音楽ナタリー Power Push - Poet-type.M

「夜しかない街」で笑えるように

門田匡陽&楢原英介対談

「一緒にやってみたい」と思ったのは初めてですね

──楢原英介さんは「Dark & Dark」の制作のキーパーソン的な役割だったと思うのですが、楢原さんと門田さんが出会ったのはいつ頃なんですか?

楢原英介 最初はYakYakYakのライブのときですよね。

左から楢原英介、門田匡陽。

門田匡陽 僕がPtMの前身となるI Will Say Good Byeというユニットを、ドラムの水野雅昭と2人でやってたんです。それで楢やん(楢原)がやってるYakYakYakと新代田FEVERで一緒になったことがあって。楢やんがVOLA & THE ORIENTAL MACHINEでギターを弾いてるのは知ってたんだけど、そのときのライブがすごくよかったんですよ。静かで、青白い炎が美しく燃えているような感じで。きれいなアルペジオをずっと弾いてる曲もあったし、幅が広いギタリストなんだなって。僕、実はギタリストに対していい印象がなかったんですよね。BURGER NUDSでもGood Dog Happy Menでもギターは自分1人だったんですけど、それはカッコいいと思えるギタリストが周りにいなかったからなのかも。楢やんが初めてですね。「この人と一緒にやってみたい」と思ったのは。

楢原 そうなんだ(笑)。

門田 そのあと渋谷で弾き語りのライブに出たときも、楢やんと一緒になって。楢やんはTHE NOVEMBERSの小林祐介くんのサポートだったんですけど、そのときはバイオリンも弾いてたんです。「こういうこともできる人なんだ」ってすごく印象的だったし、その日に「一緒にやってほしい」ってオファーしたんですよ。最初の頃は全然目を合わせてくれない感じでしたけどね、楢やん。

楢原 僕はBURGER NUDSの頃から門田さんのことを知ってましたけど、あの時期の下北沢界隈のバンドの人は話しかけても「あ?」みたいな感じなんだろうな、っていう印象だったんですよ。門田さんも気難しいのかなって思ってたら、ズッコケるほど気さくな人で(笑)。

門田 ハハハハハ(笑)。

──PtMの制作に楢原さんが参加したのは春盤(「A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-」)からですか?

楢原英介

門田 最初のオファーはライブだったんです。2013年5月のPtMの始動ライブのときは、ドラムの(伊藤)大地にメンバーを集めてもらったんですよ。そのときのベースは伊賀航さん、鍵盤はgomesくんだったんですが、僕としては「PtMは門田匡陽とバックバンド、というふうにしたくない」という気持ちがあったから、自分の音楽的言語をわかってくれる人がどうしても必要で。そのときにPtMのギターは「楢やんしかない」って思ったんですよね。

楢原 ほかの現場もそうですけど、最初は曲を覚えるだけで必死だったんですよ。PtMのこともそこまで深く理解してなかったと思うし……。こちらからも意見を言うようになったのはリハのあとに飲みに行ったりして、そこでいろいろ話すようになってからですね。去年の1月31日のライブ(独演会「A Place, Dark & Dark -prologue-」)のときは「舞台は“夜しかない街”で、衣装もみんなで揃えて」とかガッチリしたコンセプトがあったし。

門田 楢やんは3歳のときからバイオリンをやっていて、ピアノも弾けるし、音大も出ていて。頭の中でいろいろなことを整理できるんですよね。僕の中でファジーになってることを鮮明にしてくれるし、メンバーに説明するときは譜面にしてくれるんですよ。価値観もすごく似てると思うし……。ボウイ風に言うと「やっと僕にとってのジェフ・ベックが見つかったよ」って(笑)。まさにそういう感覚。

ハンパなことはできないですよ

──春盤に関しては、楢原さんはギタリストとして参加ということですが。

楢原 うん、そうですね。

門田 春盤はほぼ個人の作業でしたからね。「White White White」(1stフルアルバム)のときと同じで、基本的には僕とエンジニアで作って、楢やんにはギターを弾いてもらって。

