ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
天下無双の最強コラボ 西川貴教が「BASARA」に込めた情熱
T.M.Revolutionの新作コンセプトミニアルバム「宴 -UTAGE-」がついにリリースされる。これはT.M.Revolution15周年×「戦国BASARA」5周年を記念した企画盤アルバム。2005年から現在まで続くT.M.Revolutionと「戦国BASARA」による最強タッグの歴史が、計7曲のヒットナンバーを通して描き出されている。
初回限定盤Aに付属のDVDにはゲームのオープニングムービーなど、貴重な特典映像が多数収録される。そして初回限定盤Bに付属のドラマCDでは、なんと西川貴教が本人役で出演。「西川貴教 VS 戦国BASARA 六武将! 西川城天守! 明日を懸けたUTAGE!」と題して、ゲームに登場する人気の6武将とのドラマを繰り広げている。さらにアルバムには新曲「UTAGE」も初収録。いずれも大きな話題を呼ぶことは間違いなさそうだ。
取材・文 / 大山卓也
闘争本能を伝える「BASARA」楽曲の魅力
T.M.Revolutionと「戦国BASARA」の出会いは2005年7月にさかのぼる。PS2用アクションゲーム「戦国BASARA」の主題歌にT.M.Revolutionはハードなロックチューン「crosswise」を提供し、ゲームの世界にひときわ華やかな色を加えた。これを皮切りに、以降のシリーズ作品やアニメの主題歌、さらに今年公開された「劇場版 戦国BASARA」に至るまで、両者の蜜月は続いていく。その相性の良さは、ゲームやアニメのファンも、古くからのT.M.Revolutionファンも、どちらもが認めるところだろう。西川貴教は今回のアルバム「宴 -UTAGE-」を制作したきっかけについてこう語る。
「T.M.Revolutionと『戦国BASARA』との関係はまだまだ続いていくと思いますけど、このタイミングで、これまでの作品をひとつにまとめてみたらどうだろうという提案をスタッフや周りの方々からいただいて。だからこれは本人主導というよりは『BASARA』やT.M.Revolutionを支えてくれてるファンの皆さんへのお礼というか、これまでバラバラにリリースしてきたものを聴きやすくまとめてみようっていう企画なんです」
そう、このアルバムは、これまでシングルを中心にリリースされてきた「戦国BASARA」の関連楽曲をまとめて聴ける貴重な作品でもある。そして収録された7曲を通して聴くと、どこかに一本芯の通った「戦国BASARA」らしさが見えてくるはずだ。通常のT.M.Revolutionの楽曲と「戦国BASARA」の関連楽曲はどこが違うのだろうか?
「いわゆるT.M.Revolutionの楽曲の良さに、プラスアルファとして『BASARA』の世界観が合わさって、『BASARA』の曲はある種独特なものになってますよね。T.M.Revolutionって、元々は男の切なさとか情けなさみたいなものを表現するような曲が多かったと思うんです。でも『BASARA』は元がゲームっていうこともあって、闘争本能というか、アッパーな感覚が前面に出ていて。そこを強調することで全体のレンジが底上げされて、T.M.Revolution自体のゲインが広がっているような気がするんです。だからパッと聴いたときの“和”なイメージだけじゃなくて、聴いてくれてる人たちが感情移入して自分のものにできるような、『BASARA』の曲はそういうものになってると思いますね」
そして、T.M.Revolutionはこれまで「戦国BASARA」以外にもさまざまなコラボに挑戦してきている。アニメでは「るろうに剣心」「機動戦士ガンダムSEED」「劇場版 BLEACH」など。さらにハローキティとのコラボによるショーも記憶に新しいところだ。アーティストとしての固定化したイメージにとらわれず自由度の高い活動にチャレンジし続ける、その意欲の源泉とは?
