ナタリー PowerPush - THE NOVEMBERS

現実と虚構の壁「Fourth wall」を壊すとき

前作「GIFT」からわずか半年という早いペースでリリースされる新作CD「Fourth wall」。この作品には、光や穏やかさに満ちた「GIFT」と対照を成すようにダークで冷徹なニュアンスの楽曲が並んでいる。フロントマン・小林祐介(Vo, G)が本作に込めた意図とはどんなものなのか。本人にじっくりと話を聞いた。

取材・文 / 石角友香 インタビュー撮影 / 松本健彦

 
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もう何をやっても変わらない

──「Fourth wall」の構想は前作「GIFT」の制作中からあったんですか?

小林祐介(Vo, G)

そうですね。楽曲を録音して、その後の作業をやるっていう時期ぐらいから。「GIFT」以前のTHE NOVEMBERSはすごいシンプルな言い方をすると、激しいものと穏やかなものが……どちらも価値基準は美しいということしかないんですけど、両極端なものが1枚のアルバムに同時にあるのが特徴だったんです。でも「GIFT」はどちらか一方を凝縮した形で発表したら面白いんじゃないか?っていう発想から、穏やかで、人に手渡しで届けるような気持ちを込めた作品になった。結果として成功したし、作りたかったものが作れたんですね。で、じゃあ次はこんなこともできるんじゃないか?という感じで、自然発生的に「Fourth wall」の構想が生まれてきました。

──「GIFT」のときのインタビューで小林さんは「すでに反動がすごい」と言ってましたし、その結果「Fourth wall」はここまで激しいサウンドになったわけですが、そこに込められたメッセージは決して「GIFT」と真逆なわけではないですよね。

うん、前作と極端に反対のことをやろうと思って作り始めたけど、結果的には言い方や表情が違うだけで同じようなことを言ってる気がします。「GIFT」と「Fourth wall」を両方作ったことによって「何をやったって自分だし、いい意味で変わらないな」って思ったんですよね。

──それは2011年に1stシングル「(Two) into holy」と3rdアルバム「To (melt into)」を完成させて、バンドの姿勢がクリアに見えてきたことが大きい?

「To (melt into)」を作ってるときに「日々をどう生きるかが作品に直結するんじゃないか?」って疑問が湧き始めて、「GIFT」で「やっぱそうかも」と思った。今回の「Fourth wall」では「あ、もう自分がそのまま出るんだから、ギターを弾いて何か口ずさんだらそれはもう曲になるよね」って確信したんです。

──自分自身をそのまま出すしかないということですよね。

僕、踊ってばかりの国の下津(光史)くんとか、けっこうそういう存在だと思うんです。人前に出ていくときだけいい格好しようとしても無理で、やっぱり気持ちも一緒に出ちゃうから。自分がケチくさいことを考えてたら、ステージに上がってもケチくさい自分が出てしまう。そのことに気付いて僕の中で、表現のハードルは上がったし、半ば恐怖心にも近い感覚も生まれてきましたけど。

──でも下津くんや、例えば浅井健一さんみたいな人には、なろうと思ってなれるもんじゃないでしょう。

そう。彼らってナチュラルボーンだと思うんですけど、僕は全然そうじゃないし。

──でもナチュラルボーンじゃないからこそ意識するし行動するわけですよね。

そうなんです。やりたいこととやるべきことをまず分けて、その上でどれを選んでいくか。そこに自覚的になろうとしてますね。

衝動よりも意思のほうが強い

──さて、「GIFT」と「Fourth wall」という聴いた印象は真逆な2つの作品が実は同じことを言ってるのかも、っていうところを掘り下げたいんですが、今回感情的にはどういうモードだったんですか?

小林祐介(Vo, G)

気持ちはものすごく冷静でした。

──「GIFT」の反動で作り始めたのに?

最初のきっかけは前作の反動で、衝動だったんですけど、その衝動の火はすぐに鎮火してしまったんです。昔だったら衝動のままに作って、そのときの興奮が真実だったらそれでOKって思ってたんですけど、もう衝動だけでは曲が作れなくなった。翌朝テンション低い状態で聴いたときに、曲に説得力を感じられなくて。だから今回は冷静に眼光鋭く、そういうものが作品に込もるように、無駄を削いで研ぎ澄ましていきました。冷静な口調で真理を突くことができたら、それが恐怖になるし衝撃を与えられると思うんです。だから大声じゃなく、意志のある小声というか。

──衝動に任せるのではなく。

うん。衝動より意志のほうが僕は強いと思うんです。

「Fourth wall」/ 2013年5月15日発売 / 1890円 / DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT / UKDZ-0145
収録曲
1.
Krishna
2.
dogma
3.
primal
4.
Fiedel
5.
Observer effect
6-I.
Dream of Venus
6-II.
children
THE NOVEMBERS(ざのーべんばーず)

小林祐介(Vo, G)、ケンゴマツモト(G)、高松浩史(B)、吉木諒祐(Dr)からなるロックバンド。2005年から活動をスタートさせ、2007年11月にミニアルバム「THE NOVEMBERS」でデビュー。ライブやリリースを重ねるごとに、そのオルタナティブなサウンドと立ち位置を極め、独自の存在感を見せつける。2012年3月には台湾のロックフェス「MEGAPORT FES 2012」に出演し、同年5月にはファッションブランドLAD MUSICIANのコレクションショーでライブを行うなど、幅広いフィールドで活動している。同年11月に「GIFT」、2013年5月に「Fourth wall」を発表。