音楽ナタリー PowerPush - Superfly

越智志帆の中に生まれた“変化”

Superflyが5thアルバム「WHITE」を発表した。越智志帆自身が「どこからどう見ても変化作ですね」と認めるほど、その歌唱やサウンドから変化が感じられる本作。今回のインタビューではその変化の理由や過程にスポットを当て、彼女の思いをじっくりと聞いた。また、アルバムの初回限定盤に付属するミニアルバムで桑田佳祐、竹内まりや、井上陽水、RCサクセション、佐野元春の楽曲をカバーしたというトピックにも触れた。

取材・文 / 宇野維正 インタビュー撮影:Aki Ishii

「Force」を作り終えて自分の中が空っぽに

──今回のアルバム「WHITE」、これはもう間違いなく変化作と言える作品になってますね。

どこからどう見ても変化作ですね。はい(笑)。

──これまでになく多くのミュージシャンが作曲に関わっているのも目を引くポイントではありますが、何よりもそんなバラエティに富んだ曲に導かれるように志帆さんの歌の表情がとても豊かになっているのが印象的で。冒頭の「White Light」の歌が始まった瞬間なんて、美空ひばりさんが頭をよぎりましたよ。

えっ! 初めて言われました!

──「白い光」というより、もう「真赤な太陽」みたいな。

なるほど(笑)。うれしいですね。

──まず、このような変化を感じさせるアルバムに至った経緯から聞いていきたいんですけど。

前作の「Force」を作り終えたあと、これまでとは違って自分の中が空っぽになった感じがあったんですね。全部を出し切ったというか。

──ある種の燃え尽き症候群みたいな?

うーん、もちろんその後のツアーとかもすごく充実したものだったし、手応えもあったんですけど、それまでは「自分とはなんなんだ?」って自分のことを見つめて、等身大の自分を表現することを目指してきたんですけど、「Force」のときは「もう見つめるところないな」ってくらい見つめ倒しちゃったんですよね(笑)。そうしたら、逆に自分のことがもうわからなくなっちゃって。精神的にも不安定になったりもして。だから、今回は自分のことを見つめるというよりは、もっとポジティブで楽しく歌える作品を作りたいと思ったんです。そうしないと、いいオーラをまとってステージに立つことができないんじゃないかって。

──なるほど。そこはSuperflyの表現にとって重要なところですよね。

今まではなるべく周りから影響されないように、外部からの刺激をあまり受けないように、自分自身を守ってきたところがあるんですね。スタッフも含めたSuperflyというチームとしても、そういう方法でやってきて。でも、これからはその閉ざしていた扉を開いて、いろんなものを受け入れていこうと。1回グジャグジャになってもいいから、外からの刺激を受けてみようというのが本作の出発点。だから、何色にでも染まることのできる白い心を表す「WHITE」というのが作品のテーマになったんです。

私、気を抜くと本気になっちゃうんです

Superfly

──これまでSuperflyの音楽には「ストイックに自分を突きつめていく」というイメージがあったと思うんですけど、それが志帆さんにとって負担というか足かせにもなってきていた?

もともと普段の私はそんなに意志の強い、はっきりと「私はこう!」って言えるような人間じゃないんですね。でも、Superflyとして表現するときには、フロントに立つ人間としての責任やリーダーシップみたいなものを自分から抱えてやってきたところがあるんですよ。普段はあまりないからこそ、必要以上に「もっと強い意志を持たなきゃ」って自分を奮い立たせてきて。

──つまり、Superflyという鎧を着て闘ってきた感じ?

そういうところもありますけど、その鎧を着て人前で歌ったときに、本当にそこに強いエネルギーが生まれることに自分で気付いちゃったんですよね。だから、そこに嘘はないんですよ。ただ、そうしていくうちにリスナーからはより強いエネルギーを求められて、それに全身全霊で応えて……って、その連鎖になっていって。終わらないループにハマっちゃったって感覚ですね。だから、1回区切りをつけないと自分がもたないと思った。

──とはいえ、今回のアルバム「WHITE」でSuperfly固有のエネルギーが散漫になっているかというと、まったくそんなことはなくて。

私、気を抜くと本気になっちゃうんですよ(笑)。

──はははは(笑)。

普段はそんなことないんですけど、Superflyをやるとなるとどうしても全力になっちゃうんですね。ミュージシャンの方に提供していただく曲も、その曲自体に情熱があるもの、強い念やエネルギーがあるものと交わることを求めてしまうんです。それで、結局すごく濃いミュージシャンの方たちのすごく濃い曲が詰まった作品になりました(笑)。

ニューアルバム「WHITE」 / 2015年5月27日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD2枚組] 3888円 / WPCL-12089~90
通常盤 [CD] 3240円 / WPCL-12091
収録曲
  1. White Light
  2. Beautiful
  3. 色を剥がして
  4. On Your Side
  5. A・HA・HA
  6. Woman
  7. 脱獄の季節
  8. リビドーに告ぐ
  9. 愛をからだに吹き込んで
  10. Live
  11. Space
  12. 極彩色ハートビート
  13. You You
  14. いつか私は歌をうたう
初回限定盤付属ミニアルバム収録曲
(カッコ内はオリジナルアーティスト)
  1. Blue ~こんな夜には踊れない(桑田佳祐)
  2. Sweetest Music(竹内まりや)
  3. 帰れない二人(井上陽水)
  4. スローバラード【Live】(RCサクセション)
  5. 楽しい時-Fun Time(佐野元春)
Superfly「WHITE」リリース記念 Free Live

2015年5月30日(土)大阪府 大阪城西の丸庭園
OPEN 16:00 / START 17:00 / END 18:00(予定)

※雨天決行、荒天中止。

Superfly(スーパーフライ)

2004年に結成。越智志帆のパワフルかつソウルフルな歌声、60年代、70年代の洋楽を思わせるブルージーなサウンドが注目を集め、2007年4月にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。その後、多保孝一がコンポーザーとしての活動に注力すべく表舞台から退き、越智のソロユニットとなる。2008年に発表した1stアルバム「Superfly」、2ndアルバム「Box Emotions」がともにチャートで1位を記録。2009年12月には初の日本武道館ライブを成功に収め、その後も多くのヒット曲を連発。2011年には3rdアルバム 「Mind Travel」 でアルバム4作連続1位を達成し、初のアリーナツアーも大成功に収める。2015年5月、2年8カ月ぶりのオリジナルアルバム「WHITE」をリリースした。