音楽ナタリー Power Push - 六弦アリス

エログロ、メタル、三國無双 “壁サー”がメジャーに叩き付ける意欲作

「コミックマーケット」などのイベントで“壁サークル”(会場の壁に沿ってブースの場所が割り振られる人気サークル)として名高い音楽同人サークル・六弦アリス。彼らは9月2日にニューアルバム「Secret Twilight Theater」を発表し、メジャーデビューを果たす。

音楽ナタリーでは、サークルの中心人物である六弦A助と櫻井アンナにインタビューを実施。ヘヴィメタルやプログレの要素とシンフォニックなサウンドを融合させた独特な音楽を作り続ける彼らの成り立ちや、現在制作中のメジャーデビュー盤のコンセプトなどを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 小坂茂雄

同人誌作家になろうと思ってた

──六弦アリスのディスコグラフィをさかのぼると、2006年に発表したアルバム「ファンタジア」のリリースから活動が始まっています。この頃はまだ六弦A助さん1人のユニットだったんですよね?

六弦A助 そうですね。もともと僕は音楽サークルをやるつもりではなかったんですよ。実は「六弦アリス」って名前は、僕がずっと絵を描く練習をしてて同人誌作家になろうとしてたときに考えたサークル名で。

──それがなぜCDを発表することになったのでしょうか?

A助 たまたま僕の友達でインディーズバンドやってる人がいて。そこのサブメンバーみたいな感じでアンナがバンド活動をしてた。

櫻井アンナ そうなんです。A助さんが私たちのバンドに曲を書いてくれて。

A助 僕も以前はバンドマンだったんですけど、引退して会社勤めをするようになって。会社を辞めて時間ができるようになってからは絵の練習してたんですけど、曲を書くのも頼まれましてね。そうやって曲を提供しているうちに引退してからのブランクが埋められていき、「ひさびさに音楽をやってみよう」と思って形にしたのが、2006年の「ファンタジア」だったんです。

六弦アリス

アンナ それでボーカルが必要だってことで私に声をかけてきて。

A助 知り合いに歌っている人がいなかったので、暇そうだった彼女と一緒にやることにして。だから当時の名義は「六弦アリス feat. 櫻井アンナ」だったんです。

“信用してない”と“得体が知れない”

──1stアルバム発表時はゲスト的な参加だったアンナさんが、正式に六弦アリスの一員になるのはいつ頃だったんですか?

アンナ サークルが活動を始めてから、ちょうど1年後ですね。

──何かきっかけがあったんですか?

アンナ きっかけがあったわけではなく、「まあいいか」って感じで……。

六弦A助

A助 確かね、「六弦アリス feat. 櫻井アンナ」っていうものの、「feat」っていうのが他人行儀な感じだなって思いまして。捉え方によっては、次の作品ではほかのボーカルに変わってしまうようにも見えるじゃないですか。名前もわかりやすいほうがいいんじゃないかなって思ったから「六弦アリス」って言うために彼女を一員にしたって感じですね。実は僕、裏で別のボーカルも探していたんですけど(笑)。

アンナ 知ってましたよ!(笑)

──とはいえ、お2人は9年近く一緒に六弦アリスとして活動を続けているわけで。

A助 彼女のことを最初はそんなに信頼してなかったんですよ(笑)。でも活動しているうちにだんだんいい部分が見え始めてきた。例えばCDが完成したときに写メで撮って、Twitterとかで見せるじゃないですか。彼女は撮るときに雑貨を置いたりして、ビジュアル的な訴求力にすごくこだわるんです。もともと僕はアーティストって音楽だけじゃダメだと思っていて、パッケージや映像、イラストとかを含めたエンタメをやりたかったんです。そんな中、意外と「彼女はイケるんじゃないかな」と思うようになりまして。

──対してアンナさんはA助さんをどういう人だと思っていましたか?

櫻井アンナ

アンナ 最初は得体が知れなくて、怪しい人だなって。

A助 フフフ(笑)。

アンナ 自分とは全然違うタイプの人なのと、A助さんは感情の起伏を見せる人じゃないのでどう接していいのかわからなかったのを覚えています(笑)。

A助 それ、よく言われるけど自分じゃ全然わからへん。

アンナ ファンの人からも「最初は怖かった」とか「怪しいから近寄れなかった」とか言われてるんですよ。

A助 そうそう。コミケとかで手売りするじゃないですか。僕1人だと、誰も来ないんですよ。それで試しに僕が席を外してどっか行って、彼女に任せたらものすごい量売ってたりして。

──最初は「得体が知れない」だったA助さんの印象はこの9年間でどう変わりましたか?

アンナ そうですね、なんかスルメに似てるなって思うようになりました。

A助 スルメ!

アンナ 最初は「固いだけやな」って思ってただけなんですけど、噛んでる内に「あ、そういうことか」ってわかるというか。

メジャーデビューアルバム「Secret Twilight Theater」 / 2015年9月2日発売 / とらのあなレコーズ
初回限定盤 [CD+DVD] / 3900円 / TRNA-10010
通常盤 [CD] / 2600円 / TRNA-10011
CD収録曲
  1. Twilight -序幕-
  2. 青いワルツ
  3. 眼球遊戯
  4. 深淵坂の首縊りの家
  5. 同級生
  6. 螺旋階段の悪魔
  7. 人間失格
  8. Moonlight Roses
  9. 蜘蛛と樹海
  10. 老執事の肖像
  11. トワイライト・デス・パレード
  12. 幸福論
  13. Everlasting
初回限定盤DVD収録内容
  • 「青いワルツ」MV
六弦アリス「Secret Twilight Theater」
2015年9月5日(土)東京都 原宿アストロホール
OPEN 16:30 / START 17:30
六弦アリス(ロクゲンアリス)

六弦アリス

メインコンポーザーである六弦A助と、ボーカルを担当する櫻井アンナの2人によるユニット。2006年12月にアルバム「ファンタジア」を発表し、音楽同人サークルとして活動をスタートさせる。2012年12月に発表した「不思議の国の音哲樂 まやかし篇 先見」を皮切りに、音楽と哲学を融合させたシリーズ「不思議の国の音哲樂」を展開。また2013年にはアニメ「Super Seisyun Brothers -超青春姉弟s-」にエンディングテーマ「私になりたい私」を提供。このほか、PCゲームへの楽曲提供も多数行っている。2015年9月にアルバム「Secret Twilight Theater」を発表し、メジャーデビューを果たす。