音楽ナタリー Power Push - Poet-type.M

「夜しかない街」で笑えるように

門田匡陽(BURGER NUDS、Good Dog Happy Men)のソロプロジェクトPoet-type.M(以下PtM)による、「夜しかない街“Dark & Dark”」を舞台にしたコンセプトミニアルバムシリーズの4部作が完結。その最終章となる冬盤「A Place, Dark & Dark -永遠の終わりまでYESを-」は、“音楽による新しいおとぎ話”を志向した「A Place, Dark & Dark」シリーズの集大成とも言うべき作品に仕上がっている。

今回ナタリーでは門田のソロインタビュー、そして、門田とともにPtMのサウンドの要を担う楢原英介(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE、YakYakYak)の対談を企画。「A Place, Dark & Dark」の世界観、サウンドメイクについてたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介

門田匡陽ソロインタビュー

この先バンドを組むことは、一生ないだろうな

──まずは昨年の秋に行われた「festival M.O.N -美学の勝利-」について聞かせてください。BURGER NUDS、Good Dog Happy Men、そしてPoet-type.M(以下PtM)と門田さんのバンド、プロジェクトが集うフェスだったわけですが(参照:「日本で一番好きなバンド」門田匡陽、3組のバンド率いた夢の競演)、手応えはどうでした?

楽しかったですけれど、同時に1つの事実が自分に突き付けられましたね。それは「この先バンドを組むことは、一生ないだろうな」ということです。バンドをやってもBURGER NUDSやGood Dog Happy Menを超えることはないだろうなと思ったし。バンドに対してはノスタルジーを感じるだけじゃなく、モラトリアム期間だったような感覚がありますからね。それから子供の頃からの仲間同士で世の中に打って出るための手段、というイメージを個人的には持っていて。バーガーとグッドドッグはまさにそうだなと感じたんですよね、PtMとの対比の中で。

門田匡陽

──思春期的なタームは完全に過ぎ去った、と。

ただ、そういう情熱で音楽をやっていきたいし、超えていきたいと思ってますけどね。あとは正直に言うと、フェスの時期の記憶がまったくないんですよ。あのタイミングでは冬盤(「A Place, Dark & Dark -永遠の終わりまでYESを-」)の曲が2曲くらいしかできてなくて、なんの余韻に浸ることもなく、すぐに制作に入って。

──秋盤(「A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-」)のリリース時にも、「この物語を完結できるかどうかわからなくなった」とコメントしてましたよね(参照:Poet-type.M「A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-」インタビュー)。

ええ。あのときにも話しましたが、“Dark & Dark”という架空の街と現実のリンク度が非常に強くなってしまったんですね。自分としては「A Place, Dark & Dark」シリーズの最後は笑って終わりたいと思っていたのですが、秋盤を作っている過程で「このままでは笑顔で終われないな」という気持ちになってしまって。

──現実の世界とは完全に切り離して、純粋なファンタジーとして終えることができなかった?

そうですね。音楽は娯楽であり、文化でもあるから、自分が生きている時代に対してなんらかの姿勢を示さないと意味がないんです。そうじゃないと、今音楽を作ってることに価値が生まれないから。「Dark & Dark」のテーマをハッキリ言ってしまうと、全肯定なんですね。ところが去年の秋のタイミングでは、当時の社会的な状況も相まってそれができなくなってしまって。冬盤の1曲目は「もう、夢の無い夢の終わり(From Here to Eternity)」という楽曲なんですけど、実はこの曲を作ったのは3年くらい前なんです。制作当時に、もしかたら自分は無意識に世界の終わりを表現しようとしてるんじゃないだろうかと思って、それが「Dark & Dark」シリーズに着手するきっかけになっているんですね。

──「Dark & Dark」のエンディングは最初から決まっていたと。

Good Dog Happy Menもそうだったんですよね。1stミニアルバム「Most beautiful in the world」(2006年)を作ったときに「Good Dog Happy Menの最後のパーツはコレだね」ってメンバーと話してたんです。まず理想郷を作って、そこに至るまでのバンド物語を、数作かけてみんなでやっていこうぜって。PtMでも無意識にそのやり方を選んだわけです。まず「もう、夢の無い夢の終わり(From Here to Eternity)」という曲を作って、「これはどういう物語なんだろう?」と自分で分析してみたら、「A Place, Dark & Dark」という単語が思い浮かんだっていう。そこで僕がやろうとしたのは、音楽による新しいおとぎ話の構築です。いきなり最後の部分が出てきて、「ここに至るまでにどういう歴史があったんだろう?」と考え、さかのぼって春盤(A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-)から作っていって。だから「もう、夢の無い夢の終わり」に「From Here to Eternity」、「ここから永遠に」という副題を付けたんです。

だったら、お前がこっちに合わせろよ

──なるほど。その状態から制作を進めるためには、何かしらのアクションが必要だったと思うのですが……。

まず、2週間ほど音信不通になりました(笑)。事務所からのメールや電話も全部無視。事務所のスタッフは本当に大事なことはバイク便で知らせてきましたけど、返信することはありませんでしたね。その時期は自分のルーツとなる音楽を振り返っていたんです。僕はリアルタイムで生まれている新しい音楽を聴き続けてきましたが、冬盤を作るにあたって音楽をやりはじめるきっかけになったアーティストの作品を聴き直してみて。たとえばデヴィッド・ボウイ、Japan、プリンス、トム・ウェイツなどですが、そこにSOSを求めたんですよね。

──再発見はありました?

