ナタリー PowerPush - THEATRE BROOK

やめんかったらロックスター! 佐藤タイジが使命感を語る

1974年のポジティブなビジュアルを歌にした

──パーソナルという点では「'74年の日曜日」もそうですよね。

うん。あれはとても不思議なんだけど……小学校1年か2年だったと思うんですけど、文房具屋か何かで「'74」って旗があったんですよ。で、「これ何?」って訊いたら「今年は1974年なのよ」みたいなことを言われて、へえーって……なんか覚えてるんですよね、そのビジュアルを。今から思えば74年って、いい時代だと思うんですよ。音楽的にもとても豊かで。おそらくCHARとかが出てきたのも、そのへんでしょ? 名盤もいっぱい出てるんですよね。ダニー・ハザウェイとか──。

──ニューソウルの時代ですからね。スティーヴィー・ワンダーの「ファースト・フィナーレ」とか。

そうそう、そういうの。ロックもいい時代だったし、とても豊かな音楽があって、未来に希望がある時代なんですよね。

──なにせ高度経済成長期ですからね。オイルショックがあったとはいえ、まだまだ。

ギンギンの時代ですよ! 日本もね。イケイケもイケイケでしょ? 熱い時代ですよね。で、その1974年……僕は67年生まれなんですけど、ずーっとそのビジュアルが残っていて、それは何なのか? と。でも何なのかわからないから、じゃあこれを歌にすることで、あのビジュアルのイメージを自分の人生の中に位置づけられるのかな、みたいなところなんです。

──それはポジティブなイメージですよね、きっと。

ポジティブでしたね! うん。でもあの時代はポジティブでしょ? 小学生としても前途洋々でね(笑)。俺すごい賢くてモテる子だったんですよ。引っ越しのたびに女子からやたらラブレターもらう、みたいな(笑)。

あんたが作っているボーダーはつまんねえぞ

──という充実したアルバムなんですが、ではタイジさんが事務所の社長的観点に立ち返った場合、今後THEATRE BROOKは音楽シーンに対してどうアプローチして、どうサバイブしていかなきゃいけないと思います?

うーん……やっぱりライブをいっぱいやらねばならないと思います。今って全体的にCDの売り上げは落ちてますけど、ライブに来る人は変わってないんですよね。ある意味、90年代の頭ぐらいに戻ってると思うんですよ。バブルがどかーん! ってなる前ぐらい? だからどこかでは健康になったのかなっていう気もしてるんです。いいバンドはいいバンドとしてサバイブできると思うんですよね。そういう意味でTHEATRE BROOKみたいなバンドにとって、パイロットとなるのがこのアルバムなんですよね。で、それを持ってライブを回して……そこではCDよりも膨れ上がったライブが展開されるわけで(笑)。それで各地でオーディエンスをお腹いっぱいにして、「いやあ、THEATRE BROOKはやっぱいいなあ! 日本の宝だ!」と思わせて、おみやげでTシャツを買って帰ってもらうと(笑)。

──あはははは(笑)。

で、音楽シーンの中では……後輩のミュージシャンで、音楽に対する姿勢が似てる奴と仲良くなっちゃってるんですけど。SOIL(& THE“PIMP” SESSIONS)とかって最近妙に仲良くなってるし。そういうのに対して、元気良くって、演奏キレキレな面白ぇ兄さん? 「ああ、こういう人いたら安心!」「攻めてんなー、先輩!」みたいな存在であることがTHEATRE BROOKの仕事だと思う。売り上げは大事なんだが、やはりロックなので、まずは「自由であるのだ!」ということを説いていきたいですね。「あんたが作っているそこにあるボーダーはとてもつまんねえぞ!」みたいなことを言っていたいなと思いますね。

──なるほど! カッコいいです。

うん。景気悪いから、小さめになるのよね、全体が。当然なんやけど。でもそんな時代だからこそ、ロックスターにはドン! と夢と理想と自由を歌ってほしいと思うでしょ? そういう意識はすごくあるんですよね。

──この前も使命感ということを話してもらいましたけど、やはり「自分らが踏ん張らなくてどうする!」みたいなところですか。

うん、だと思うんですね。で、THEATRE BROOKってそういう意味で言うと、すげえ信頼できるブランドだと思うんだよね。音楽に対する知識とか姿勢とか。そうそう、こないだもARABAKI(ROCK FEST.10)の清志郎トリビュートセッションで、ギターは俺だけで、kyOnさんとエマーソン北村がキーボードで、tatsuと宮川(剛)くんがリズム隊で……良かったんですよね。すごい楽しくって、すげえいいバンドになったし、けっこう感動しちゃって。CHABOさんに「清志郎も喜んでるよ」みたいなこと言ってもらえたし。

──そうですね、あれは盛り上がりましたね。

そうそう。で、ああいうことがあると……「自分もいつの間にか日本のロックの大事なところにいるんだなあ」って思うようになりますよね。だから「その中でちゃんとロックスターやんなきゃなあ!」ということは強く思っています。

──ほんとはしんどいけれども(笑)。

うん。うちの事務所も、発足と同時に存続の危機なんですけど(笑)。でも「やらなきゃな」って思ってますね!

ニューアルバム「intention」 / 2010年6月9日発売 / Epic Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円(税込) / ESCL-3450~1 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] / 3059円(税込) / ESCL-3452 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. お尻をひっぱたけ!
  2. SNAKE BOOTS
  3. 明日のかけら
  4. イカロスの大地
  5. 裏切りの夕焼け -Album Ver.-
  6. 恋人よ
  7. '74年の日曜日
  8. 大気圏突破
  9. 未来を今
  10. 旅人と踊り子
  11. 夢とトラウマ
  12. 理想のオレ
初回盤DVD収録内容
  1. ツァラトゥストラはかく語りき
  2. SNAKE BOOTS
  3. ぜんまいのきしむ音
  4. 聖なる巨人
  5. まばたき
THEATRE BROOK(しあたーぶるっく)

佐藤タイジ(Vo,G)を中心に、1986年に結成されたファンクロックバンド。インディーズでの活動を経て、1995年6月にミニアルバム「CALM DOWN」でメジャーデビュー。ファンクやヒップホップ、ロックといったありとあらゆるブラックミュージックの要素を取り入れたサウンドが、好評を博す。1997年にはクリストファー・ドイルの映画「タイフーンシェルター」のサウンドトラックを担当。その後も精力的な活動を展開するが、2007年12月のライブツアーをもって2年間ライブ活動を休止。2009年末に満を持して活動を再開し、2010年2月ニューシングル「裏切りの夕焼け」をリリース。現在のメンバーは佐藤タイジ(Vo,G)、中條卓(B)、エマーソン北村(Key)、沼澤尚(Dr)。