ナタリー PowerPush - 特撮
予想外の再始動!? オーケン&NARASAKIが見た「5年後の世界」
7月のライブもどういう人たちが来るのかわからない
──ここ最近、80~90年代に活躍したバンドの再結成や再始動がすごく増えてますが、特撮の再始動からはそういう流れとは違うものを感じます。
大槻 そのバンドごとに再結成なり再始動なりのタイミングがあるだろうけど、特撮は特撮のタイミングとしか言いようがなくて、たまたまそういう時期だったというか。でも、こないだシャフトのイベント(4月24日に日比谷野外大音楽堂で行われた、スターチャイルドレーベルとアニメ製作会社シャフトの企画ライブイベント「咲く乱状態in日比谷野音2011」)に絶望少女達や面影ラッキーホール、スネオヘアー、神聖かまってちゃんが出たときに思ったんですけど、アニメのイベントにそういうロックバンドが集まるっていうジャンルのボーダーレス化があって、その流れの中にも特撮の再始動は一部入ってくるのかなと。だから、7月のライブも当時のファンがどれぐらいなのか、絶望少女達を聴いた人たちがどれぐらいなのか、それ以外もどういう人たちが来るのかわからない。もしかしたら、サポートベースの高橋竜君のファンがメインかもしれないからね。
NARASAKI 最前列のお客さんがみんな竜ちゃんのほうを観てたりして(笑)。
大槻 そういうこともあり得るんで。
NARASAKI ライブ会場でお客さんに訊いてみたいですね。
大槻 ね。でも、今振り返るとね、以前の特撮もお客さんのことはよくわからないというか、客席が微妙な反応だったことが多かったと思うんだよ。町田康さんのバンドとやったときもお客さんはいっぱいだったんだけど、ワーって盛り上がるわけでもなく不思議な感じだったし。
──でも、絶望少女達から特撮を知ったっていう人も、もちろんウェルカムなわけですよね?
2人 もちろん。
大槻 昔のファンの方もどなたでも、いろんな方々に来ていただきたいですよね。
アニメ関係のお客さんはみんな過剰にいい人たち
──大槻さんはあの野音のライブで、どういう手応えを感じましたか?
大槻 楽しかったですよ。この前の野音みたいに、絶望少女達でお仕事をさせてもらって、アニメ関係のイベントに出ることがよくあるんですが、ナッキーはアニメについて結構知ってるけど、僕は「ド根性ガエル」くらいしか知らないから。なんでこんなに歓迎していただけるのか、いまだにキョトンとしてるところがあるですよ。でも、そういう感じも面白いんだけど。
──the pillowsが「フリクリ」というアニメの主題歌をやったときに、アニメファンから高い支持を得て、ライブの客層が少し変わったことがあって。だから、絶望少女達の作品でもわりとそれに近い現象が起きてるのかなという気がしたんです。
大槻 アニメ関係のイベントに出させてもらって思うのは、お客さんがみんな過剰にいい人たちで、どんなアーティストが出てきてもマックス状態で盛り上がってくださるんですよ。これがロックの現場だと盛り上がりにメリハリの波があって。まーどんなお客さんもとにかく物販は買ってほしいよね。
NARASAKI 特撮の活動ですか?
大槻 いや、すべての僕の活動で。
NARASAKI あ、すべてですか?(笑)
「受け取るオタク」と「発信するオタク」の違い
──大槻さんっていわゆるオタクと呼ばれるジャンルの先輩にあたると思うんです。先輩として今の客席を見てどう思いますか?
大槻 いや、僕はオタク的ではあったけど、オタクになれなかったんですよ。あのね、オタクの方々っていうのは人が発信しているものを受け入れて、それを模倣して支持するっていう体制じゃないですか。でも僕は、人が発信したものを自分で作り変えて、また発信するっていうタイプだったから、いわゆるオタクとはまた違うと思うんだよね。
──ああ、なるほど。
大槻 マクロスとかガンダムとか、80年代ぐらいからワーッと表面化したきたんだけど、僕はやっぱり違うなって思ったんだよな。よく覚えてるのが、「六神合体ゴッドマーズ」のファンがうちのクラスにいっぱいいたのね。そういうオタク集団があったんだけど、僕は入れなかったなぁ。そのときに、受け取る側と発信する側とではオタク的要素が違うなと思って。だから、逆にかまってちゃんのの子くんなんかは、ニコ動とかそういうものを使って発信するタイプだから、ちょっと同類って感じがするよね。
──確かに。言われてみると納得ですね。
大槻 この間さ、かまってちゃんのみさこちゃんが参加してる「バンドじゃないもん!」と対バンして。ツインドラムのバンドと一緒にやったのは、フジロックのMELVINS以来だからね。
──あははは!(笑)
大槻 ルックスの違いに驚いちゃった。MELVINSはコワモテオヤジバンドだもん。
NARASAKI そっか、そりゃ違うな。
大槻 みさこちゃんも発信する側でしょうね。ナッキーは受け取る側の面もあるんでしょ?
