えま(Emma)、めにゅ(Menu)の2MCミクスチャーロックデュオ・EMNW(えむにゅー)が、1stアルバム「EMNW」をリリースした。
プロデューサー・Kubotyのもと、2024年3月の結成から「とりあえずやる!」の精神で突き進んできたEMNW。初のアルバムとなる本作は、新曲に加えてBOTS(Dragon Ash)や山嵐のメンバー、田浦楽(Crystal Lake)、Amano Tatsuya(Crossfaith)といったシーンの最前線を知る強力なゲスト陣を迎えて再録した既発曲も含む、現時点での集大成的な作品となっている。
音楽ナタリーでは、現在全国ツアーを開催中のEMNWの2人と、プロデューサーのKubotyにインタビュー。始動前にあった“令和のPUFFY”構想から本格的なミクスチャーロックへと舵を切った経緯や、豪華布陣によるアルバムの制作秘話、そしてLimp Bizkitのフレッド・ダーストをも巻き込むEMNWの“カマす”精神と野望について語ってもらった。
取材・文 / 荒金良介撮影 / 大橋祐希
当初は“令和のPUFFY”構想だった
──まず女性2MCによるミクスチャーロックを掲げたEMNWを立ち上げたきっかけは?
Kuboty お世話になっている方から「女の子2人でロックをやりたい」という話があり、俺がプロデューサーを任されました。当初の構想はすごくざっくりしたものでしたね。もともと俺はEmmaのことは知っていたので、もう1人を探そうと思い、3、4カ月ぐらいかけて5000人は見たかな(笑)。
Emma ははは! 数十人ですよね?(笑) 突然電話がかかってきたんです。「プロデュースすることになったから、やってくれない?」と。私は「ぜひやりたいです!」と即答しました。何をするかわからなかったのに(笑)。
Kuboty 当時は俺も何をやるのか決まってなかったから。
Menu え、じゃあ誰もわかってなかったんですね(笑)。
Kuboty とりあえずやる! これがEMNWの原点です。
Menu 私はSNSにCreepy Nutsさんのカバー動画を上げたことをきっかけに、ソニーのスタッフさんから声をかけられて。「プロデュースはKubotyさんなんですけど、オーディション受けてみない?」と言われました。最初は“令和のPUFFY”と具体例を挙げられたけど……それとはかけ離れた音楽性になりました(笑)。
Kuboty そういう曲も作ろうと思えば作れるけど……専門家には勝てないから。自分がやってきた中でどれだけ振り切れるかなと。さっき5000人と言いましたけど、実際には40人くらい見た中から決めました。実はロック以外のジャンルでの活動もお題としてあったけど、自分のルーツにないことをやってもベストを尽くせないと思いまして。自分のルーツにあり、なおかつ女の子2人がやったら面白いことをやりたかったんです。そこでいろんな曲を試して……そもそもこの2人の中にメタルのシャウト要素はないんですよ。でも今の子たちの多くはラップという歌唱法が標準装備なんですね。2000年代以降、J-POPの中にラップが入っているし、令和の子たちはラップがイケることがわかって、「ミクスチャーロックができるんじゃないか」と思ったわけです。
Emma 確かに物心付いたときからラップの音楽は親しみがありました。
Kuboty あと、自分のミクスチャーの原体験として「オガフェス(OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL)」で観た山嵐の存在が大きくて。日本のどのフェスに出てもイケると思うほどのカッコよさがあるし、パンクロックでは出せないグルーヴのうねりや縦ノリのパワーに衝撃を受けたんです。そんなパワーのあるジャンルを女の子2人で表現できたら、カッコいいんじゃないかと。
──女性2MCのミクスチャーロックと言えば、2000年前後に活躍したMissile Girl Scootが頭に浮かびます。EMNWもそのあたりの音楽がベースになっていますよね?
