自分たちがいるジャンルからどう抜け出すか

──ちょっと新作から話がそれますが、最初にシドを結成した頃に、こういうバンドにしたいというイメージってありましたか？

明希　特に何かに縛られず、自由にやりたいというのはありました。常に良いメロディがあって、そこに遊び心のあるアレンジを取り入れるというのは、結成当時から今に至るまでずっと続いてますね。

──自分たちが今やりたいことをどんどんやっていきたい？

明希　そうですね。とにかく今が一番って感じでずっときてるので。

──その現在形がこのアルバム？

明希　そうなっていると思います。

──歌詞についても話を訊かせてください。シドの歌詞は情景をイメージしやすいと思うんです。それはメロディに乗せたときはもちろんなんですけど、歌詞だけを読んでも物語としてちゃんと成立していて。歌詞を書く際にもそのあたりは意識してるんですか？

マオ　シドを結成した頃は自分たちがいるジャンルのシーンからどう抜け出すか、どう自分らの個性を確立していくか、いろいろ葛藤して。ジャンルの枠を飛び越えれば同じような歌詞のスタイルのアーティストはいたんですけど、僕らのジャンルではあまりいなかった。僕がやりたかったのはちゃんと物語性があるもので、ジャンル関係なく誰が聴いてもわかりやすい言葉で伝えるという部分はすごく意識してます。

──ジャンルの枠から外に出ていって、ほかのジャンルのアーティストと勝負しようとは思いませんでしたか？

マオ　当時はそんな大胆なことは考えられなかったし、ライブハウスにお客さんを呼ぶので精いっぱいだったので。でも、そこまで計算高いものではないですけど、徐々に意識が変わってきたとは思います。最近はテレビの音楽番組でいろんなジャンルの人と共演するので、余計にそう思いますね。

僕らみたいなバンドに対する偏見をなくしたい

──アルバム初回限定盤特典のDVD「ドッキリ番組 "CRY-MAX" SHOW」は、どんな内容かが非常に気になるタイトルですね。

マオ　これは、例えば僕らのイメージをどう壊すか、そのイメージでDVDを観た人がどうドン引きするかっていう。良い意味でですけど（笑）。こういうバンドって今までいなかったと思うんです。

──シドってライブのMCでもかなり笑いにこだわってる気がしますし。

マオ　基本、すごく笑いに貪欲なバンドなので、MCでも普通に「盛り上がっていこうぜ！ 次行くぞ、ウォーイ！」だけじゃ終わらないバンドなんです。音楽はCDで真面目にやってる分、その逆のふざけてる僕たちの良さを伝えたいなと。それがこのDVDなんです。かなり面白いですよ。撮影が東京ドーム公演（2010年12月11日）の直前だったので、かなりいいテンションで挑んでますね。

──イメージを大切にして笑いの要素を一切出さないバンドもいますが、そういう意味ではシドは本当に貪欲ですよね。

マオ　僕らみたいなバンドはやっぱり偏見を持たれがちなので、それをなくしたいんです。ファンの人からも「ビジュアル系は苦手だったんですけど、シドは面白いですね」という声をよく聞くし、そういうのがうれしいんですよ。その人はシドに出会わなかったら、たぶんずっと偏見を持っていたはずだし。ただ純粋に僕らがバカなだけというのもあるけど、それが認められてきたっていうのは単純にうれしいですね。

ツアーはファンと会える喜びを大切にしたい

──3月1日からは全国ツアー「dead stock TOUR 2011」も始まります。昨年末に初の東京ドーム公演を終えて、ライブに対する考え方や向き合い方で変わった部分はありますか？

マオ　特にライブのスタイルは変わってないですけど、もうどこでやっても大丈夫だなっていう自信はついたと思います。実は、ドームってさいたまスーパーアリーナと規模的にはそんなに変わらないから、気持ち的にあまり違わないかなと思いながら挑んだんですけど、やってみたら全然違って。やっぱりドームのあの光景は本当にすごかったし、またここでやりたいっていう気持ちがさらに強くなったし、本当に魅力的な会場でしたね。

──今回のツアーは、アルバムの楽曲がライブでどう表現されるのか、どう進化していくのかも見どころ、聴きどころかなと思います。

Shinji　本来はアコースティックギターを使っている部分で、持ち替えの都合でどうしてもアコギにいけないこともあるので、そこをどうエレキで、CDでの魅力を崩さずに表現できるか。そういった部分はライブアレンジの重要なところですね。

──なるほど。ちなみにライブの内容はすでに決まっているんですか？

マオ　もちろんアルバムの世界観をバッチリ伝えたいし、ライブはレコーディング作品を超えないとダメだと思うんです。だからすごく気を引き締めてやりたいですね。それと僕ら、ツアー自体が久しぶりなので、これまでのファンとの再会や初めてのファンとの出会いを大事にして、会えることの喜びを大切にしたいなと。そこがツアーの大きなテーマですね。