ナタリー PowerPush - やなぎなぎ

私が歌いたい 感情になる前の“何か”

やなぎなぎがニューシングル「三つ葉の結びめ」をリリースした。

「三つ葉の結びめ」の表題曲はアニメ「凪のあすから」の後期エンディングテーマ。やなぎは前作「アクアテラリウム」に引き続き、このアニメのエンディングテーマを手がけることとなった。しかし本作は自閉した世界を歌った「アクアテラリウム」から一転。やなぎの言葉を借りるなら「とにかくサビで視界が広がる明るい曲」に仕上がっている。「凪のあすから」という1つのアニメをモチーフにまったく別の表情の楽曲を作った理由とは? やなぎに話を聞いた。

取材・文 / 成松哲

 
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視界が広がる明るい曲

──今回のシングル曲「三つ葉の結びめ」の作・編曲は、アニメ「凪のあすから」の劇伴も作っている出羽良彰さん。やなぎさんがアニメの音楽スタッフと共作するのは1stシングル「ビードロ模様」の作家で、その表題曲がオープニングテーマになっていたアニメ「あの夏で待ってる」の音楽班でもあったI'veと組んで以来ですよね?

はい。ただ、アニメの音楽をやっているのでアニメの世界観をよくご存じだっていうのも今回出羽さんとご一緒させてもらった理由の1つなんですけど、それ以前からamazarashiの曲で出羽さんの音を聴いていたので。「凪のあすから」の音楽も出羽さんなんだっていうことはあとから知った感じなんです。それで次の曲は出羽さんとご一緒できたら面白いんじゃないか、っていうことでお願いさせてもらいました。

──ただそれはそれでけっこう不思議なんです。2クールめの「凪のあすから」ってまさに物語が佳境に突入しつつあるというか、けっこうな展開になってるじゃないですか。

そうですね。

──ところが「凪のあすから」の劇伴作家・出羽さんと、1クールめの1クールめのエンディング曲「アクアテラリウム」を歌ったやなぎさんが共作した「三つ葉の結びめ」はどこかポジティブ。出羽さんのサビのメロディには開放感があるし、やなぎさんの詞も「期待の止まない先へ あすへ行こう 希望乗せて行こう」と言っている。でもだからこの曲はストレートに「凪のあすから」を歌ったものなのか? それともアイロニーなのかな?って。

もちろん作品からインスピレーションを受けた面もあるんですけど、最終的には私の願望が出た感じですね。前回のシングルの「アクアテラリウム」が断絶された世界の中のことを歌った曲だったので、「アクアテラリウム」を作ったそのあとすぐくらいから「次は外に向かう曲がいいな」「希望をもてる曲がいいな」とは思っていました。希望のもてない私もいるし、希望をもっている私もいる。どっちの私もいるんだよっていうことで(笑)。それで周りの力を借りつつであっても外側へ向かって行こうっていう曲を作りたかったので。なので出羽さんにも最初に「とにかくサビで視界が広がる明るい曲がいいです」ってお願いをしていて。そうしたら返ってきたのが、すごく聴きやすいアニメソングらしいアニメソングだし、サビはお願いした通りすごく視界が広がる感じになっていて。でもBメロのバッキングのメロトロンっぽい音なんかは本当に出羽さんらしいメロディとアレンジだったんです。

石川智晶がやなぎなぎに残したもの

──これまでのインタビューを振り返ってみるに、やなぎさんはいい意味で本能に従っているというか(笑)、「前の曲がこういうテイストだったから、こういう曲を作ろう」という作り方は……。

してないですね(笑)。自分の中の感情の波というかバイオリズムみたいなものに従っていろんな自分が出てくる、っていう曲の作り方をしている気がします。

──でも今回は前作を意識している。

「アクアテラリウム」はけっこういろいろなことを考えさせられる楽曲だったので。

──「考えさせられる」?

それまでのシングルではいわゆる“作家”さんに曲を書いてもらっていたんですけど、「アクアテラリウム」の作曲は石川智晶さんっていう1人のアーティストさんだったので。アーティストさんと1対1でやりとりして曲を作ったっていうことが、自分の中ではけっこう大きな出来事だったんです。「アクアテラリウム」のカップリングを作っているときにも、そのやりとりに影響されていた部分はありますし、だから「三つ葉の結びめ」を作るときにもこうやって影響が出た、って感じですね。

──そして先ほども少し触れた詞なんですけど、これを読む分に、不思議になった一方で、今はけっこうな状況に置かれている「凪のあすから」のキャラクターたちだけどいずれ幸せになれるのかな?って気もしたんですよ。

ふふふふふ(笑)。アニメがどうなるかはちょっとわからないですね。

──知っていたところで、そんなネタバレ情報教えてくれるわけがないですよね(笑)。

はい、秘密で(笑)。ただ「三つ葉の結びめ」に出てくる、この人たちは捉えようによっては幸せなのかもね、っていう感じですね。

──「希望乗せて行こう」と歌ってはいるけど、それほど「イエーイ!」っていうテンションではない?

なんか「イエーイ!」になる前の感情ってやっぱりあるじゃないですか。人は“何か”が起きて初めて「イエーイ!」になるというか。「三つ葉の結びめ」ではその「イエーイ!」が起きるための“何か”や、“何か”が起きたことで気持ちが分岐していく瞬間のことを歌っていて。だからその“何か”が起きたら、詞の中のこの人たちみたいに「希望乗せて行こう」って思える人もいろだろうけど、ある人にとってはその“何か”がとんでもないくらいテンションが落ちるものであるかもしれない。なんかそういう“何か”の曲なんです(笑)。

ニューシングル「三つ葉の結びめ」/ 2014年2月19日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
初回限定盤 [CD+DVD] 1680円 / GNCA-0325
通常盤 [CD] 1260円 / GNCA-0326
CD収録曲
  1. 三つ葉の結びめ
  2. インテンション・プロペラント
  3. unjour
  4. 三つ葉の結びめ(instrumental)
  5. インテンション・プロペラント(instrumental)
  6. unjour(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「三つ葉の結びめ」PV
やなぎなぎ

関西出身の女性シンガーソングライター。2006年からライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始する。動画投稿サイトに数多くのカバー楽曲を公開して注目を集め、「君の知らない物語」をはじめとするsupercellの楽曲にnagi名義でゲスト参加したことでも話題となった。繊細かつ透明感あふれる歌声と、印象的な楽曲の世界観が幅広い層から支持される。2012年2月、テレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーソロデビュー。同曲はオリコンCDシングル週間ランキング11位にランクインした。以来、アニメ「ヨルムンガンド」のエンディングテーマ「Ambivalentidea」、「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のエンディング曲「ラテラリティ」、「AMNESIA」のオープニングテーマ「Zoetrope」、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のオープニングテーマ「ユキトキ」を立て続けに発表。2013年7月には1stアルバム「エウアル」を発売。2013年11月にはアニメ「凪のあすから」の前期エンディングテーマ「アクアテラリウム」を、2014年2月には同アニメ後期エンディングテーマ「三つ葉の結びめ」をリリースした。