石原夏織インタビュー|「ASOVIVA!!!」は“楽しい”に全振り、新たな魅力を解放した2nd EP

昨年7月発表の1st EP「As I Am」で初めて作詞に挑戦し、等身大の自分を表現した石原夏織。彼女にとって約8カ月ぶりの新作となる2nd EP「ASOVIVA!!!」は、“遊び場”と“VIVA”をかけ合わせたタイトルの通り、彼女の新たな魅力が垣間見えるキュートでポップな楽曲が並んでいる。

音楽ナタリーでは「ASOVIVA!!!」の発売を記念して石原にインタビュー。「As I Am」のリリースを経て得たものや、「ASOVIVA!!!」でポップに振り切ったわけ、同作に作家として参加した児玉雨子、つむぎしゃちとのエピソード、ソロアーティストとしての今後の展望を語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 梁瀬玉実

自分の気持ちを言葉にした「As I Am」を経て

──1st EP「As I Am」のリリースから8カ月ほどが経ちました。同作の表題曲で石原さんは初めて作詞をされましたが、振り返ってみて、ご自身の中でどんな経験になりましたか?(参照:「As I Am」特集|石原夏織×フワリ対談

私はそれまで、自分の気持ちを言葉にして曲に乗せることってすごくハードルが高くて、一生できないと思っていたんですが、経験してみたことで「意外とそうでもないかも」と気楽に感じられた部分がありました。その一方で、「As I Am」自体が明るい歌詞ではなかったので、ファンの皆さんがどう受け取るのかが心配だったんです。でも、私のことを長い間応援してくださっている方も多いので、「確かにあの時期、すごく悩んでそうなのは見えていたよ」という肯定的な声をたくさん聞けたうれしさもあって。よりファンの皆さんとの距離が近付きましたし、自分からもっと発信したり、表現したりしてみたいなと意識が変わった経験でした。

石原夏織

──作詞を通して自分の過去を振り返ったり、それこそ「As I Am」ではアーティストデビュー曲「Blooming Flower」を新たなアレンジで歌った「Blooming Flower with Piano」も収録されていました。初心に帰るきっかけにもなったでしょうし、あの頃できなかったことが今はできるようになったという感覚もあるのではないでしょうか。

例えばライブのことで言うと、かつては難しいと捉えすぎて必死だったことに、最近は余裕を持って向き合えているような気がします。そういう意味では、以前はできなかったことができるようになったのかも。

──中にはハードルを高く設定して向き合ってきたからこそ、時間が経つにつれてできるようになっていたこともありますよね。

本当に最近は「前回はここ、めっちゃ苦戦したのに、気付いたらすんなりできるようになった!」というようなことばかりで。ハードルを低く見積もったら、本番で失敗したときに対処できないこともたくさんあるかもしれないので、決して悪いことではなかったんだなと、今になって感じます。

──私生活においても、目標を高く設定しがちだったりしますか?

そうかもしれないです。でも、ハードルが高いこともお仕事だからこなせることもやっぱり多いんだなと思って。プライベートだったら立てた目標が高すぎて、3日であきらめることも全然ありますしね(笑)。そのあたりの目標設定が実は下手なので、手近な目標を見つけることも最近の課題だったりします。

“楽しい”に全振り

──楽曲やアートワークからも石原さんの自然体な姿が印象的だった「As I Am」から一転、今回の「ASOVIVA!!!」はすべてにおいて振り切りましたね。

はい(笑)。今まではナチュラル寄りのものが多かったと思うんですけど、「As I Am」でそちら側に思いきり振り切ったからこそ、「次はどんな自分を見せても皆さん楽しんでくれるはず」と一歩踏み出せるきっかけになりましたし、せっかくやるなら全振りで挑もうと、ジャケットでもツインテールにしてみました。

──確かに、ソロ活動ではキュートなイメージってあまりなかったですものね。でも、さっきの作詞の話ではないですけど、どんな自分でもファンの皆さんが肯定してくれるという安心感が得られたからこそ、迷わずできたと。

もちろん、こういうコンセプトでやる理由もチームみんなで考えてはいるんですけれど、急に方向が違うものであってもファンの皆さんは「意味なくこれをやっている」とは捉えることはないだろうなって。そう信じられることが一番大きかったです。

石原夏織

──では、改めて「ASOVIVA!!!」という作品のコンセプトや意図について、聞かせていただけますか?

