ナタリー PowerPush - 鶴
アフロ卒業間近! ウキウキ&切なさの伝道師の本音
特大のアフロヘアをトレードマークに、全国のライブハウスを熱く盛り上げているスリーピースバンド、鶴。彼らがメジャー2枚目となるミニアルバム「ハートの磁石」をリリースする。今作は、これまで音源化されていなかった過去の名曲が詰まった完全生産限定盤で、彼らが結成当時から貫いてきた音楽性を堪能できる仕上がりとなっている。
さらに鶴は、来年春にアフロを引退することを発表! 結成から8年、苦楽を共に歩んできたアフロと、なぜ決別しなければならないのか。その理由と現在の心境をメンバー3人に訊いた。
取材・文 / 田島太陽 インタビュー撮影 / 中西求
当時は「楽しい」が全てだった
──今回のミニアルバムでは、かなり古い曲を音源化したそうですね。なぜこのタイミングで?
秋野温(Vo, G) 特に深い理由はなかったんですけど、アフロをやめるという節目でもあるし、今ある曲は全部世に出そうかと思ったんですよね。2曲目から4曲目は鶴の結成直後くらいに作った曲ですね。
──作った当時のことは覚えてますか?
秋野 20代前半の頃なので、ほとんど忘れちゃってるんですよ。でも今聴き返すと「若いな!」って思いますね。変わった部分もあれば、変わってない部分もあって。
──どんな部分が変わりました?
秋野 当時は「楽しい」が全てで、今ほど深く物事を考えてなかった。それは良いことだし、必要なことだったとも思うんです。でも今は、それプラス人間らしいことを考えるようになったかな。
──収録曲は作詞作曲が「鶴」名義のものが多いですよね。どんなプロセスで制作するとこうなるんでしょう?
秋野 テーマだけ決めて、みんな同時に歌詞を書き始める。それで、でき上がったらみんなで回し読みしてまとめます。昔はよくファミレスでやってたんです。
──1人で書くのとはテイストも変わりますか?
秋野 1人のほうが、伝わりづらくても深い歌詞になりますね。みんなで書くと、広く浅い歌詞になっちゃう。だったら言いたいことのある人が自分の言葉で書いたほうがいいだろうということで、最近はあまりやらなくなりました。
──今回収録されている曲は、どんなテーマで書いたんですか?
笠井快樹(Dr) 「僕らが主役のストーリー」なんかは「同窓会に行ったときの気持ち」みたいなことだったよね。
秋野 そうそう。「エンディング感」とか「泣き笑い感」とかね。そんなテキトーなテーマだった。しかもでき上がった曲はだいたい関係ない歌詞になるっていう(笑)。
──例えば4曲目は、なぜこの歌詞でタイトルが「ニャン」なんですか?
笠井 それは猫目線の曲なんです。
──あー!
秋野 あれ、わかりませんでした?
笠井 ちょっと普通とは違う歌を作りたくて、神田くんがちょうど猫を飼ってたから、これだ! と。そんな軽い気持ちで書いてたんですよね、当時は。
秋野 今はもうこの曲はライブでは歌いづらいなあ。さすがに気持ちが入らないよ、猫目線じゃ(笑)。
やっぱり歌謡曲って最高
──デビュー前はTHE YELLOW MONKEYが好きで、よくコピーもしてたそうですね。今ではずいぶん色の違うバンドになっていますが、バリバリのロックバンドを目指していたわけではないんですか?
秋野 どんなバンドになりたいというより、音楽をやりたいって気持ちが先行してたんですよね。
笠井 楽器が遊び道具で、曲作りはオマケというか。
秋野 イエモンは本当に好きだったけど、鶴を始めた頃はギターロックとかUKロックと呼ばれるものが特に多くて、みんな同じに見えたんですよ。みんなGRAPEVINEだな、みたいな。
神田雄一朗(B) とは言いつつ僕らGRAPEVINEも大好きなんですよ!(笑)
秋野 そうそう。大好きだけど、じゃあ自分たちがなれるかというと、やっぱりちょっと違うんです。そのアンチ根性が少しずつ出てきて今みたいになったのかな。
──カッコいいとは思ってても、マネはしたくなかったんですね。
秋野 いや、多分マネすらできなかったんですよ。カッコいいけど、自分らがやりたいのはこれじゃないって思った。
笠井 ギターロックもいいけど、自分は“ザッツJ-POP”みたいな、みんなが歌えるポピュラーソングがやりたかった。山下達郎とかDEENみたいな王道に憧れがあるんです。
神田 僕は家族全員がCHAGE and ASKAが大好きな上に、姉がTHE ALFEEのファンクラブに入っていて、しかも親父が演歌好きだったんです。だから子供の頃からずっと王道のポップソングを聴いて育ったんですよ。
秋野 俺もいまだにCHAGE and ASKAはしょっちゅう聴くね。iPodで一番再生回数多いんじゃないかな。偏ってる音楽もカッコいいんだけど、自分が歌うとなるとなぜか真ん中に行きたくなる。歌謡曲ってやっぱり最高だもん。超気持ちいいですよ。
CD収録曲
- ハートの磁石
- 僕らが主役のストーリー
- ひとりごと
- ニャン
- 横顔
DVD収録内容
- 「IingNingGing(イングニングギング)TOUR ~今までありがとう~」名古屋ダイヤモンドホール映像(5曲)
鶴(つる)
埼玉県鶴ヶ島西中学出身の秋野温(Vo,G)、神田雄一朗(B)、笠井快樹(Dr)によって、2003年に結成。「ウキウキ&切なさの伝道師」を名乗り、精力的にライブ活動をスタート。メンバー全員がアフロヘアという個性的なルックスと確かな演奏力が話題となる。2004年には1stアルバム「素敵CD」をリリース。全国的な音楽活動を展開し、2008年にシングル「恋のゴング」でメジャーデビューを飾る。歌心あふれる独自のロックチューン、アフロとキモシャツの70年代ファッション、観客を巻き込むライブパフォーマンスで多くのファンを魅了している。