ナタリー PowerPush - 椿屋四重奏
メンバー脱退を経て3人組で再始動 念願の初ドラマ主題歌で新境地に到達
松井さんの歌詞はセクシーだけどベタベタしてない
──今回初の試みとして、歌詞を松井五郎さんと共作しています。松井さんは1980年代から現在まで、安全地帯をはじめとするさまざまなアーティストに歌詞を提供していますが、このコラボは中田さんが安全地帯が好きだったことから実現したんですか?
もちろん、それでお願いしました。作曲の段階で歌詞も書いていたんですが、俺の歌詞がどうしても難解になってしまって。せっかくテレビでかかるんだから、一撃必殺的な強さが必要だなと感じて、もっとドラマに合った歌詞にしたいと思ったんです。で、松井さんとはタイミングさえ合えば一緒にやってみたいな、勉強してみたいなという気持ちがずっとあって。ORIGINAL LOVEの田島(貴男)さんも松井さんと仕事をしてたし、そういうのを見て「ああ1回やってみたいな」と思っていて、今回はいい機会なんで実験的に松井さんとやってみるのも手だなと。
──最初に中田さんが詞を書いてそれを松井さんに見てもらう形だったんですか? それとも一緒に歌詞を書いていったんですか?
俺も何パターンか書いて、松井さんも3~4パターン書いて見せ合って、その中から良いものをお互いに選んで固めていきました。
──今まではいちリスナーとして松井さんの歌詞に触れてきたわけですが、今回コラボレートしたことで得たものはたくさんあったのでは?
やっぱり、歌詞から映像を引き出す力とスピード感ですね。1秒読んだだけで、聴き手がその場面を理解できる、何を言わんとしてるのかがわかるという部分は、やっぱりすごいなと思いましたね。
──中田さんから見て、松井さんの魅力ってどういうところでしょう?
松井さんの書く歌詞って、セクシーなんだけどベタベタしてないんですよ。安全地帯の歌詞ってどことなく浮遊感もあるし、あまり直接的ではなかったりする。でもすごく映像が浮かぶし、言葉の力も強く感じられて、そこが松井さんっぽいと思うんです。
──椿屋もその“艶”の部分にずっとこだわり続けてますよね。松井さんはロックから歌謡曲、アイドルまでいろんな人たちの曲で作詞をしてきましたが、正直このコラボは「そうきたか!」と最初に思ったんです。
多分椿屋って、どのバンドよりも「作詞:松井五郎」ってクレジットが入っていても、あまり違和感がないと思います。
「この曲は絶対ドラムフィルからだな」
──「いばらのみち」は歌詞だけじゃなくて、アレンジもインパクトがありますよね。ドラムのフィルから始まっていきなり歌に入るアレンジも新鮮だし。そのへんにも気を遣いましたか?
ドラマのタイトルがパッと出てきた瞬間のことを勝手にイメージして、「この曲は絶対ドラムフィルからだな」と思って。メンバーにはフレーズの細かいところまで話して、「どうしたらインパクトを出せるか」とかなり考えながらやりました。あのドラマは事件続きの展開なので、こう不意に事件が襲ってくるようなイメージのアレンジですね。
──曲調自体もスウィング感の強い、今までありそうでなかったアレンジですよね。それもドラマの舞台になっている昭和の世界観に合ってると思いました。
そうですね、そこはもうかなり意識してます。
──カップリングにこの曲のアコースティックバージョンも入ってますよね。オリジナルバージョンと聴き比べたときに、どっちを先に作ったんだろうと思ったんです。
「いばらのみち」はもともとガットギターで作ったんですよ。だからメロディのコード展開は、意外とボッサ向きなんです。それをあえてジャズ歌謡風にしたんですけど、原型はもしかしたらアコースティックバージョンのほうかもしれないですね。一応ドラマのスタッフから「アコースティックバージョンも欲しい」とは言われていたんですが、そういう意味ではアコースティックになっても大丈夫な曲を作るというのは念頭にあったと思います。でも俺の中では、どっちが先とかどっちが上とかなくて、どっちもメインなんです。
──なるほど。中田さんはちょうど去年からソロプロジェクトとして「SONG COMPOSITE」を始動させましたが、その影響も大きいのかなと、アコースティックバージョンを聴きながら思ったんですよ。
大いにあると思います。SONG COMPOSITEを通じてアコースティックの良さに目覚めたのもあって。それまで自分たちのアコースティックバージョンって、取って付けたようなものばかりだったのんですよ。アレンジのやり方もわかってなかったし。そういう意味では、今回はアレンジを含めいろいろ楽しみながらやれましたね。
──ひとつの曲で違った楽しみ方ができるという意味でも、このシングルは興味深いですし、ドラマでこの曲を知ってCDを買ってみた人もこのアコースティックバージョンを聴いて、絶対に「おっ!?」と驚くと思うんです。
そうですね。今の時代、CDシングルは本当に売れないから、買って得したなと思ってもらえるような、お得感があってクオリティの高いものを作りたいなと常々考えてます。
椿屋四重奏
熱視線8「KICK START MY HEART」
- 2010年7月16日(金)
- 愛知県 名古屋E.L.L.
OPEN 18:15 / START 19:00 - 2010年7月17日(土)
- 大阪府 大阪umeda AKASO
OPEN 16:15 / START 17:00 - 2010年7月20日(火)
- 東京都 SHIBUYA-AX
OPEN 18:30 / START 19:30
椿屋四重奏(つばきやしじゅうそう)
2000年、中田裕二(Vo,G)を中心に仙台で結成。メンバーチェンジを経て中田、永田貴樹(B)、小寺良太(Dr)の3人編成となり、2003年8月にミニアルバム「椿屋四重奏」をインディーズからリリースする。和を意識したメロディアスなロックを確信的に鳴らすそのスタイルが話題を集め、2005年6月に発表したシングル「紫陽花」はスマッシュヒットを記録。2006年3月よりサポートメンバーの安高拓郎(G)が正式加入し、名実共に"四重奏"として再スタートを切る。2007年にワーナーミュージック・ジャパンに移籍し、5月にはメジャー1stシングル「LOVER」をリリースした。その後も「TOKYO CITY RHAPSODY」(2008年)、「CARNIVAL」(2009年)とオリジナルアルバムを発表してきたが、2010年3月に安高が脱退。現在は再び中田、永田、小寺の3人で活動を続けている。