ナタリー PowerPush - 椿屋四重奏
メンバー脱退を経て3人組で再始動 念願の初ドラマ主題歌で新境地に到達
今年結成10周年を迎えた椿屋四重奏が、ニューシングル「いばらのみち」をリリースした。タイトル曲は4月から放送が始まったフジテレビ系連続ドラマ「娼婦と淑女」の主題歌として、日々お茶の間を賑わせている。意外にも彼らにとって初のドラマ主題歌となったこの曲。作詞で大御所・松井五郎とのコラボレーションに初挑戦したほか、アコースティックバージョンの制作など、数々の“新たな挑戦”が詰め込まれた意欲作に仕上がっている。
今回ナタリーでは、中田裕二(Vo,G)にインタビューを実施。新曲の話題はもちろんのこと、今年3月1日に脱退が発表された安高拓郎(G)についてや、結成10周年を迎えたバンドの今後についてなど、現在の心境をストレートに語ってもらった。
取材・文/西廣智一
結成10周年を前に安高拓郎との別離
──椿屋四重奏は今年でちょうど結成10周年ですが、それと重なるように安高さんが脱退しました。具体的な話が出たのは、いつ頃だったんですか?
ツアー(2009年9月からスタートした「TOUR'09『CARNIVAL』」)の最初のほうですね。
──じゃあそこから話し合いを続けて?
そうですね。かなり彼が煮詰まっていたので、「ホントのとこ、どうなの?」みたいな話をしたら「しんどい」って言って。まあ去年の初めくらいからもう様子もおかしかったし、楽しくなくなっちゃってたのかな。ほかに彼の弾きたいギタースタイルもあって、それをやりたいという話になったから、仕方ねぇかなと思ったんです。途中二転三転したんですけど、結局彼の気持ちを動かせず。それで2月末に脱退しました。
──同じバンドの中でお互い同じ方向を見てないと、続けるのもキツイですよね。
バンドだけじゃなくて、会社とかでも同じだと思いますよ。実はこれまでにも何度か似たようなことはあったんですけど、なんとか乗り越えてきたんです。でも今回ばかりはちょっと、もうお互いに戻れないなって。
頭の中で監督になった気分でドラマを作った
──そして、3人組に戻って初めてのシングル「いばらのみち」が完成したわけですが、意外にもCDでのシングルリリースは1年10カ月ぶりなんですね。しかも、タイトル曲はテレビドラマの主題歌に起用されましたが、この曲は主題歌の話があってから制作したんですか?
そうです。以前「シンデレラ」(2009年8月リリースのアルバム「CARNIVAL」収録)という曲を配信限定で出したんですけど、あの曲みたいな世界観で作ってほしいという要望で。ちょうどドラマのシナリオにも合ってたんで、これは椿屋の得意とする路線で作ればいいのかなと、がぜんやる気になったんです。
──椿屋の曲ってテレビドラマにぴったりだと思っていたんですが、これまでそういう話がなかったのが意外というか。
ですよね! 俺もずっとそう思ってたんです。
──過去には「アンブレラ」が映画主題歌に起用されたことがありましたが、やはり曲作りの際には映像を意識しますか?
ドラマや映画の主題歌の話があるずっと前から意識して作ってるんですけど、なかなか使ってもらえなくて(笑)。常に頭の中に、勝手にドラマを流してその主題歌を書いてるような気持ちなんですけど、ついに日の目を見ることになりました。
──昼ドラってテレビドラマの中でもかなり独特の世界で、そこがまた椿屋の世界観にすごく合っていて。昼ドラ特有の展開の早さと、ドラマチックかつスピーディに進行していく「いばらのみち」の相性はぴったりだと思いました。
曲作りの時点ではまだ映像はできてなくて、台本5話分とあらすじ、スタッフリスト、キャスト……安達(祐実)さんが主役という資料だけで。それで勝手に頭の中で、自分が監督になった気分でドラマを作っちゃったんです。そうしたらもう、すぐメロディが浮かんで、曲自体もあっという間に完成しました。だから先にはっきりしたイメージがあると、曲は作りやすいですね。
──例えば、連続ドラマって3カ月でストーリーが完結するけど、主題歌は結末が見えない中で作っていくと思うんです。そこが映画の曲を作るのとはまたちょっと違うのかなと。
そうですね。エンディングもわからないし話の展開もわからないままに作って、結局最終回まで使われるので、あまりこっちで決め込み過ぎてもダメ。大きなテーマを資料から拾って、なんとなくこういうことかな、こうなるのかなと想像しながら歌詞を作りました。
椿屋四重奏
熱視線8「KICK START MY HEART」
- 2010年7月16日(金)
- 愛知県 名古屋E.L.L.
OPEN 18:15 / START 19:00 - 2010年7月17日(土)
- 大阪府 大阪umeda AKASO
OPEN 16:15 / START 17:00 - 2010年7月20日(火)
- 東京都 SHIBUYA-AX
OPEN 18:30 / START 19:30
椿屋四重奏(つばきやしじゅうそう)
2000年、中田裕二(Vo,G)を中心に仙台で結成。メンバーチェンジを経て中田、永田貴樹(B)、小寺良太(Dr)の3人編成となり、2003年8月にミニアルバム「椿屋四重奏」をインディーズからリリースする。和を意識したメロディアスなロックを確信的に鳴らすそのスタイルが話題を集め、2005年6月に発表したシングル「紫陽花」はスマッシュヒットを記録。2006年3月よりサポートメンバーの安高拓郎(G)が正式加入し、名実共に"四重奏"として再スタートを切る。2007年にワーナーミュージック・ジャパンに移籍し、5月にはメジャー1stシングル「LOVER」をリリースした。その後も「TOKYO CITY RHAPSODY」(2008年)、「CARNIVAL」(2009年)とオリジナルアルバムを発表してきたが、2010年3月に安高が脱退。現在は再び中田、永田、小寺の3人で活動を続けている。