音楽ナタリー Power Push - TRUSTRICK

“王道のJ-POP”を目指して

TRUSTRICKの2016年第1弾作品「beloved E.P.」が完成した。メンバー曰く「王道のJ-POPを目指した」という表題曲「beloved」をメインに据えたシングルではなく、外部アレンジャーを招いたコラボ曲や洋楽カバー(Type-Bのみ収録)などバリエーションに富んだ楽曲を収めた“E.P.”として、コンパクトながらTRUSTRICKの振れ幅が楽しめる1枚となった。音楽ナタリー4度目の登場となる今回のインタビューでは、充実した2015年を振り返りつつ、スタッフとの衝突にまで発展するほど苦心したという楽曲制作のエピソードを詳しく語ってもらった。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 雨宮透貴

充実の2015年と初のニコ生ライブ中継

──2015年は念願だった「Animelo Summer Live」への出演を果たしたり、趣向を凝らしたワンマンライブを行ったり、2人にとってかなり充実した1年になったんじゃないでしょうか。

左から神田沙也加(Vo)、Billy(G)。

神田沙也加(Vo) そうですね。本当に。

──12月のワンマンライブ「TRUSTRICK LIVE PROUD 2015 "Good Bye Stray Sheep"」(参照:トラトリDiverCityで2015年ライブ納め、年明けリリースイベントも決定)はそんな充実した1年の締めくくりにふさわしい盛りだくさんの内容でしたが、このライブではニコニコ生放送での生配信も実施されました。タイムシフトなどでご覧になりました?

Billy(G) ああ、観られなかったんですよね。

──おそらく「あのアニソンを歌ってる人」ぐらいの認識で観ている人も多かったと思うんですけど、コメントを眺めていると、すごくアニソンファンに受け入れられてるなあという印象でした。「FLYING FAFNIR」(テレビアニメ「銃皇無尽のファフニール」オープニングテーマ)の“神曲”としての盛り上がりがすごくて。

神田 本当ですか? よかったあ。Billyなんて特に心配してて。

Billy 超ビビってたんですよ。「どんな反応が来るんだろう……今日でミュージシャン廃業だあ!」って(笑)。

──アニメオタクでもある神田さんに対する「才能あるアニヲタが本気出すと強い」というコメントが秀逸でした(笑)。

神田 あははははは(笑)。面白ーい! 最高の褒め言葉ですよ。完全にヲタ to ヲタのコメントじゃないですか(笑)。

Billy 「アニサマ」に出たときも受け入れられたという実感はありました。

神田沙也加(Vo)

神田 ステージに立つまではまったく実感なかったんですよ。「今日は完全にアウェイだから覚悟していこう」って話していて。TRUSTRICKを知らない人が大半だろうし、演奏して「これなんの曲だっけ?」とさえ思ってもらえれば十分だと思ってたんです。でも当日は自分たちの出番の前に、黒崎真音ちゃんとのコラボレーションで「逆光のフリューゲル」(テレビアニメ「戦姫絶唱シンフォギア」挿入歌。オリジナル歌唱は水樹奈々と高山みなみ)を歌うという機会があって。そこでボルテージを上げたあとだったのも大きかったです。頭サビの「選ば(れた)」を歌った瞬間にブワーッとサイリウムの光が広がって……「みんなこの曲知ってるの!?」ってびっくりしました。

Billy そうそう。あの光の海を見て初めて「受け入れられた」って実感しましたね。

神田 鳥肌が立ちましたもん。最初の3文字でそこまで盛り上がれるって、きっと曲を知らないとそんな反応はできないと思うんです。本当にうれしかったですね。

ライブを通して見えてきた「TRUSTRICKらしさ」

──12月のワンマンでは「アニサマ」衣装での「FLYING FAFNIR」のパフォーマンスもありました。さらに新曲の初披露もあったりして、2015年から2016年へとつなげるようなライブだったなと感じました。お2人にとってはどんな位置付けのライブだったんですか?