「As I Am」で自分自身をより深く表現できましたし、加えてここ2年くらいはしっとりした曲のイメージを浸透させることができたと思うんです。ただ、それだけじゃない自分というのも存在しているわけで、デビュー初期ぐらい、あるいはそれよりも前を含めると、今表現しているものとは違うベクトル……“かわいらしい石原夏織”を求めているファンの方がいらっしゃることも肌で感じていました。自分自身、大人になるにつれてそういう表現をちょっとだけ恥ずかしいなと感じることもありましたし。ただ、ある程度年齢を重ねて、自分自身と向き合うきっかけをくれた「As I Am」を作ったことで、「実は、ああいうかわいらしい表現も好きかもしれない」という自分の気持ちに気付くことができた。だったら、その気持ちを形にしてみることもいいんじゃないかと思って、今回は“楽しい”を表現しようとみんなで決めました。

──しかも、フルアルバムではなくEPというボリューム感というのもいいのかもしれませんね。

そうだと思います。シングルだと少なすぎるし、かといって10数曲あったら人によっては胸焼けしてしまうかもしれません(笑)。これも5曲前後だからこそできるテーマかなと思います。

石原夏織

“遊び場”と“VIVA”

──「ASOVIVA!!!」は“遊び場”と“VIVA”をかけ合わせた造語ですが、この2つのワードは石原さんにとってどんな意味を持つものですか?

“遊び場”という言葉に対しては、私はライブのイメージが大きくて。ライブはファンの皆さんと「楽しくて幸せだね」みたいな気持ちになる場所なので、今後ライブで映える曲を作りたいというのがまず1つありました。“VIVA”は……「イエーイ!」とか「ハッピー!」みたいな(笑)、幸せな気持ちになったり、思わず笑みがこぼれたりするイメージで。仕事や学校に行く前に聴くと、ちょっと気持ちが軽くなるような楽曲たちを作りたいなと思って、最終的にこの2つの言葉をかけ合わせたわけです。

石原夏織

──収録された5曲からはすべて楽しさやハッピーさが伝わるものの、1曲1曲が持つ質感は少しずつ異なります。特にテレビアニメの主題歌でもある「We Can Do!!」と「星眼鏡」。この2曲がEPを制作するうえでの軸になっていたのかなと感じました。

まさにその通りです。それぞれをつむぎしゃちさん、児玉雨子さんに作詞していただいたんですが、「ASOVIVA!!!」というテーマと、1曲1曲異なる楽しいことを表現するという方向性が決まってから、ほかの曲もお二人に作詞をお願いすることにしました。

──「We Can Do!!」はモータウン調の跳ねたリズムが特徴で、「星眼鏡」は突き抜けるような爽快感のある楽曲と、そもそもこの2曲の時点で方向性がまったく異なりますものね。

どっちも“楽しい”のベクトルが違うというか。「We Can Do!!」は散歩が楽しくなるような、一緒に行進したくなるようなノリやすいリズムですし、「星眼鏡」はすごくキラキラしていて、楽しさを超えて感動のベクトルがありますしね。

つむぎしゃち、児玉雨子が「ASOVIVA!!!」をテーマに曲を書いたら

──つむぎさん、児玉さんに作詞をお願いする方針も、石原さんにとっては新しい試みになりました。

1つの作品を2人の作家さんにお願いすること自体初めてでしたし、何より「We Can Do!!」と「星眼鏡」を経たからこそ、このお二人に書いてもらったら面白いんじゃないかと思って。「ASOBO-YO 運命論序説」を雨子さんにお願いしたらどうなるんだろう? しゃちさんのワードセンスが「Yummy! Yummy!」ではどう生きてくるんだろう? あるいは「Little Humming Love」でお二人が合作したらどんな歌詞が生まれるのかな? 「ASOVIVA!!!」というテーマを通して、ファンの皆さんにどんな“楽しい”を届けられるのか、この試みが決まってワクワクしました。

石原夏織

──お二人とテーマのすり合わせはしたんですか?

お二人とも素敵な歌詞を書いてくださることはわかっていたので、あえて制限をかけたくなくて。なので、「Yummy! Yummy!」も「ASOBO-YO 運命論序説」もこちらから「絶対このテーマで書いてください」みたいなことはあえて伝えませんでした。ただ、例えば「Yummy! Yummy!」だったら「同じワードを繰り返すようなキャッチーさをちりばめてほしい」とか「ラップパートに破裂音を入れて、音を立ててほしい」とか、そういうことはお願いしました。