ナタリー PowerPush - やなぎなぎ
裏と表の気持ちをつなぐ 1stアルバム「エウアル」完成
やなぎなぎがアルバム「エウアル」を7月3日にリリースする。
「エウアル」は文字通り“待望の”1stアルバム。昨年2月のデビュー以来、わずか1年のうちに5枚のシングルをリリースしてきたやなぎのもとには、アルバム制作を望むファンとメディアの声が多数寄せられていたという。そしてついにリリースされた本作において、彼女はこれまで歌い続けてきた自身のテーマをさらに深化。ときには宮川弾ら外部クリエイター陣とタッグを組み、ときには自らの手で、誰しも抱える裏表(うらうえ)の気持ち、背反する感情を14の楽曲を通じて追いかけている。
猛スピードで駆け抜けた1年間の集大成「エウアル」とはどんな作品なのか? その魅力をやなぎに大いに語ってもらった。
取材・文 / 成松哲
「そろそろアルバムを出さないんですか?」
──以前やなぎさんは「シングルを発売する度に『アルバムはいつですか?』とご質問をいただいていた」ってコメントしていましたよね。ナタリーもその一員というか、過去のインタビューで思いっきり聞いちゃってるんですけど、ファンからもやっぱりそういう声が?
イベントのときとかに「そろそろ出さないんですか?」みたいなことはけっこう聞かれましたね。「5枚もシングルが出てるんだから、さすがにそろそろアルバムなんじゃない?」って思っていただいたみたいで。でもまだデビュー1年ちょっとなんですよ。
──実はそうなんですよね。しかもシングルのカップリングは基本的に自身の書き下ろし。つまり1年で5枚のシングルのレコーディングをしつつ、最低4~5曲は新曲を書いていた。だからナタリー含め、よくもまあみんなして、忙しくしているやなぎさんに向かって「早くアルバム出せよ」だなんて言ったもんだなあ、と(笑)。
ふふふふ(笑)。この1年もそうだし、アルバムを作っているときもそうなんですけど、確かに忙しくはありましたね。「アルバムを作ろう」みたいな話は「Zoetrope」の頃(2013年1月)からあったんですけど、その頃には次のシングルの「ユキトキ」の制作もあったし、もちろんアルバムについていろいろと考えることもあったし。それにアルバム用の新曲の中にはスムーズに作れたものもあれば、3、4回作ってはまたやり直し、みたいなことを繰り返したものもあったしって感じで、結局ギリギリまでドタバタとやってました。
やなぎなぎの考えるフルアルバム像
──でも「エウアル」って、その慌ただしさを感じさせない作品ですよね。アルバムにも収録されている5つのシングル曲ってキラキラ青春ポップの「ビードロ模様」からBPM200超えのヘヴィロック「ラテラリティ」まで……。
いろんな要素が入りまくってる感じで(笑)。
──さらにやなぎさん書き下ろしのエレクトロニカ、アンビエント由来の楽曲も収録されているのに、構成がスマートなんですよ。ROUND TABLE北川勝利さんの書いた「ユキトキ」と宮川弾さんの「青のパレード」というスタイリッシュな2曲から始まって、中盤戦は「concent」「helvetica」と……。
だんだん落ち着いていく感じになっていって。
──ええ。やなぎさんの手による抽象度の高い楽曲につながって、表題曲「euaru」が終わったら……。
「ここからまたスタートした」みたいな感じに(笑)。
──ですね(笑)。「Zoetrope」や「ラテラリティ」で盛り上がりのピークを作っておいて、その後ポストクラシカル系のアレンジャー小瀬村晶さんのピアノ曲「トランスルーセント」あたりを美しく響かせつつ、また「ビードロ模様」でポップな世界に帰ってくる。すべての曲が大胆かつスムーズにつながっています。
いろんなアルバムを聴いていると最初のほうにガンガン攻める曲を置いて、最後しっとり終わらせる人が多い気がするんですけど、個人的に最初に攻め曲がいっぱいあると後半戦に入ったときちょっと疲れちゃうんですよ(笑)。だから序盤は盛り上がりよりもキャッチーさとか楽しさを追求した曲を集めて、そのあとに攻める曲を置く並びにしたほうが、聴く方もテンションを保てるんじゃないかと思って。
──しかもこの構成だと既発曲にも新しい発見があって。メロウなエレクトロニカの「euaru」のあとに「Zoetrope」を聴くとギャップが大きいからシングルで聴くとき以上にアガるし、「トランスルーセント」から続く「ビードロ模様」はちょっとセンチメンタルな響きになるし。「やなぎなぎって、いいつなぎをするDJだなあ」って感じで。
ありがとうございます(笑)。曲順を決めたのはレコーディングが7割くらい終わってからなんですけど、シングル曲が5曲とも種類が違いすぎるし、どれも内容が濃かったので、ほかにどういう曲を配置して、どういうふうにバランスを取ろう?みたいなことはずっと考えていて。あと「本当」から始まって「嘘」で終わって「euaru」が真ん中にあってっていう大まかな構成は最初から一応頭にあったので。
- ニューアルバム「エウアル」 / 2013年7月3日発売 / ジェネオン・ユニバーサル
- 初回限定盤 [CD2枚組+Blu-ray] 4410円 GNCA-1376
- 初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 4200円 / GNCA-1377
- 通常盤 [CD] 3150円 / GNCA-1378
CD収録曲
- 本当
- ユキトキ
- 青のパレード
- concent
- helvetica
- Ambivalentidea
- euaru
- Zoetrope
- ラテラリティ
- ストレンジアトラクター
- クオリア
- トランスルーセント
- ビードロ模様
- 嘘
初回限定盤ボーナスCD収録内容
- Agape(メロキュア)
- 1/2(川本真琴)
- 恋愛サーキュレーション(千石撫子[花澤香菜])
- light prayer(School Food Punishment)
- アンインストール(石川智晶)
- Swallowtail Butterfly ~あいのうた~(YEN TOWN BAND)
- カゼノトオリミチ(堀下さゆり)
※カッコ内はオリジナルアーティスト
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
- これまでのシングル表題曲の為に制作したグラフィックによるプロモーション映像
やなぎなぎ
関西出身の女性シンガーソングライター。2006年からライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始する。動画投稿サイトに数多くのカバー楽曲を公開して注目を集め、「君の知らない物語」をはじめとするsupercellの楽曲にnagi名義でゲスト参加したことでも話題となった。繊細かつ透明感あふれる歌声と、印象的な楽曲の世界観が幅広い層から支持される。2012年2月、テレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーソロデビュー。同曲はオリコンCDシングル週間ランキング11位にランクインした。以来、アニメ「ヨルムンガンド」のエンディングテーマ「Ambivalentidea」、「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のエンディング曲「ラテラリティ」、「AMNESIA」のオープニングテーマ「Zoetrope」、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のオープニングテーマ「ユキトキ」を立て続けに発表。そして2013年7月、1stアルバム「エウアル」をリリースする。