しかしその頃アイラには、宋の第九皇子・康王との縁談話が持ち上がっていて……。敵国・遼との戦いや皇帝の跡目争いなど、さまざまな出来事に巻き込まれていくアイラの波乱万丈な運命が描かれる。

プロフィール

石田リンネ(イシダリンネ)

2011年に「おこぼれ姫と円卓の騎士」が「エンターブレインえんため大賞」の「第13回ガールズノベルズ部門 二期」にて優秀賞を受賞。同作は翌2012年に文庫化された。主な著作に「茉莉花官吏伝」「十三歳の誕生日、皇后になりました。」のほか、「神さまになりまして、」「女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け」などがある。

高瀬わか(タカセワカ)

2018年にヨルモ名義の読み切り「cigarette kiss」でデビュー。同年より月刊プリンセス(秋田書店)で「茉莉花官吏伝~後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ~」のコミカライズ連載をスタートさせる。現在ウルトラジャンプ(集英社)にて「みーちゃんは飼われたい」、となりのヤングジャンプ(集英社)にて「姉のともだち」を連載中。ほか著作に「かわいすぎる男子がお家で待っています」などがある。

青井みと(アオイミト)

2020年から月刊プリンセス(秋田書店)にて「十三歳の誕生日、皇后になりました。」のコミカライズを担当している。マンガアプリ・Palcyにて「オタ友が彼氏になったら、最高、かもしれない」連載中。そのほかの著作には「花、むすぶ君へ」「今宵、怪人とティータイムを」「ぜんぶ先輩のせいだ。」などがある。