ナタリー PowerPush - NIKIIE
3rdシングル「紫陽花」配信スタート 勝負曲を0円にしてまで伝えたい思い
NIKIIEの3rdシングル「紫陽花」が、4月20日から着うたフルや各PC配信サイトで無料配信されている。彼女がデビュー前から大切にあたため続けてきた「紫陽花」は、いわば"勝負曲"としてCDでの発売が予定されていたが、3月11日に起こった東日本大震災を受け、リリースの方法を急遽変更。その決断の裏には、この楽曲が持っている"伝えることの大切さ"というメッセージと、彼女自身が信じてやまない"音楽が持つ力"を今こそ多くの人たちに届けたいという思いがあったのだろう。
東名阪を巡った初めてのワンマンツアー「It's ME, NIKIIE TOUR!!」が終了した翌々日、その胸の内を確かめるためNIKIIEに会った。
取材・文/もりひでゆき
お客さんを疑わずに信じ切る覚悟ができた
──ツアーを終えた今、どんなことを思っています?
いろんな発見ができたなって思います。ライブが始まる直前ぐらいまでは正直、何を伝えられるかすごく迷っていたんですけど、でもステージに立ったとき、初めて気付いたものがいっぱいあって。そこからつながっていった感じのツアーになりました。
──何を伝えられるか迷っていたというのは、震災のことがあったからですか?
そうですね。どういう思いを抱えてみんな来てくれるのかなとか、今欲している音楽ってどんなものなんだろうとか、ほんとにいろいろ考えてて。ライブ自体をやるかやらないかで悩んでる過程もあったから余計に迷ってたんです。でも、お客さんの顔を見た瞬間、今の自分が置かれている環境で、何をどう感じているかを伝えていくことでいいんだなって思えたんですよね。
──すごくシンプルなことだったと。
そう。自分が音楽をやってきた中で思っていたこと、根っこの部分そのままで良かったというか。毎回、ライブは自分にとってのスタートって感じがするんですけど、今回は自分の気持ちだけではなく、そこに来てくれた人たちの気持ちとかも全部受け取った上での新しいスタートのような気がしましたね。だからきっと、芯の部分はブレないけど、表現の仕方とか書いていく曲とかは変化していくんじゃないかなってすごく思いました。
──みんなの気持ちを受け取ったことは大きなパワーにもなりますけど、その分、覚悟も必要になりそうですよね。それだけのものを抱えて歌っていくということは。
ですね。私がライブすること、歌うことっていうのを楽しみにして「がんばろう」って思ってくれてる人もいるわけなので、なんかもう捨て身で、というか、そこを疑わずに信じ切っていく覚悟っていうのはものすごく固くなったと思います。
ちゃんと伝える人になりたいなって
──ニューシングルとなる「紫陽花」は、ライブのアンコールで披露されていましたね。この曲はNIKIIEさんにとって大切な曲だとか。
そうですね。曲自体は「HIDE&SEEK」のすぐ後ぐらいに書きました。「HIDE&SEEK」を書いたことで決意を固めてスタートはしたんですけど、自分の中にまだ消化できない思いもあったんです。なので、その思いを全部伝える曲を書こうと思ったのがきっかけで。
──大切な人への思いを手紙のように綴っている歌詞ですもんね。
自分は今まで「伝えたい、伝えたい」と言っているわりには、ちゃんと伝えることをしてなかったんです。だから、伝えたいと願うだけじゃなく、ちゃんと伝える人になりたいなってすごく思うようになって。その中でできたこの「紫陽花」は、大切な人を思う気持ちをどんなに時間がかかっても諦めないで伝えたいっていうことを歌ってる曲なので、そういう思いをぜひみなさんにも感じてもらえたらなって。
──NIKIIEさんが曲に込めたそういう思いは、今の状況の中ではより強いメッセージとして響いてもきます。
そう思っていただけるとうれしいです。やっぱり3月11日からいろんなものへの感じ方がすごく変わりましたね。大切な人がいる幸せ。そして、そういう人がいる上で、自分の気持ちをちゃんと伝えられる幸せっていうのがあると思うんです。当たり前なことを、当たり前って言えることがどれだけ幸せなことなんだろうってすごく思うから。だからこそ、この曲が思いを伝えるきっかけになればいいなって思うし、聴いてくださる皆さんも誰かから思われている1人なんだっていうことを感じてもらいたいですね。
──ちなみに、NIKIIEさんが思いを伝えたかった人に、この曲は届いたんでしょうか?
わかんないです。ライブでしかまだ歌ってないので……「聴いて」って送ったりもしてないし。
──シングルとしてリリースされれば、きっと届きますよね。正直、恥ずかしかったりもします?
アハハハ(笑)。いやでも、曲を書き始めたぐらいから「この曲はあの人に宛てた手紙でしょ?」みたいなのが周りにバレバレだったりするんですよ、私の場合。だから、そういうのはけっこうもうだいぶ慣れてはいるんで大丈夫です(笑)。
「なんか手紙みたいな曲が書きたいな」と思って
──今回のアレンジは河野伸さん。アコギとストリングスがすごく印象的ですね。
上質なアレンジで。ヤラれますね(笑)。元々、この曲はギターで作った曲だったので、アコギのサウンド感がイメージとしてあったんです。なので、アコギがメインに聴こえてくるような感じでお願いしますっていうことは伝えて。そこにピアノを組み込んでもらいつつ、ベース、ドラム、弦が入ってくる感じで。あとは、紫陽花ってジメっとした時期に咲く花だけど、カラっとした感じにしてほしいなっていうイメージもありました。2年前の秋頃に作ったので、そういう季節感も関係してるのかもしれないですね。
──曲を作る際の楽器として、ピアノとギターでは生まれるものにも変化はあります?
やっぱり違いますね。ピアノはすごく自分自身と向き合う楽器だと思うので、まず自分の中から世界ができて、言葉が出てきてみたいな感じになることが多いんです。でも、ギターって抱える姿を想像してもらうとわかると思うんですけど、対誰かみたいな感じがあるんですよ。なので、誰か相手がいて、そこから始まる歌っていうのがすごく書きやすいんです。そういう歌はギターから生まれますね、だいたい。
──なるほど。じゃあ伝えたい相手が明確な「紫陽花」は、そういう理由でギターから作り始めたんですか?
あ、でもこれは「なんか手紙みたいな曲が書きたいな」と思って、たまたま横にあったアコギを取って作った感じなんですよね。歌詞にもあるように、ほんとに"思いつき"でサラッとできたというか。それがまたまたハマッたパターンです(笑)。
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NIKIIE(にきー)
1987年茨城県生まれの女性シンガーソングライター。4歳からピアノを始め、16歳の夏から作詞作曲を始める。高校時代のバンド活動を経て、17歳よりピアノ弾き語りでソロ活動を開始。高校卒業後に上京し、本格的にライブ活動を始める。精力的にライブ活動を行っていたところ、現在のレーベルの目に留まり、2010年12月にシングル「春夏秋冬」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。