はっきりと感じたのは、デヴィッド・ボウイもプリンスもトム・ウェイツも、生活のBGMではないということですね。彼らは音楽を通して「自分はこういう人間で、こういう世界観を持っていて、こういう物語を描くんだ」ということを聴き手にぶつけてくるわけです。そこで聴き手が何かを感じたとしたら「だったら、お前がこっちに合わせろよ」って言ってくるような感覚があるというか。それをPtMでもやるべきだと思ったんですよね。秋盤で感じていたことを冬盤ではブーストする必要があるなと。秋盤の制作中に僕はミュージシャン、アーティストとしてワガママになろうとしていたんですが、それを抑えるのではなく、むしろブーストするべきだと思ったんですよね。

──なるほど。それにしても2015年の終わりにデヴィッド・ボウイの作品をすべて聴き直すとは……。

門田匡陽

そういうアンテナがあるんですよね、僕には。3.11(東北地方太平洋沖地震)の前に「Blue Moon Shadow」(2011年発表のソロアルバム「Nobody Knows My Name」の収録曲)という曲を作ってるんですけど、それは3.11のあとに聴かれるべき音楽だったと思うんです。「A Place, Dark & Dark」シリーズで言えば夏盤(「A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない-」)の「ダイヤモンドは傷つかない(In Memory Of Louis)」という曲もそう。僕がずっと飼っていた猫が元気なときに書いた曲なんですが、その後亡くなってしまって。つまり、そのときに聴くべき音楽を事前に作ってしまっていたんですよね。さらに冬盤でも同じことが起きてるんです。「永遠の終わりまで、『YES』を(A Place, Dark & Dark)」がそうなんですけど……。

──冬盤のラスト、つまり、「Dark & Dark」の物語のエンディングとなる楽曲ですね。

これはボウイが亡くなったタイミングと重なって。過呼吸になるくらいつらかったんですが、僕はもう、デヴィッド・ボウイに「ありがとう」を伝える曲を作っていたんだなって。曲に込めた思いが自分自身を救ってくれたし、2015年の自分とは明らかに変わりましたからね。自分が作った曲にこんなにもリアルに救われたことはなかった。

──しかもこの曲によって、“Dark & Dark”の世界を全肯定することもできたっていう。

本当にそうだと思います。僕はアーティストとして非常に誠実なので、「Dark & Dark」のストーリーには関係なく、今の社会を肯定できないと思ったら「この物語は悲劇でした」という曲を作ってしまうと思うんです。その危険性はすごくあったし、2週間の空白期間と「festival M.O.N」のときも「『Dark & Dark』の最後に自分はどういう言葉を残すんだろう?」と考えていて……。それでも最後に「永遠の終わりまで、『YES』を」で終われたことは本当によかったと思うし、自分自身にとっても大事な曲になりましたね。

Poet-type.M ミニアルバム「A Place, Dark & Dark -永遠の終わりまでYESを-」
2016年2月17日発売 / 1620円 / I WILL MUSIC / PtM-1033
CD収録曲
  1. もう、夢の無い夢の終わり(From Here to Eternity)
  2. 氷の皿(Ave Maria)
  3. 接続されたままで(I can not Dance)
  4. 快楽(Overdose)
  5. 「ただいま」と「おやすみ」の間に(Nursery Rhymes ep1)
  6. 永遠の終わりまで、「YES」を(A Place, Dark & Dark)
Poet-type.M(ポエットタイプエム)
Poet-type.M

BURGER NUDS、Good Dog Happy Menの門田匡陽によるソロプロジェクト。2013年4月に活動を開始し、同年10月にアルバム「White White White」を発表した。2015年1月に行われた“独演会”「A Place, Dark & Dark -prologue-」では、「夜しかない街の物語」というコンセプトを掲げ演奏。さらに同コンセプトを反映し、春夏秋冬の4部作で展開される作品集「A Place, Dark & Dark」の制作をスタート。4月に「A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-」、7月に「A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない-」、10月に「A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-」を発表した。2016年2月17日には4部作最後の作品となる「A Place, Dark & Dark -永遠の終わりまでYESを-」をリリース。そして物語の集大成となる独演会「God Bless, Dark & Dark」を4月17日に東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催し、物語を終結させる。