Billy やっぱり2015年の集大成になるように考えていました。ワンマンでは毎回そのときそのときの集大成を見せたいという思いがありますけど、今回は年末ということもあったしなおさら。あと、タイトルの「Good Bye Stray Sheep」は「迷える子羊だった新人時代にひと区切り」という意味を込めたんです。選曲もそういう意識を反映したものになりましたね。

神田 MCでも言いましたけど、今回のライブからスタッフの体制ががっつり変わって。その結果、不安要素が本当に1つもなくなったんですね。本来もともとそうあるべきだったのかもしれませんけど、それまではずっと手探りで。でも今回はリハが終わった時点でもう安心というか、あとはイメージしているものをそのままやればよかったから、本番に対しての不安が皆無だったんです。これまでいかにバタバタとやっていたかが反省点としてよくわかったし、すっごく落ち着いてやれました。全然緊張しなかったもん。

Billy(G)

Billy 夏にやった2本のライブ(参照:TRUSTRICK、サマーライブ第1弾はバラードなしの“攻め”セット / TRUSTRICK、弦楽四重奏と映像演出で魅せたサマーライブ第2弾)はそれぞれが対になったコンセプチュアルなステージだったので、対照的なカラーをしっかり出さなきゃ、という意気込みが強すぎて緊張につながっていたところもあって。でも、あれは1回経験しておいてよかった。TRUSTRICKらしさってなんだろうと考えたときに、いろんなテイストの楽曲があるユニットなので、スタンディングで盛り上がるものもあれば、シーティングでじっくり楽しむこともできるという、その両方をきちんと突き詰めるステージができたのは大きかったですね。

神田 夏の2本は課題も見えたライブだったなと思います。バラエティに富んでいる分、どう並べてもセットリストがデコボコしちゃうから、もうちょっとデコボコの落差を浅くしていける楽曲が必要だなあって。

Billy ライブごとにアレンジを変えることで聴かせ方も変えられると思うから、今までは比較的音源に忠実な形で演奏してきたけど、これからは全体のバランスを考えつつ遊んでもいいのかもなと思いますね。EDMっぽいテイストのものをアコースティックアレンジにするとか、その逆もあるだろうし。

──そういう改善点が見つかったのは、結成から日数と経験を重ねて、楽曲が増えてきたからこそ見えてきたことですよね。

Billy そうだと思います。自分たちの特性を理解できたからこそ「じゃあ次はこうしようか」と考えられるんだろうなって。

──いよいよTRUSTRICKというユニットが形になってきたのかもしれない。

神田 はい。年末のライブは、私たちが守るべきところと壊すべきところがよく見えた、実りの多い1年だったと納得できるステージになったと思います。

──そんな充実したライブが生中継されたのって大きなことだと思うんですよね。例え音楽で興味を持ったとしても「じゃあライブに行ってみようかな」と考えるまでには時間的にも金銭的にもハードルがあって。神田沙也加という人のことは知っていても、ステージであんなに自由にしゃべって動き回る人だと知らなかった人も多いはずで。「MCうめえな」ってコメントも多かったですし。

神田 あははは(笑)。自分が夜な夜なニコ生を観ている側の人間なので(笑)、同志が見守ってくれていたような気持ちはありますよ。観ていた人たちにも「同志だ」って思ってもらえていたらうれしいです。

「beloved E.P.」2016年1月27日発売 / 日本コロムビア
Type-A [CD+DVD]2000円 / COZP-1134~5
Type-B [CD] 1700円 / COCP-39414
CD収録曲
  1. beloved
  2. from where to where -ため息の理由-
  3. Water Lily
  4. それが奇跡だと知らない
  5. Good Bye School Dayz -theme of SUPER DANGANRONPA 2 THE STAGE-(Re:GENERATION Version)
  1. beloved(Instrumental)
    ※Type-Aのみ収録
  1. DO YOU WANT TO(オリジナル:Franz Ferdinand)
    ※Type-Bのみ収録
Type-A DVD収録内容
  • beloved(Music Video)
  • beloved(Making Clip)
TRUSTRICK(トラストリック)
TRUSTRICK

舞台女優としての活動を中心に、歌手、声優、モデルなど幅広く活躍する神田沙也加(Vo)と、Billy(G)からなるユニット。2014年4月にユニット結成を発表し、6月発売の1stアルバム「Eternity」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たした。2015年1月にはテレビアニメ「銃皇無尽のファフニール」のオープニングテーマとなるシングル「FLYING FAFNIR」、2ndフルアルバム「TRUST」を続けて発表した。同年5月にはテレビアニメ「俺物語!!」のオープニングテーマ「未来形Answer」を含むCD「未来形Answer E.P.」を発表し、8月には国内最大級のアニメソングイベント「Animelo Summer Live 2015 -THE GATE-」に出演を果たした。2016年1月には新作CD「beloved E.P.」をリリース。