ナタリー PowerPush - YUKI
歌うたびに幸せな気持ちになれる「2人のストーリー」
2010年のYUKIは、精力的な活動を展開している。3月に5thアルバム「うれしくって抱きあうよ」をリリースした後、6月に日本屈指のコンサート会場であるオーチャードホールでたった2日間のプレミアムライブを実施。そして、現在はYUKIソロ史上最大規模となるライブツアー「YUKI concert tour 2010 "うれしくって抱きあうよ"」で全国を巡回中だ。
そんなYUKIから約7カ月ぶりのニューシングル「2人のストーリー」が到着。この作品について、彼女に話を訊いた。
取材・文/松浦靖恵
私の歌がみんなの大切な歌になってくれたらとてもうれしい
──7月からスタートして9月末まで続く全国ツアーで、すでに「2人のストーリー」を歌っているそうですね。
全国のみなさんに「2人のストーリー」を思いっきり抱きしめてもらっています(笑)。今回のツアーは、エンタテインメントとしてどこまで人を楽しませることができるんだろうということを毎日考えながら日々前進しているツアーなので、そのツアーの中で新曲をみなさんに届けられることがとてもうれしいんです。それに、歌うたびに幸せな気持ちになれる曲なんですよ。
──リリース前に新曲を聴くと、聴き手はその曲に関する情報を知らない分、どんな歌詞なんだろう? って耳を傾けてしまいます。
言葉でたくさん説明していない分、「よくわからないけどなんか好きだなぁ」とか「そんなに好きじゃないかも」とか(苦笑)、曲を聴き手が感覚的につかむことができるんですよね。私、そういう歌を歌いたいんです。それこそ、「なんでYUKIが同棲の歌を歌うんだろう?」「なんで男性目線の歌詞なんだろう?」って、「2人のストーリー」を聴いた人があれこれ想像してくれたらいいなぁって。
──あれこれ想像をふくらませると、YUKIさんから届けられた歌が、どんどん自分のものになっていくんですよね。
そんなふうに、私の歌がみんなの大切な歌になってくれたらとてもうれしいです。小・中学生の頃、お茶の間で昭和の歌謡曲を聴いていた私が、なぜあそこまで歌や音楽と近い距離にいられたんだろうって考えたんです。それは、歌詞から情景が浮かんだり、知らない単語が出てきたら調べたり、いろいろな想像をふくらませたりしていたから、曲と仲良しになれたんだろうなって。私は音楽の力を信じているんですね。もし、音楽が必要とされない時代が訪れたとしても、音楽が持つ力が衰えるなんてことは、この先ずっとないと思っているんです。どんなツールを使って音楽を受け取るようになったとしても、一生懸命作った音が圧縮された音質で聴かれても、音楽の持つ豊かさは圧縮されないんです。あ! 私、今、すごくいいこと言っちゃいましたね(笑)。そうなんです。圧縮されても音楽は決して劣化しない。逆に、音楽の温もりがこれからどんどん必要になってくると思っているんですよ。
私が今言いたいことがズバッと言えた
──カップリングの「あの娘になりたい」は、ちょっぴりオリエンタルな雰囲気を持っている曲ですね。
百田留衣くんが弾いてくれたギターが、すごくいい雰囲気を作ってくれました。この曲は、アルバムに入っているちょっとした曲というイメージですね。アナログレコードのB面にある感じのような。 この1曲だけ、なんかアルバムの中で毛色が違うよね、っていうポジションにありそうな曲です。「なんだか理由はわかんないけど、なんなの? この感覚は!?」っていうのを、この曲は持っているんじゃないかな。私は今、ゆるい曲が作れないんです。"ゆるい"っていうのは、ただ心地良く流れる曲、ということなんですけど。どんな細かいところも聴き流すことができないような、どこか気になる歌を作りたいですね。
──ところで、歌詞の「♪本当の気持ちよ走れ」は、まさに今のYUKIさんのことなのでは?
そうなんです!(笑) この言葉が出てきたとき、私が今言いたいことがズバッと言えたなと思いました。「走り続けている私を邪魔するな」という強さが、そこで出せたんです。
──そして3曲目はアルバム「うれしくって抱きあうよ」の1曲目に収録した「朝が来る」のリアレンジバージョンです。
はい、配信限定でリリースした「朝が来る ~Tune in to a new world ver.~」です。原曲と聴き比べてみると、脳裏に浮かんでくる映像がずいぶん変わるので、まるで別の曲のように思えて面白いと思います。
YUKI(ゆき)
1972年生、北海道出身の女性シンガー。1993年にJUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001年の解散までに、数々のヒット曲・名アルバムを発表する。また、1999年のバンド活動休止中にはTHE B-52'Sのケイト・ピアソンらとスペシャルバンド「NiNa」にシンガーとして参加。さらに2001年にはCHARAやちわきまゆみらとガールズバンド「Mean Machine」を結成し、ドラマーを務めた。2002年にシングル「the end of shite」で本格的なソロ活動をスタート。バンド時代と異なり、先鋭的なサウンドと前衛的なビジュアルで唯一無二の世界観を確立した。2007年10月には、ソロ活動5周年を記念したベストアルバム「five-star」がオリコンウィークリーチャート1位を獲得している。