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新境地へと踏み出す一歩 15周年カバーアルバム「KABA」

家族との対話やコミュニケーションが自分にとっての“本番”

──レコーディングにはあいかわらずすごいメンバーが揃いましたよね。

インタビュー写真

うん、私にとっては本当にもうベストな人たち。

──この人たちにまかせておけばなんとかなるだろう、みたいな。

そうなの。ほんとに。

──アレンジもメンバーのアイデアを生かして?

うん、サウンドは、もともとはもうちょっとアコースティックで、もっとシンプルでもいいかなって思ってたくらいだったんだよね。でもやっぱりみんな第一線のエッジの効いた人たちなんで、みんなトンチを効かせてくるっていうか。結果、サウンド的に展開があって、自分でも楽しめるものになりましたよね。

──サウンドも歌も自然にまとまっていったという感じですかね。

まあね、無理はしてないですね。だから基本は「できることしかできんわあ」っていうスタンスで。そう、あんまり勉強してる時間もなければ、趣味の時間もありゃしない。家いるときは家のことやってるばっかりの毎日だし、だからほんと申し訳ないぐらい考えてないっていう(笑)。だから選曲だね、とにかく。あと誰に頼むかっていうとこにちょっと意識を強く働かせたぐらいで。あとは現場よね! 現場勝負で。

──なるほど(笑)。その感覚は、これがカバーアルバムだったから生まれたものですか? それともUAさん自身のスタンスの変化なんでしょうか?

んー、オリジナルアルバムだったらまた違うのかもしれないけど、でも自分自身が変わってきてるっていうのはあるでしょうね。自分にとっての“本番”は家庭なんだっていう思いはやっぱりある。家庭っていうか家族との対話とかコミュニケーションこそ、本当にスイッチ入れてやるべきことで。まあ音楽とは全然違うところにあるスイッチですよ。でも違うけれども、すごくエネルギーが要ることで、繰り返される毎日こそが一番難しい表現なんじゃないかと思うしね。

歌手として自分が長く歌っていくために

──家庭が“本番”っていうのは面白いですね。じゃあ今は、以前に比べて生活とか日常っていうものの比重が大きくなってきた?

うん。もちろん私も目に見えない世界、文章もそうだし音もそうだけど、想像の世界を形にするっていう、そういうことでもって今まで生きてきてるわけだし。でもそれだけだとやっぱお母さんっていうのは不安なもんですよね。だから私生活を充実させるのが第一で。私の今の人生では、そっちがもうメインなんだよね。だから音楽に関しては、もう楽しんでやるのが大切。楽しまなきゃやってられないですよ。

──ああ、家庭を充実させて、音楽も全力でっていうことになると……。

両立できない。こんな無責任なこと言っていいのかなって気もするけど(笑)。だけど本当に、歌手として自分が長く歌っていくためには、そうしないといけないって心から思ってるんですよね。15年やってきて思った。

──多分10年前、15年前のUAさんはそうじゃなかったですよね。やっぱり100%歌い手で、全身で表現をすることが大事で、それがすべてみたいに見えてたんですけど。

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まあね、そういうとこはあったかもね。あのね、もともと生まれ持った気質として、やるからにはめっちゃやらないとやった気がしないところはあるの。そして、歳をとるほどに自分の素質って浮き彫りになってくるわけで、うん、だからほとんどのことが苦手よね、今の私は。

──え、苦手って何が?

いろんなこと! お裁縫だったりとか、コンピュータも苦手。テクノロジーも苦手。もうほんっと苦手なことばっかりの中でお母さんやってて、でも必死なわけですよ、1個1個がもう。だからその感じは変わってないの。ただ歳をとったし、力の配分も覚えたし、なんでもかんでも本当にスイッチ全開でやってたらヤバいでしょ。

──そうですね。

で、まあマドンナみたいに体鍛えてたりとかすりゃあ、またちょっとは違うと思うけど、そんながんばり屋さんでもないわけよ。だから、そうは見えないかもしれないけど、これでも自分なりにベストを尽くしてやってるんですよ(笑)。

カバーアルバム「KABA」 / 2010年6月23日発売 / 3150円(税込) / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-63627

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CD収録曲
  1. モンスター(ピンク・レディー)
  2. 夜空の誓い duet with 甲本ヒロト(HIS)
  3. きっと言える(荒井由実)
  4. 買い物ブギ(笠置シヅ子)
  5. セーラー服と機関銃(薬師丸ひろ子)
  6. Day Dreaming(アレサ・フランクリン)
  7. Under the Bridge(RED HOT CHILI PEPPERS)
  8. Paper Bag(フィオナ・アップル)
  9. わたしの赤ちゃん(七尾旅人)
  10. Hyperballad(ビョーク)
  11. Love Theme from 'Spartacus'(映画「スパルタカス」より)
  12. 蘇州夜曲(渡辺はま子、霧島昇)
  13. No Surprises(RADIOHEAD)
  14. 妖怪にご用心(中山千夏)
  15. tiru-ru-shi(こやまよしこ)

アーティスト写真

UA(うーあ)

1972年大阪生まれ。1995年にシングル「HORIZON」でデビューし、1996年発表のシングル「情熱」でブレイク。同年発売のアルバム「11」は90万枚を超える大ヒットを記録する。以後、ソウル、ジャズ、レゲエなど、ジャンルにとらわれないナンバーを幅広く歌い、その圧倒的な歌唱力と存在感でトップアーティストとしての地位を確立する。2000~2001年には浅井健一らとロックバンドAJICOを結成して活躍。2003年にはNHKの教育番組に「うたのおねえさん」としてレギュラー出演し、さらに2006年には菊地成孔とジャズのコラボレーションアルバム「cure jazz」をリリース。映画「水の女」「大日本人」にも出演し、女優としてもその才能を発揮している。