Kuboty 今日もDream TheaterのTシャツを着ていますが、俺は10代から20代前半にかけて出会った音楽を引きずっている人なんです。トラディショナルなものをやるのか、最先端をやるかで言うと、前者なんですよ。なので、ミクスチャーにおいてもKorn、Limp Bizkit、Rage Against The Machineはハズせないし、特にLimp Bizkitの「ウッドストック1999」のライブ映像をこれでもかと観てました。たぶん、2人はまだ生まれてないと思うけど……あのライブで食らいましたからね。あのフェス自体が社会現象になったから。
──Emmaさん、Menuさんはミクスチャーロックという言葉からどんなサウンドをイメージしました?
Emma 自分はその言葉さえ知らなかったです。でも調べてみたら、Dragon Ashさんの名前が出てきて、「あっ、これがミクスチャーロックなんだ」って。それはEMNWを始めてから知りました。
Menu 私もミクスチャーロックという言葉を知らなくて、EMNWを始めて、いろんなライブに遊びに行く中で自分の好きなバンドが増えていきました。もともとミクスチャーロックのイメージが自分の中になかったけど、聴いていて気持ちいい、楽しいという共通点があって、今はなんでもありのジャンルというイメージですね(笑)。
Kuboty シンプルにミクスチャーと言っても幅広いからね。
ライブを重ね、曲を増やし、事故に遭う中で
──EMNWはこれまで精力的にライブ活動を行ってきました。最初と比べて、自分たちのパフォーマンスは変わってきましたか?
Emma さっきも話に出ましたけど、EMNWはとりあえず行動から始めるスタイルなんですよ。最初のライブはよくわからず、とりあえずステージに立ってやってるという感じで。でもミクスチャーロックを軸にしたライブをやっていくうちに、最近は「自分たちはこういうライブをしたい!」というアイデンティティが確立されてきました。いろんなタイプの曲があって……ミクスチャーロックにしようと決めたきっかけは、私がKubotyさんに「激しい曲のほうがライブでも熱量を込めやすいので、一度振り切ってやってみたい!」と伝えたことなんです。それからすごく変わった気がします。2024年9月のことですね。
Kuboty そうだね。1stシングル「調子どうだい?」を出す前にライブができるくらいの曲数はあったんですよ。2024年4月に最初のライブをやりましたからね。
──「百ゼロ」という曲の中に「2024 September 2人で覚悟を決めたんだ 運命すらも変えた音楽 EMNWに重ねたミクスチャー」という歌詞がありますね。
Kuboty 俺とMenuが車で渋谷から下北沢に向かう途中に黒塗りの高級車に激突したことがあって。
Menu 事故っちゃいました。
Kuboty それが「百ゼロ」を作ったきっかけです。「どう考えても過失割合が100-0だ!」って(笑)。
──インドのミクスチャーロックバンド、Bloodywoodの来日公演(2025年5月)のオープニングアクトとしてEMNWが抜擢され、そこでKubotyと会ったときに、このステージのために「百ゼロ」を作ったと言ってましたよね?
Kuboty そうですね。歌詞の内容は黒塗りの高級車に激突したことがもとになってますけど、曲自体はオープニングアクトを務めることが決まってから作りました。ミクスチャーというより、トラディショナルメタルのツーバスドコドコの曲を作ろうと。Bloodywoodと戦えるようにEMNWの幅を広げたかったんです。ラップに加えて、2人のハイトーンも入れましたからね。
──話を戻しますが、Menuさんは最初と現在でパフォーマンスに変化は感じますか?
Menu Emmaが言ったように、最初の頃はステージに立つだけで精一杯だったし、何が正解かわからなかったんです。でも場数を踏むにつれ、お互いの役割がわかってきました。最初の頃よりも2人のコントラストがはっきりしてきたかなと。全然まだまだですけど、これがもっとはっきりしたら、EMNWとしてすごくなるんじゃないかと思ってます。
Emma いろんなアーティストさんのライブに刺激を受けて、自分たちのパフォーマンスに取り入れているところもあります。
Menu ライブを観たときに2人でよく話すんですよ。「あの動作カッコいいよね、マネしようよ!」って(笑)。
Emma 2人のコントラストで言うと、まずは声質が圧倒的に違う。私は高めで、Menuは低めだから、わかりやすいかなと。あと、ビジュアルも私が黒髪、Menuが派手髪ですからね。
Menu 途中から派手髪になりました(笑)。
Emma JESSE(RIZE、The BONEZ)さんがステージでジャンプする姿を観て、「こんなことをやってもいいんだ!」って思ったんですよね。私はライブでピョンピョン飛び跳ねたりしてますけど、ただマネしても芸がないし、ダンスをやっていたからその経験を生かして何かできないかなと思って試しているところです。あと、Menuはフレッド・ダースト(Limp Bizkit)へのリスペクトで、赤いキャップを被っています。
Menu 今日も持ってます! アイデンティティ!