NARASAKI どうですかね。俺は古い特撮ヒーローものが好きなんですけど、脚本家が誰だとか監督が誰だとか、そういうのを知ってるとそれだけでオタクみたいな感じがあるじゃないですか。あと、グラインドコアとかデスメタルとか知ってたら、それはそれでオタクだし。でも、宮崎駿のアニメが好きだったらそれはアニメオタクなの? って話になるし、今となってはオタクっていう言葉の定義自体がよくわかんないですね。
大槻 今、社会的に中心になってるオタクっていうのは受け取る側。でも、そこから例えば同人音楽を発信する人なんかが出てきたんで、世の中の人たちがちょっと驚いてるってことだと思うんだよね。
NARASAKI MAD職人はどうなんですか?
大槻 あれも送り手側になったわけでしょ。悪い言葉で言うと、人のふんどしで相撲を取るってことをやってるってことなんだけど、それを完璧に自分のモノにしてクリエイトしてるから送り手側と言えるね。個人的には、やっぱり最終的には人は送り手になるべきだと思うんだけど、今は受け手側のオタクのほうが社会的認知が高くて一般化しちゃってるね。ちょっと話はズレるんだけど、K-1に長島☆自演乙☆雄一郎っていう選手がいてさ。彼はオタクファイターとしていつもプリキュアとか萌えのコスプレをして出てくるの。もう完璧に受け手側オタクの代表として出てくるんだけど、やってることは格闘技。送り手側なんだよね(笑)。
──あれは不思議ですよね。
大槻 送り手側なのに、受け手側を追求してるところが面白いね彼は。
──むしろそれを自分で誇りに思ってるっていうか。
大槻 そうなんですよ。しかもメチャクチャ強いっていう。
──あははは(笑)。
大槻 でも個人的には、受け手側のオタクに対する憧れっていうのもあって。自分の好きなアニメについて熱く語ったりコスプレしたりしてるのを見ると、仲間に入りたいなっていう気持ちもたまにあるんだよね。
CD収録曲
- 5年後の世界
- オム・ライズ(011)
- 林檎もぎれビーム!
- 霧が晴れた日
- 人として軸がぶれている
- 空想ルンバ
- 追想
- ヌイグルマー(オーケンVo.ver)
- ロコ!思うままに
- かってに改造してもいいぜ(オーケンVo.ver)
- Dead or Alive
- メビウス荒野~絶望伝説エピソード!
- ルーズ・ザ・ウェイ(011)
特撮(とくさつ)
2000年、筋肉少女帯を脱退した大槻ケンヂ(Vo)がNARASAKI(G/COALTAR OF THE DEEPERS)、三柴理(Piano, Key)、ARIMATSU(Dr)、内田雄一郎(B/筋肉少女帯)と結成したロックバンド。当初は「パンクチーム」としてスタートし、同年1月にシングル「アベルカイン」でデビューを果たす。翌2月に1stアルバム「爆誕」をリリース。これに伴う全国ツアーも大成功を収めるが、ツアー終了後に内田が脱退。以後、サポートベーシストを迎えて活動を継続する。2006年まで作品とライブを重ねるが、大槻の筋肉少女帯再加入を機に活動休止。以後、それぞれソロやバンドなどで活躍する。大槻とNARASAKIは活動休止中も「大槻ケンヂと絶望少女達」名義で作品を発表。レコーディングには特撮メンバーも参加していた。2011年4月、ライブツアー開催を突然発表。そして、大槻ケンヂと絶望少女達のシングル「メビウス荒野~絶望伝説エピソード1」と、「水木一郎と特撮」名義のシングル「かってに改造してもいいぜ」を同時発売し話題を集めた。同年6月には約5年ぶりとなるニューアルバム「5年後の世界」をリリース。