ナタリー PowerPush - UA
新境地へと踏み出す一歩 15周年カバーアルバム「KABA」
清志郎のスピリットはみんなの心にある
──「夜空の誓い」では甲本ヒロトさん(ザ・クロマニヨンズ)とのデュエットに挑戦していますよね。これはどういう経緯だったんですか?
もうこの歌は、普通に大好きだったのね。それで、ヒロトくんはフジロックで清志郎のトリビュートのときにいたっていうのもあるし、何にしても私もめっちゃファンだったし、ブルーハーツの頃からね。声が好きなの、彼の発声の仕方、歌い方っていうか、きちっとした美しい日本語の感じ。だから他の人と歌うっていうのは考えつかなかったよね。
──この曲を聴いて、清志郎さんの後を継ぐ人っていうのがもしいるとしたら、それはヒロトさんなのかなって気がしたんですよね。
いやあ、それはまっぴらごめんだと思うよヒロトくんは(笑)。荷が重いし、世代が違うし。
──なるほど。誰も清志郎さんにはなれない。
そうそう、清志郎のスピリットはみんなの心にあると思うの。それであんなほんとに神様になっちゃう人っているんだなって、このこと自体がもうすごいメッセージっていうか、不思議な人だよ。鳥肌が立っちゃう。別に音楽の場所に限らず私は感じるんだよ、清志郎の存在を。みんなの心に本当に住んでる。ほんとに神様になったっていうか。すごいよね。
ダクソフォンの音を90チャンネル重ねてる
──あと「この曲のここを聴いてほしい」みたいなのってありますか?
「Hyperballad」のね、私の歌は割と平凡だなって思ってるんだけど、オケがすごい。ダクソフォンっていう楽器を90チャンネル重ねてるっていう。これはちょっともう無敵のアレンジだろうと思いますね。
──ダクソフォンっていうのはどんな楽器?
ダクソフォンは完全にマニアックな、世界に8台しかないっていう楽器なんですけど。木をこうシェービングしていろんなかわいい形のね、鳥とかブーメランとかいろんな形の木でできてて。それを挟んでその木を弦楽器の弓で弾くの。で、そのバイブレーションの「ホォ?」とか「プゥ?」とかっていう音に音階があって、内橋くんはもう類稀な音のセンスを持ってるので、それが90回重ねられてるっていう。
──へえー。
しかもこれキーを変えさせちゃって、実は180回やってるんだよね(笑)。キー違いで2テイク作ってもらっちゃったんですよ。最初はビョークと同じキーでやろうと思ってたんだけど、それだと高くてめちゃくちゃ張るんだよね。で、あんまりそんなエクストリームな感じも違うかなと思って「半音下げて」って依頼したから合計180回。
──気が遠くなりますね……。
でもね、彼は半音下げてるつもりだったんだけど、できてみたらなぜか1音下がっちゃってたの。で、それを知らないで「こんなに変わるんだー!」とか思いながら歌って、後から「ごめん……、あれ1音下がってたわ」って言われてめっちゃびっくりした(笑)。いい感じになったからよかったんだけど。
ライブしないと音楽してるって感じがないんだよね
──さて、今年はデビュー15周年になるわけですが。今後の予定は?
ライブは年間通してやるつもり。ただツアーみたいのは今はちょっとしんどいからやらない。なんとなく私の中ではまだ産後の肥立ちが完全に上がってないっていうかね。だから呼ばれたところで少しだけやるっていう感じで。
──ライブへの意気込みはいかがですか?
そうね、レコーディングはしてたけど、やっぱりライブしないと音楽してるって感じがないんだよね。家では歌ってるんだけど、テンションとかもぜんぜん違うしね。人の前でやらないとやったことにならない部分もあって。だからライブ楽しみですよ。ライブで鍛錬するっていうのが今の私には必要だと思うので。
CD収録曲
- モンスター(ピンク・レディー)
- 夜空の誓い duet with 甲本ヒロト(HIS)
- きっと言える(荒井由実)
- 買い物ブギ(笠置シヅ子)
- セーラー服と機関銃(薬師丸ひろ子)
- Day Dreaming(アレサ・フランクリン)
- Under the Bridge(RED HOT CHILI PEPPERS)
- Paper Bag(フィオナ・アップル)
- わたしの赤ちゃん(七尾旅人)
- Hyperballad(ビョーク)
- Love Theme from 'Spartacus'(映画「スパルタカス」より)
- 蘇州夜曲(渡辺はま子、霧島昇)
- No Surprises(RADIOHEAD)
- 妖怪にご用心(中山千夏)
- tiru-ru-shi(こやまよしこ)
UA(うーあ)
1972年大阪生まれ。1995年にシングル「HORIZON」でデビューし、1996年発表のシングル「情熱」でブレイク。同年発売のアルバム「11」は90万枚を超える大ヒットを記録する。以後、ソウル、ジャズ、レゲエなど、ジャンルにとらわれないナンバーを幅広く歌い、その圧倒的な歌唱力と存在感でトップアーティストとしての地位を確立する。2000~2001年には浅井健一らとロックバンドAJICOを結成して活躍。2003年にはNHKの教育番組に「うたのおねえさん」としてレギュラー出演し、さらに2006年には菊地成孔とジャズのコラボレーションアルバム「cure jazz」をリリース。映画「水の女」「大日本人」にも出演し、女優としてもその才能を発揮している。