「自分にとって、T.M.Revolutionは“いじりがいのあるオモチャ”なんです。今回は『BASARA』ですけど、そのほかにも例えばこういうシチュエーションでライブをやってみようとか、こういう形で新たなコラボができないかとか、いろんな企画や提案にフレキシブルに対応して、その結果独自のものを作っていく。そして『BASARA』とのコラボを5年間やってきたことで、自分なりのプロデュースワークがもうひとつ上のフェーズに行けた感じっていうのもあるんです。T.M.Revolutionは、そうやっていろんなものを生み出すファクトリーみたいな存在なんですよね」
音楽でできることを真摯にやっていく
このアルバム「宴 -UTAGE-」には「Naked arms」や「SWORD SUMMIT」など、現在のT.M.Revolutionのライブのハイライトとなる名曲が多数収録されている。中でも「FLAGS」「The party must go on」の2曲は、東日本大震災の発生後に制作された、西川自身も思い入れの強いナンバーだ。被災地となった仙台は奇しくも「戦国BASARA」における主役級のキャラクター、伊達政宗のお膝元。西川は、この作品のリリースにあたって「戦国BASARA」プロデューサーの小林裕幸と深い話をしたという。
「伊達政宗と真田幸村。この2人の関係性が『戦国BASARA』の物語を牽引してきたわけで、小林さんも震災直後はこの映画を公開するべきか否かについて悩んでるっておっしゃっていて。僕は小林さんには、一緒に『戦国BASARA』を作ってる者として、どんな形であれ見守っていくつもりです、って伝えました。その上で、僕はやっぱり逆に今やるべきだなって思ったんですよね」
結果として「劇場版 戦国BASARA」は東北での先行試写会を経て、予定どおりに全国の劇場で公開された。主題歌の「FLAGS」は、タイトルどおり“旗”を掲げて突き進む、力強い生き様を称える楽曲だ。旗はすなわち自身のプライドであり、守るべき大切なものの象徴でもある。強い意志を掲げて、自らに与えられた使命を果たすこと。西川はこの楽曲を通して、戦国時代の出来事を歌うのではなく、現代にも通ずる普遍的な感情を描き出しているのだ。
「どういう世の中であれ、自分は音楽でできることを真摯にやっていくしかない。ここからどういうふうに歩んでいくのか自分でもわからないけど、そこだけはブレないでやっていけたらって思ってます。元々“宴”っていうのはお祭りで、本来は先祖とか土地の神様とかに対する感謝の気持ちを伝えるものなんですよね。それと同じように、僕は『宴 –UTAGE-』という作品で、自分を支えてくれてる人への感謝を表現していきたいんです。今までは自分の主張を届けていたけど、これからはもっと広い意味で皆さんを支えたり、皆さんの気持ちを押し上げていくっていうことが次の目標になっていくんじゃないかなって思ってるんです」
戦国の世に勝ちどきを上げる武将のように──。T.M.Revolutionは、この混迷の時代に生きる多くの人の心を勇気づけ、これからも音楽を通して新たなビジョンを提示していってくれるだろう。まずは彼の音楽とその生き様に、真摯に向き合うことから始めてみよう。このミニアルバム「宴 -UTAGE-」の楽曲に込められたメッセージが、リスナー1人ひとりの心に前向きな力を与えてくれるはずだ。
CD収録曲(全仕様共通)
- crosswise
- Naked arms
- SWORD SUMMIT
- FLAGS
- The party must go on
- UTAGE
- Naked arms -English ver.-
初回限定盤A 特典DVD収録内容
- ゲーム「戦国BASARA」オープニングムービー [crosswise]
- ゲーム「戦国BASARA X(クロス)」オープニングムービー [crosswise]
- ゲーム「戦国BASARA3」オープニングムービー [Naked arms]
- アニメ「戦国BASARA弐」オープニングムービー [SWORD SUMMIT]
- アニメ「戦国BASARA弐」スペシャルプロモーションムービー [SWORD SUMMIT]
- ゲーム「戦国BASARAクロニクルヒーローズ」オープニングムービー [FLAGS]
- ゲーム「戦国BASARA」 5th アニバーサリームービー [FLAGS]
- 劇場版「戦国BASARA -The Last Party-」スペシャルプロモーションムービー [The party must go on]
- ゲーム「戦国BASARA3 宴」オープニングムービー [UTAGE]
- ゲーム「Sengoku BASARA: Samurai Heroes」オープニングテーマ [Naked arms -English ver.-]
初回限定盤B 特典CD収録内容
- ドラマCD「西川貴教 VS 戦国BASARA 六武将!西川城天守!明日を懸けたUTAGE!」
- 六武将集結!前代未聞の宴よ、いざ幕を開けん!
- KING OF UTAGE!西川貴教降臨!
- BASARAレボリューション!第1回BSR48選抜総選挙直前!サイコロトークのUTAGE! -前編-
- BASARAレボリューション!第1回BSR48選抜総選挙直前!サイコロトークのUTAGE! -中編-
- BASARAレボリューション!第1回BSR48選抜総選挙直前!サイコロトークのUTAGE! -後編-
T.M.Revolution(てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるソロプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲や完成度の高いステージ、圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」「vestige」「Naked arms」などのヒット曲を連発する。故郷・滋賀県から初代「滋賀県ふるさと観光大使」に任命され、2009年からは滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催している。2011年4月には約6年ぶりとなるオリジナルアルバム「CLOUD NINE」を発表し、38会場44公演におよぶ全国ホールツアーを実施。さらに同年5月にはサンリオピューロランドとのコラボイベントを開催するなど、15周年記念プロジェクトを進行している。2011年夏にはポルトガル人少年・ミゲルとエステー「消臭力」のCMで共演し話題を集め、同年10月からはロックミュージカル「ROCK OF AGES」で主演を務めた。11月にはゲームソフト「戦国BASARA」シリーズへの提供楽曲を収録した企画盤「宴 -UTAGE-」をリリースする。