Kuboty 完全な受け売りですけどね(笑)。
──90年代後半から00年代にかけて、Limp Bizkitだけでなく、あのシーンのバンドのライブ会場に行くと、赤キャップを被ったファンがたくさんいたものです。
Menu ははは!
Emma 今はEMNWのお客さんにも赤キャップの人、います! 継承されたアイデンティティ!
最新のEMNW詰まった1stアルバム
──今回のインタビューの本題になります。ついに1stアルバムが完成しましたね。
Kuboty まず先に出た9枚のシングルを組み合わせて、ここ1、2年のEMNWを総括しつつ、このアルバムでEMNWの曲を初めて聴く人もたくさんいると思うから、集大成的な作品を意識しました。今のEMNWだとハマらない曲があったので、井上ジョーくんに新録のアレンジをお願いしました。それが「My Right Time」です。
Emma その曲は最初のライブでもやっていて、グループの方向性が変わってから、しばらくライブでやらない時期もあったんですよ。その意味では熟成された曲ですね。歌詞も変わって、改めて録り直せてよかったです。
Menu この曲は歌詞を覚えるのが大変でした。
Emma フロウも全部変わったから、新鮮な気持ちで取り組めましたね。
Kuboty 「Get it, Get it」は2人に歌詞を書いてもらい、QON(ex. Survive Said The Prophet)にアレンジをお願いしました。“ゲリゲリ”(「Get it, Get it」)と呼んでいて、声に出すだけでお腹が痛くなりそうですが。
Menu はははは!
Kuboty 「Get it, Get it」のトラックはQONで、フロウやメロディは2人が考えたんですよ。作詞もこんなにできるんだ!って驚きましたし、収穫でしたね。
Menu Kubotyさんからトラックが来て、2時間後には全部できてました(笑)。自分たちがやれることをKubotyさんに見せようぜ!って。私たちなりにミクスチャーロックにたくさん触れてきて培った感覚もあるし、もともと曲を作ることも好きでしたから。
Emma そう。個々で作詞、作曲はやっていたんですよ。ただ、EMNWとして2人で曲を書くのは初めてで。いろんなライブを観て、それを自分たちなりに消化して、ミクスチャーでこういうものがあったらカッコいいかなというイメージで制作しました。個人的に「Get it, Get it」のこだわりがあって、どちらかがメロディを歌って、もう一方がラップしているという構成を取り入れたかったんです。
Kuboty この曲はよかった。「ぼそっとしてっと掻っ切るその喉」の歌詞が怖いなと(笑)。
Menu (笑)。いかつい人でありたいなと。私はメロディを作るときにニセモノ英語をハメるんですけど、その音にしっくりきて、そこに日本語を当てはめたんです。それでああいう暴言になりました(笑)。今の時代性もあるかもしれないけど、活動する中で、とがっているなと思う人にあまり出会ってなくて。私たちはとがっていたいし、自分たちにしかできないとがり方をしていきたいですね。
Kuboty すごくいいね。
Emma EMNW自体が珍しがられるというか、ちょっと世の中の流れと違ったことをやっている感覚もあるんです。2人のルーツにない音楽をやっていることで、いわゆる自分たちのやりたいことをやっているバンドとは違うものになっていますし。ほかとは違うことに対して、「それでいいじゃん、それが私たちのよさだし、とがったもの勝ちだな」って。それはマインドとして今もこの先もずっとあると思います。
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激しくて重いだけがミクスチャーにあらず



