最終的に前を向く歌でありたい

──安島さんの歌詞は、カオティックに目まぐるしく疾走するサウンドの中で、刹那的に感情や風景、そこから派生するイメージを刻みつけている印象があるんです。架空の世界を描きつつ、現実をサバイブするような歌詞が多いと感じていて。その核にあるのが、今作の収録曲「lovender」の歌詞にある「止まらない今日の続き」「終わらない今日の続き」という概念だと思うんですね。

安島　全ての人がそうだと思うんですけど、楽しかったことも、苦しかったことも、全て自分にとって大事なことで。それをしっかり受け止めながら、最終的に前を向く歌でありたいと思うんです。どんなにネガティブな気持ちから生まれた歌でも、音楽を発信する、歌を歌うというのはポジティブな気持ちの表れだから。だから、曲はリスナーにとってもポジティブなものであってほしいと思います。決して明るい歌詞ではないと思うんですけど。

──そうですね。

安島　悲しいことや苦しいことがあるからこそ、前に向かう姿勢が大事になってくると思うし。曲にそれをしっかり込めていきたいですね。

──安島さんの書く歌詞には、音楽を鳴らしているイメージが投影されていますよね。

安島　そうですね。生活の中で、たまに音楽以外のものがなくなってしまうことがあって。バイト中もずっと音楽のことを考えてるし、スタジオの行き帰りもそうだし、家でずっと曲を作ってるときもそうだけど、気付けば音楽のことしか考えてない日があるんです。そうすると、自然と自分の音楽に対する気持ちやメッセージが曲に反映されていくんですよね。例えば今作の「rock'n'roll suicide」という曲も「どっかに行こうぜ！」って歌ってる曲なんですけど、実際は僕らがただスタジオでひたすら音楽を鳴らしているだけの歌詞でもあって。その時間が僕にとっての「rock'n'roll suicide」なイメージになったというか。

──あと、メロディがすごくオープンですね。

安島　西海岸のエモいバンドが好きなので、そういう要素が出ているんだと思います。

──「Flicker」って「明滅する」という意味がありますけど、その語義はバンドの音楽像とダイレクトにリンクしていますよね。

安島　そうですね。揺れる景色や感情の中にある輝きを音楽にしたいんです。

広い年代に楽しんでもらえる音楽を追求したい

──完成した「WAVEMENT」はどんなアルバムになったと思いますか。

安島　前作「WONDERGROUND」は、初期衝動やこれまで自分たちが歩んできた道のりをパッケージしようと思って作った作品で。それを経て、今作は知性的な部分や前を向く意志をしっかり詰め込められたと思ってます。

堀内　前作に比べて、全体的に明るくて聴きやすいアルバムになったと思いますね。打ち込みだけの「vivian girls」から速いロックンロールの「break bits」につながっていく感じとかすごく面白いと思うし、何度も聴いて楽しんでもらいたいです。

本吉　前作も今作も僕らの音だなって思うんですけど、今作は比較的明るい曲が多くなったかな。無理にポップにしようと思うのではなく、自然と明るいものが生まれたのが良かったと思います。リスナーにも伝わりやすい仕上がりになったと思うし。

──バンドとしてでも個人としてでもいいんですけど、今後The Flickersとしてどんなことを追求していきたいですか？

安島　僕は……パンクしたいですね。それは自分自身に対してもそうだし、ロックっていう音楽に対してもそうだし、パンクっていう言葉そのものに対してもそうで。自分の世界を追求したいと思うと同時にそれをぶっ壊していきたいです。

堀内　作品ももちろんそうですけど、最新の自分が追求したいことは全てライブに表れるので、いろんな人にライブを観て楽しんでもらいたいです。僕は安島と本吉の中間にいると思うんですよ。

──というと？

堀内　パンクしたい安島がいて、安島の歌を大切にしようとする本吉がいる。で、僕は安島の歌を支えたいと思いながら、自分も積極的に前に出たいと思っているので。たまに本吉ににらまれるんですけど（笑）。

本吉　あはははは。

堀内　バランスを取りながら、ギリギリのラインを追求していきたいですね。

本吉　僕はライブ中に異様なくらいニコニコしているんですけど、それくらいこのバンドで音楽を鳴らすのが楽しくてしょうがないんです。その楽しさをもっとリスナーに、ライブに来てくれるお客さんに伝えられる曲を作っていきたいですね。10代、20代だけじゃなく、広い年代に楽しんでもらえる音楽を鳴らしたいです。