ナタリー PowerPush - The Flickers

ユニークな結成秘話から紐解く新鋭スリーピースの魅力

ニューウェイブやエレクトロを経由し、同期もふんだんに取り入れながら、コンテンポラリーなロックンロールを鳴らすバンド。と書くと、近年数多く現れているバンドの一角にすぎないと思うかもしれないが、The Flickersの音楽性は、戦略や器用な発想でその方法論に至ったというのではなく、もっと切迫した必然性を感じさせる。刹那的に感情や風景を刻みつけながら、前傾姿勢で転がっていくサウンドと歌の中心に、絶対的にこうするしかないのだ、と咆哮する衝動がみなぎっている。今回ナタリーでは初の全国流通盤「WAVEMENT」をリリースする彼らにインタビューを実施。話は、意外なバックグラウンドの告白から始まった。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) インタビュー撮影 / 平沼久奈

「もう、これしかねえ!」って思っちゃった

──まずは結成の経緯から訊かせてください。

インタビュー写真

安島裕輔(Vo, G, Syn) 結成は2005年ですね。当時、僕は受験勉強をしていて。音楽はずっと大好きだったんですけど、楽器は全くやったことがなくて。で、高校の同級生で、当時プロボクサーを目指していた堀内に「一緒にバンドをやらないか?」って誘われて。

堀内祥太郎(B) そうなんです。

──え、バンドを組む前にプロボクサーを目指してたんですか?

堀内 結局1年くらいで諦めたんですけど、19歳のときにいきなりボクシングを始めて。当時やりたいことがなくて、何かやらないとダメだなと思っているときに「はじめの一歩」を読んで、「これかな?」と思ったんですよね。

──ボクシングって「これかな?」くらいの感覚で始めるものじゃないと思うんですけど……。

安島 この人は、そのあと「踊る大捜査線」に影響されて刑事になろうとするんですよ(笑)。

──どんだけ単純なんだよ(笑)。

堀内 あはははは。刑事になろうと思って、今度は専門学校に通い出して。バンドは、高校生のときにちょっとだけやったことがあったんですね。そのときはギターをやっていて。楽しかった記憶があったから、もう1回バンドをやりたいなと思って、高校を卒業してからよく遊んでいた安島を誘ったんです。安島が音楽が好きなことは前から知っていたし。で、消防士を目指して同じ専門学校に通っていた本吉と出会うんです。

本吉“Nico”弘樹(Dr) 僕はそれまで音楽を深く聴いたことがなかったし、楽器もやったことはなかったんですけど。堀内に「バンドを組んでるんだけど、入らないか?」って誘われたときにやってみたいと思って。それで、ドラムをやることになって。

──変わったバンドの始まり方だなあ(笑)。2人はその後、専門学校は卒業したんですか?

本吉 いや、中退しました。

堀内 しましたね。

本吉 専門学校に通っているときにライブを2回したんですね。それがすごく刺激的で。「もう、これしかねえ!」って思っちゃったんです。ライブハウスの雰囲気とか、演奏する楽しさとか、お客さんに聴いてもらう感じとか、今までに体験したことのない気持ち良さがあって。ドラムも全然叩けてないのにバンドにどっぷりハマっちゃったんですよね。

音楽は絶対やりたくなかったもの

──安島さんも堀内さんに誘われる前はバンド未経験で、曲作りもしたことなかったんですよね?

安島 はい。

──なぜバンドに飛び込んでみようと思って、さらには自分で曲を書いてみようと思ったんですか?

安島 音楽は元々大好きだったんですけど、絶対に自分ではやりたくないものだったんですね。

インタビュー写真

──それはなぜ?

安島 自分が音楽をやったら戻れない性格だとわかっていたので。

──深みにはまるのが怖かった?

安島 なんて言うか……なるべくしっかり生きたかったんです。

──真っ当な人生を送りたかったということ?

安島 そうですね。学生時代は学校にあまりなじめなくて、ずっと努力してなじんでいたタイプだったんです。音楽は好きだったから周りの人に「バンドやりなよ」って勧められたこともあったんですけど、僕は「絶対やらない、勉強する」って言い続けて。でもずっと勉強も苦手で。嫌いじゃないのに苦手なんですよ。

──ああ、それはしんどいね。

安島 だから、ずっと平均点への憧れみたいなものがあって。音楽は大好きだけど、自分でやり始めたら、完全にのめり込んでしまうのがわかっていたから、ずっと避けていたんです。

──音楽は自分のよりどころだったけど、人生の全てになってしまうのが怖かった?

安島 そうですね。でも、堀内に誘われて、うっかり始めちゃったんですよね(笑)。

──堀内さんに誘われたときはなぜ音楽に飛び込んでいけたんですか?

安島 なんででしょうね? 高校も卒業していたし、大人になったから、仕事しながらでもできるだろうなって最初は思ってたんですよね。でも、やっぱりそのうちバンドが自分の全てみたいな感じになっていきましたね。

2ndミニアルバム「WAVEMENT」/ 2012年5月9日発売 / 1500円(税込)/ HIP LAND MUSIC / RDCA-1023 / Amazon.co.jpへ

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CD収録曲
  1. lovender
  2. vivian girls
  3. break bits
  4. three count to forget one's feel
  5. rock'n'roll Suicide
  6. ghost Town
The Flickers(ざふりっかーず)

安島裕輔(Vo, G, Syn)、堀内祥太郎(B)、本吉“Nico”弘樹(Dr)の3人からなるスリーピースロックバンド。ガレージロック、ニューウェイブ、エレクトロなどの要素を盛り込んだダンサブルなサウンドと、エモーショナルなパフォーマンスでライブハウスシーンを中心に注目を集める。2011年11月にタワーレコード限定で1stミニアルバム「WONDERGROUND」をリリース。2012年5月に初の全国流通盤となる2ndミニアルバム「WAVEMENT」を発表する。