音楽ナタリー Power Push - ORESAMA

取り戻した自信

ORESAMAが新曲「『ねぇ、神様?』」を完成させた。

ORESAMAとして活動する傍ら、その正体を隠して、カバー曲やオリジナル曲を歌唱した音源を音楽SNSアプリ「nana」に400曲以上投稿していたメンバーのぽん(Vo)。ある日、自身のブログ(参照:わたしのこと。|ぽん|note)にてその事実を打ち明け、ファンや「nana」のユーザーを驚かせた。ORESAMAが思うように活動できず悩んでいた彼女は「nana」に楽曲を投稿することで自信や歌を好きな気持ちを取り戻していったとのことで、「『ねぇ、神様?』」にはその思いが赤裸々につづられている。

今回音楽ナタリーでは、同曲の完成を記念してORESAMAの2人へインタビューを実施。また本特集には、8月11日に東京・Zepp DiverCity TOKYOにて行われた「nana」主催のライブイベント「nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D」でのフォトレポートもあわせて掲載している。メンバーが出演する初の実写MVにも注目して、特集を楽しんでほしい。

※本文中「『ねぇ、神様?』」の正式タイトルは、二重カギカッコが一重カギカッコの「ねぇ、神様?」。

取材・文 / 小林千絵 撮影 / 小坂茂雄

突然のメジャー契約破棄、戸惑いの中で出会った「nana」

──ぽんさんは昨年の12月から音楽SNSアプリ「nana」で、カバー曲やオリジナル曲を歌唱した音源を、通算400曲以上投稿していたんですよね。新曲「『ねぇ、神様?』」について伺う前に、「nana」に投稿することになった経緯から教えてください。

ぽん(Vo)

ぽん(Vo) 事情は詳しく話せないんですが、2014年12月にシングルを1枚リリースしただけでメジャーレーベルとの契約が打ち切りになってしまったんです。これからもっとたくさんの人に聴いてもらえると思っていたんですけど、そこでブチって終わってしまって。そのときに「nana」と出会いました。ORESAMAとしてライブやリリースを続けるのはもちろん大切なことですけど、そのほかにも何かできないかなと思っていた機会だったので、これだと思って投稿を始めました。

──どうして「nana」だったんでしょうか?

ぽん 私は楽器が弾けないので、1人での活動は限られちゃって。でも「nana」は別のユーザーが投稿した演奏に、歌を乗せて投稿することができるんですよ。だから「ここなら私でも歌わせてもらえる!」と思って。「nana」と出会ったその日から毎日投稿を始めました。多いときは1日に4曲くらい投稿してましたね。とにかくたくさんの人に聴いてもらえる機会がほしかったので。あとは「nana」のユーザーは10代が多かったので、今までとは違うフィールドの人にも私の歌が届けられるというのも大きかったですね。

──プロのアーティストが正体を隠して投稿するということに抵抗はなかったですか?

ぽん ありませんでした。むしろ「何者でもない私の歌は、人に聴いてもらえるか」という自分への挑戦というか。

──小島さんに相談はしていたんですか?

ぽん 相談してないです。

小島英也(Programming, G) 勝手に始めてました(笑)。

ぽん 打ち明けてからは、ときどき投稿した音源を聴いてくれてたよね。

──小島さんは、投稿を続けるぽんさんをどういう気持ちで見ていました?

小島 メジャーを離れたときの苦しい気持ちはもちろん僕も同じだったし、ぽんちゃんが歌が好きだというのもよく知っていたから、「nana」での投稿を始めることには賛成でした。始めてからすぐ、毎日3、4曲を上げていたので、正直「キツくならないといいな」という心配はありましたね。

──結果、半年で400曲以上です。

小島 続いても1、2カ月かなって思ってたところが、これだけ長く続いて。しかも400曲も。「本当に歌が好きなんだ」ということを僕も再認識しました。ホントにやってよかったなって思っています。ぜひ今後とも続けてもらいたいです。

丁寧に歌う大切さに気付いた

──投稿されている音源を聴いて、改めて気付いたぽんさんの歌の魅力は何かありますか?

小島英也(programming, G)

小島 ボカロ曲やロック、昔のアニソンなど、ジャンルの偏りなく歌っていたので、「どんなジャンルでも歌いこなせるんだ」というのは発見でしたね。だから今後曲を作るときも、これまでやっていなかったような難しいことにトライしてもらってもいいかなと。

──ぽんさん、選曲はどうしていたんですか?

ぽん 自分で歌いたい曲を歌ったり、ユーザーからのリクエストに答えたり。中でも「うる星やつら」の主題歌だった「ラムのラブソング」はすごく好きで、何度も歌ってます。いろんな伴奏の投稿が上がってくるので、新しい伴奏が上がるたびに歌ってました。

──いろんなタイプの曲を歌ってみて気付いたことはありますか?

ぽん 自分の声はピアノと合うなという発見がありました。あと、ORESAMAの曲は打ち込みなので、アコースティックギターとかピアノとかシンプルな音に合わせるのが新鮮で。シンプルな伴奏に合わせると、吐息とか息継ぎとかもアクセントとして使えるんですよね。そういうのが面白くて。息の使い方は、今ORESAMAの曲でも生かせているので、単純にレベルアップできたと思います。

──「nana」での投稿は、言ってみれば修行みたいなものだったんですね。

ぽん そうですね。

──そのほかに「nana」で歌い始めてから、変わったことはありますか?

ぽん ちゃんと聴いてもらいたかったので、最初は1曲投稿するまでに3、4時間かけてたんですね。できたと思っても、ピッチが気になったり、「ここの歌い方気に入らないな」って思ったりして、何度も録り直していたので。そういう「丁寧に歌おう」という気持ちが、以前よりも強くなりました。ライブ1回にしても、「もっと気持ちが伝わるように」「この時間だけは、嫌なことをちょっとでも忘れられるように」「みんなが明日もがんばれるように」と思いを込めて、大切に丁寧に歌おうという気持ちになりましたね。

ORESAMA(オレサマ)
ORESAMA

ぽん(Vo)と小島英也(programming, G)による男女2人組ユニット。2013年に「The 6th Music Revolution Japan Final」で優秀賞を獲得し、2014年12月にテレビアニメ「オオカミ少女と黒王子」のエンディングテーマ「オオカミハート」でデビューを果たした。2015年12月に1stアルバム「oresama」を発表。同時にぽんが音楽SNSアプリ「nana」にて正体を隠して投稿を始める。6月には正体を明かし、以降は「nana」での人気ユーザーとして活躍。2016年9月、「nana」への思いを込めた新曲「『ねぇ、神様?』」を発表した。