楢原 1月のライブが終わったあとくらいからは、できてくる曲に対して「もっとこうしたほうがいい」ということをけっこう提案したんです。夏盤からは制作にも関わったんですけど、すでにライブでやっている曲も多かったし、「こうしたほうがいい」と思っていたことを全部やらせてもらった感じですね。

左から門田匡陽、楢原英介。

門田 楢やんには「ミックス済みの音源より、門さんのデモ音源のほうがいい」って言われたことがあったんです。

楢原 デモのときに「いいな」と思っていたフレーズがなくなっていたり、ドラムやベースの音質が想像していたものと違っていたりしたんです。

門田 そういう細かいところまでちゃんとわかってくれていたんですよ。春盤の「唱えよ、春 静か(XIII)」だったら、「なんでクラップの音がこんなに小さくなってるんですか?」とか。1つひとつの指摘が明確だったし、僕にもわかりやすかったんですよね。

楢原 「White White White」も「春盤」も「ん?」って思うところはあったんですけど、そのときは「まあ、門田さんのプロジェクトだしな」って感じだったんです。

門田 去年の2月か3月だと思うんですけど、「門田匡陽が既存の音楽シーン、フェスやライブの在り方に“NO”を示している」という記事があるサイトで掲載されて。楢やんがそれを見て「これを言うんだったら、ちゃんと筋を通さないといけないです。ハンパなことはできないですよ」って。「デモ音源のほうがいい」という発言も含めて、だったら楢やんとガッチリやるべきだと思ったんですよね。楢やんは僕に気を遣わないしね。

──「デモ音源のほうがいい」もそうですけど、確かに率直なコメントですよね。ハッキリと自分の意見を言えるタイプなんですね。

楢原 それがいいときもあれば、悪いときもあるんですけどね(笑)。

Poet-type.M ミニアルバム「A Place, Dark & Dark -永遠の終わりまでYESを-」
2016年2月17日発売 / 1620円 / I WILL MUSIC / PtM-1033
CD収録曲
  1. もう、夢の無い夢の終わり(From Here to Eternity)
  2. 氷の皿(Ave Maria)
  3. 接続されたままで(I can not Dance)
  4. 快楽(Overdose)
  5. 「ただいま」と「おやすみ」の間に(Nursery Rhymes ep1)
  6. 永遠の終わりまで、「YES」を(A Place, Dark & Dark)
Poet-type.M(ポエットタイプエム)
Poet-type.M

BURGER NUDS、Good Dog Happy Menの門田匡陽によるソロプロジェクト。2013年4月に活動を開始し、同年10月にアルバム「White White White」を発表した。2015年1月に行われた“独演会”「A Place, Dark & Dark -prologue-」では、「夜しかない街の物語」というコンセプトを掲げ演奏。さらに同コンセプトを反映し、春夏秋冬の4部作で展開される作品集「A Place, Dark & Dark」の制作をスタート。4月に「A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-」、7月に「A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない-」、10月に「A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-」を発表した。2016年2月17日には4部作最後の作品となる「A Place, Dark & Dark -永遠の終わりまでYESを-」をリリース。そして物語の集大成となる独演会「God Bless, Dark & Dark」を4月17日に東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催し、物語を終結させる。

楢原英介(ナラハラエイスケ)
楢原英介

アヒト・イナザワが中心となって結成されたVOLA & THE ORIENTAL MACHINE、仲俣和宏(downy)によるロックバンド・YakYakYakのギタリスト。鍵盤、バイオリン奏者としても活動を行っている。Poet-type.Mには2013年5月に東京・新代田FEVERで行われた初ライブから参加。1stアルバム「White White White」でも演奏メンバーとして名を連ね、4部作「A Place, Dark & Dark」シリーズでは夏盤「A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない-」から門田匡陽とともにサウンドプロデュースを手がけている。