ナタリー PowerPush - 鶴
アフロ卒業間近! ウキウキ&切なさの伝道師の本音
この挑戦をするなら今なんじゃないかって
──そしてアフロについてですが、来年春で引退しちゃうんですね。
秋野 今までも2年に一度くらい、このアフロは正しいのかどうかを話し合う「アフロ会議」をやってたんです。それで前回の会議で、あまりにもズレが生じていると。もっと自分たちの歌を伝えるにはどうすればいいか考えた結果、もうハダカになったほうがいいんじゃないかと。
──伝えたいものと外見にギャップが生まれてきた?
笠井 そうですね。外見が面白いとか、アフロのバンドって言われるのもありがたかったんです。でもそうじゃない部分でも評価されるバンドになりたかったし、自分たち自身でどこまでやれるのかを試してみたくなって。
神田 だから気持ちの問題なんです。アフロというキャラクターも僕らの強みだけど、一度ハダカになって勝負したい。いちバンドとして音楽でチャレンジしたいなと。これでどう思われるかわからないし、消えちゃうかもしれないけど、この挑戦をするなら今なんじゃないかって。
──でもギャップって、アフロを被ると決めたときは考えなかったんですか?
秋野 えーと……被るというのは?
神田 被る!?
笠井 前提が違ってますよね。ちょっと打ち合わせしましょうか(笑)。
──すいません(笑)。アフロにしたときは、ですね。
秋野 勢いだけで始めちゃって、何も考えてなかったんです。僕はポップスのキラキラした部分を前面に出していきたいと思ってて「ソウルやディスコミュージックはキラキラしてる!」という話をしていたら、笠井が「じゃあアフロにしよう」って。
笠井 冗談だったのにね、みんな乗ってきちゃって。
──神田さんはそのときどう思いました?
神田 グッドアイデア!!
──あははは(笑)。
神田 言い始めた笠井が一番シャイで、僕と秋野は目立つことが好きだからすぐに「やろうぜ!」って言いました。アフロにしたらインパクトあるし、覚えてもらえるでしょと思って。音楽にも自信はあったけど、バンドをいかに認知してもらうかという意味ではいい仕事してくれましたね。
──襟付きシャツとブーツカットのパンツもそのとき同時に揃えたんですか?
秋野 いや、最初はアフロだけ。どうせならシャツも合わせようかとなり、じゃあパンツはこれだよねってどんどん進化して、今の状態に。
──ちなみに皆さんはシャツのことを「キモシャツ」と呼んでますけど、そんなにキモくないし、似合っててカッコいいですよ。
秋野 まあキモいというのも、良い意味で気持ち悪いっていう愛情のある呼び名なんですよ。キモカワイイみたいな(笑)。それに、着てみると意外と誰でも似合いますよ。
神田 いや、でもこっちは8年着てる貫禄があるからね。昨日今日始めた人の着こなしには負けないよ!
ステージの上でも下でも鶴でいたい
──アフロと過ごした8年間はどうでしたか?
秋野 泣けてきますね。もう、走馬灯のように思い出が……。でもこのおかげで知ってもらえたのも事実だと思うし、楽しい20代を送れたのはアフロだったからですよ。
笠井 何十年後かに振り返っても、多分20代はアフロのことしか覚えてない。
秋野 オヤジになってから「お父さん20代はアフロだったんだよ!」って子供に言えるのはうれしいよね。
笠井 この髪型での写真しかないから、今死んだら遺影もアフロになっちゃうってずっと不安だったんです(笑)。
──ではアフロ抜きで、アーティストとしては20代の日々はいかがでしたか?
秋野 うーん、何かを劇的に変えたりすることがなくて、良くも悪くも変化が少なかったですね。それはオリジナルのスタイルがあったとも言えるけど、やらないといけないことを避けてきちゃったのかなという気持ちもあったんです。
笠井 曲はホントに変わらないもんね。
秋野 自分たちが感動できる曲をずっと求めていて、それをお客さんにどう伝えればいいかを探し続けてる。この8年でハードルは上がってきたけど、その前提は変わらないね。
──笠井さんも神田さんも、伝えたいことに変化はなかったですか。
笠井 なかったですね。
神田 うん、ずっと同じです。
秋野 でもそれは最近の感覚じゃない? 今までは鶴の楽曲として届けばいいと思ってたけど、これからは俺たちも一緒になって飛んでいきたくなったというか。
笠井 ……ん?
秋野 あれ、わかりづらい?
神田 全然わかんない(笑)。
秋野 だからさ、今まではフィクションの部分が大きかったんだよ。アフロもそうだし、衣装もそう。でもこれからは、ノンフィクションで勝負したい、俺ら自身の音楽として歌いたいと思うようになって。
──鶴というキャラクターを演じている意識もあった?
秋野 そう。それがあったんです。
笠井 衣装を着ることで初めてステージに立てる感覚があって、多分スイッチみたいな効果だったんだよね。でもこれからはステージでも素の自分で発信できる人間になりたいなって。
神田 ステージの上でも下でも鶴でいたいんですよ。やっぱりハダカで勝負してる他のバンドを見てると、魂が伝わってくるから、それを俺らもやりたいなと。
CD収録曲
- ハートの磁石
- 僕らが主役のストーリー
- ひとりごと
- ニャン
- 横顔
DVD収録内容
- 「IingNingGing(イングニングギング)TOUR ~今までありがとう~」名古屋ダイヤモンドホール映像(5曲)
鶴(つる)
埼玉県鶴ヶ島西中学出身の秋野温(Vo,G)、神田雄一朗(B)、笠井快樹(Dr)によって、2003年に結成。「ウキウキ&切なさの伝道師」を名乗り、精力的にライブ活動をスタート。メンバー全員がアフロヘアという個性的なルックスと確かな演奏力が話題となる。2004年には1stアルバム「素敵CD」をリリース。全国的な音楽活動を展開し、2008年にシングル「恋のゴング」でメジャーデビューを飾る。歌心あふれる独自のロックチューン、アフロとキモシャツの70年代ファッション、観客を巻き込むライブパフォーマンスで多くのファンを魅了している。